全日病ニュース

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□地域の中核的総合病院(7対1)として
地域包括ケア病棟は必要。 在宅・介護含むグループ内外の前後連携を強化

<会員病院の報告●2014年度診療報酬改定をこう受け止める>
□地域の中核的総合病院(7対1)として
地域包括ケア病棟は必要。 在宅・介護含むグループ内外の前後連携を強化

宗像水光会総合病院 理事長・院長 津留英智 

 社会保障と税の一体改革に示された2025年へのシナリオに基づき2014年度診療報酬改定が行われたが、2012年に続いてまだまだ第2ラウンドである。地域を背負ってリングに上がっている以上、凄まじい連打に早々とノックダウンすることは許されず、「地域医療ビジョン」を見据え、必要な設備投資は行いつつも今後医療費が伸びないことを踏まえ、体力を温存しながら最終ラウンドまでのペース配分が重要だ。
 生き残りの戦術は「ケア複合体」としての「打たれ強さ」であり、地域医療を守る為に途中で心が折れることがないよう、事業を継続し踏ん張り続けるしかない。
 福岡市と北九州市の中間に位置する当院は、『いつでも、どこでも、だれにでも、必要で適切な医療を効率的に提供する~地域と共に~』を理念に、平成2年に開設した。
 人口約17 万人の医療圏(高齢化率26.4%)で病床数300床(うち回リハ病棟49床、亜急性期24床)を擁する、DPCⅢ群に位置づけられる、地域の中核的な総合病院である。
 常勤医師50名(うちリハ専門医3名、研修医7名)、総職員数816名。臨床研修基幹型(定員4名)、平均在院日数は約17.3日、年間救急搬送数は約2,800台である。
 ケア複合体として、介護老人保健施設100床、介護付き有料老人ホーム50室、自立型有料老人ホーム70室、サ高住33戸、小規模多機能型居住介護施設、居宅支援事業所、在宅介護支援センター、地域包括支援センター、デイケア(定員100名)、社会福祉法人によるデイサービス(定員40名)、訪問看護、訪問リハビリ、ヘルパー、グループホーム18床(平成26年4月に開設)、リハ・フィットネスセンターでの様々な介護予防事業(リハビリに特化した半日デイサービス等)、水光会健康増進クリニック、看護専門学校、等々の施設・事業所を有する。
 周囲の医療環境は、近くに医師会病院164床(DPC7対1、紹介率90%、地域医療支援病院)があり、また、隣接医療圏には(旧国立)福岡東医療センター(579床)があり、その影響もあって、当院の紹介率は30.6%である。
 入院は救急に依存しており、一日平均外来患者数(462名)、年間入院患者数3,780名(うち救急車からの入院1,159名)。年間全手術症例数は1,473例、うち全麻は491例である。
 今回の重症度・看護必要度変更にあたり、平成25年度のデータをシミュレートした結果、旧基準16.7%⇒新基準13.7%と約3%の低下となった。また、平均在院日数は17.3日であり、90日越えの特定除外患者を含めると17.8日(約0.5日延長)、短期滞在手術患者を除外すると約1日延長となった。
 さらなる検討が必要だが、これまでも亜急性期病床(24床)を運営してきており、病院機能を最大限に生かすために、やはり地域包括ケア病棟1病棟(50床)は必要と考えている。いわゆるアキュート、ポストアキュート、サブアキュートは当院に求められている機能であり、以前から全日病が提唱していた『地域一般病棟』そのものと考える。
 これまで以上に急性期患者がシームレスに、もれなく当グループの在宅・介護部門へ移行できるように、グループ内・外の連携強化を目的とし、昨年から「介護事業推進室」を設置して専従MSWを配置している。地域の在宅訪問診療医、地域のケアマネ、また地域のサ高住の職員も招き、ケースカンファを通じて顔の見える勉強会を開催している。
 また、前連携として、自院が地域の急性期、回復期リハ、地域包括ケア病棟として何ができ、何が得意な病院なのかをしっかりとPRし、後連携として、地域の療養型、老健、介護施設、サ高住の空き状況を常時把握しながらも、これからは全ての病床で在宅復帰率を問われることもあるため、在宅復帰強化対象施設か否かの動きも常時確認が必要である。
 これからは地域の在宅訪問診療医との連携も取りつつ、グループ内でも自前で在宅訪問診療に対応できるよう準備している。
 フランス医療制度のHAD(在宅入院)のごとく、在宅ベッドも治療病床であるという意識を高めて、訪問看護を強化し、在宅でも24時間ある程度の医療に対応可能な体制を検討している。
 重症度、医療・看護必要度のポイントを上げるための姑息的手段や特別な妙策は無いし、7対1の条件は、いずれの改定でさらに厳しくなっていくだけだろう。
 必要なのは将来を見据えて、①地域での医療・介護ニーズをどうとらえるのか、②地域の中での自院(自グループ)の立ち位置はどうなのか、③「病床機能分化」と「地域連携」にどう対応するのか、を常に意識することであろう。
 今後『病床機能報告制度』のデータを基に、各地域における『協議の場』で医療提供体制が確立される。これまで地域医療を底支えしてきた民間病院だけが、極めて厳しい状況に追い込まれることのないよう、全日病及び各支部には積極的な対応を期待したい。