全日病ニュース

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□急性期や在宅を後方支援する慢性期病院として
在宅復帰率で経営に新たな視点。地域包括ケアは次回改定後の検討課題

<会員病院の報告●2014年度診療報酬改定をこう受け止める>
□急性期や在宅を後方支援する慢性期病院として
在宅復帰率で経営に新たな視点。地域包括ケアは次回改定後の検討課題

医療法人社団康明会康明会病院 事務長 田島弘康 

 当院は東京都下日野市に位置する慢性期の病院(96床2単位・療養病棟入院基本料1)であり、4月1日現在、療養病棟療養環境加算、医療安全対策加算、退院調整加算、救急搬送患者地域連携受入加算、患者サポート体制充実加算、総合評価加算、在宅復帰機能強化加算在宅療養支援病院、がん性疼痛緩和指導管理料、脳血管疾患等リハビリテーションⅡ 運動器リハビリテーション料Ⅰ、呼吸器リハビリテーション料Ⅰ他を届け出ている。
 平均在院日数は130日、病床回転率は19%~28%である。
 今改定で「在宅復帰機能強化加算」が新設され、診療報酬は10点の加算となった。療養病床を担う病院に初めて導入された「在宅復帰機能」を評価する。
 ただし、在宅に退院した患者(1ヶ月以上入院に限る)が50%以上で、尚かつ、病床回転率が10%以上とされた。
 療養病床では、平均在院日数163.2日(平成25年12月厚労省の病院データ資料)であるので、単純に30.4で除せば18.6%の病床回転率が確保できる計算だが、実際には、長期入院可能として運営している病院と在宅復帰へ向けての入院を推進している病院の両極端になっていることが予想される。
 「1ヶ月以上入院していた患者」を対象に「在宅復帰50%以上」を確保するということだが、医療区分3と2以上に該当する患者が80%以上という基準からすると、医師をはじめ、看護師、MSW、ケアマネといった在宅で療養する環境を整える調整と専任者の配置を必須としないと、在宅へ向けた退院支援は非常に厳しい現状にある。
 この加算は、一般病棟7:1算定病院の退院患者のうちの75%以上が、自宅、回復期リハ、地域包括ケア病棟などを退院先としなければならない基準(※1)があり、この退院先に「在宅復帰機能強化加算」を届出した療養病床も含まれることが、診療報酬の10点以上に大きな効果がもたらされると期待できる。
 当院は、4月の届出で、この「在宅復帰機能強化加算」の届出を行った。
 ※1主な在宅復帰率一般病棟入院基本料(7対1) 在宅復帰率75%以上(新設)地域包括ケア病棟入院料1(新設)在宅復帰率70%以上回復期リハ病棟入院料1 在宅復帰率70%以上(60%以上からの引き上げ)療養病床入院基本料1の在宅復帰機能強化加算(新設)在宅復帰率50%以上日野市の人口は18万2,000人。一般急性期を担う救急を含めた病院は市内に476床(7:1の市立病院=300床。他に13:1及び15:1算定の病院)ある。当院は毎月20件から25件の入退院があるが、そのうち、7対1の病院からが22%(5名前後)、在宅からは、緊急も含めると51%(10人前後)を占める。
 在宅から入院するケースは、ほとんどが地域のケアマネージャーから、次に、在宅医療を担当する近隣の先生方からの連絡である。療養病床の役割をしつつ、救急治療レベルではないが一時的に急性増悪した患者を診療し、在宅へ戻すのか、入院して治療するかを判断し、緊急用ベッドを常に2床確保して、運営を継続している。
 市内の診療体系は、当院を含む療養病床が340床(すべて20:1)であり(精神を除く)、在宅療養支援病院として、クリニックを含む4医療機関と連携し、強化型として地域医療の役割を担っている。市内で届出をしている病院は当院のみであり、これは、当院の理念でもある「地域を支え、地域に支えられる医療」を推進するものである。
 今回の改定では医療療養の医療区分制度が継続されたために大幅な報酬減にはならなかったが、在宅復帰機能強化加算が新設されたため、今まで療養病床ではあまり認識されなかった「平均在院日数」「在宅復帰率」「病床回転率」に対応する取り組みが必要となった。
 また、療養病床でも可能となった、新設の「地域包括ケア病棟」も、療養病床から転換するには非常にハードルの高い基準ではあるが、地域のニーズに応える役割を持つものである。療養病床に留まらず「在宅復帰」がキーとなっている。
 医療療養病床が地域包括ケア病棟を目指すと、これに係る加算も含め、医師をはじめとする看護師、PT、OT等増員の計画も必須となり、当然に人件費増となるため、経営方針の決定も中期計画内で進めなければならない。
 今後の政策や制度改正を予想し、あらゆる観点から意思決定をしなければならない。今後在宅復帰できる体制を更に強化し、次回改正(2016年)の状況を鑑み、地域包括ケア病棟も視野に入れて進めたいと考えている。