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「入院基本料を病棟群単位とすべし」
「入院基本料を病棟群単位とすべし」
【四病協と日病協】
16年度改定の要望事項に盛り込むことを決める
四病院団体協議会と日本病院団体協議会は、1区分単位(いわゆる「病院単位」)で届け出ることになっている一般病棟入院基本料を「病棟群単位」の届出とし、複数の入院基本料が算定できるようにするべきとの考えで一致。
今後、内容の具体化を図り、2016年度診療報酬改定の重点的要望事項に位置づける方針を確認した。
医療提供体制の効率化を推進するとともに看護師不足にも対応することが目的。
「病棟群単位の届出を認めるべき」との意見は4月22日の四病協総合部会で多数を占め、4月24日の日病協代表者会議(写真)でも賛同を得た。この方針は日医も基本的に支持している。
代表者会議後の記者会見で、日病協の楠岡議長(国立病院機構大阪医療センター院長)と神野副議長(日本社会医療法人協議会副会長)が発表した。
現在の入院基本料の届出は「届出区分」という考え方にもとづいており、1つの入院基本料に対して1つの区分(病棟の種別)を届け出ることになっている。これは、例えば一般病棟7対1入院基本料を届ける場合に、すべての一般病棟を7対1看護とすることを意味しているため、患者の医療密度が異なる病棟では看護師が実態的に過配になるだけでなく、病棟コストを押し上げる結果となっている。
これに対して、夜勤要件を満たしていれば、1病棟内で勤務帯や曜日による看護師数を変えることができる傾斜配置を可能とし、さらに、当該種別の病棟全体で月平均1日当たりの看護職員配置数を満たしていれば病棟間での傾斜配置を可能とする運用緩和が認められている。
7対1でこの傾斜配置を行なっている病院は少なくないと思われるが、それでも看護師は実態以上の数を確保することになるだけでなく、7対1にともなう要件を全体として確保する必要があるため、当該病院に与える負担は大きい。
これに対して、入院基本料を病棟ごとに届け出るという考え方もあり、今回の四病協と日病協の議論は「入院基本料を病院単位から病棟単位に変えるべきではないか」という意見がきっかけとなった。
病院団体はかつて、「病棟単位」という言い方で、入院基本料を「病棟群単位」の届出とすることを要望している。
今回の議論で、四病協はかねてから主張してきた「病棟単位」を「病棟群単位」と言い換えた方が正確であるとして、あらためて「病棟群単位」を提言することを確認。その考えを日病協にも諮ったもの。
病棟群単位を主張するのは、病棟ごとの届出とすると、傾斜配置のメリットが限定的になる上、月平均夜勤72時間規定のクリアが難しくなること、病棟ごとに届け出る事務の煩雑さなどの問題が生じるなどの難点があるためだが、最大の理由は、ケースミックスに対応した看護師の配置数が病棟単位よりも少なくてすむという点にある。
議論の中で、四病協の追加提言(「医療提供体制のあり方」2013年11月18日)で展開された「機能分化と病院類型」のイメージが参考資料に使われた。
そこには、急性期病院の機能を大雑把に「高度急性期」あるいは「急性期」と定義する従来の捉え方に対して、機能の異なる病棟(群)の組み合わせから病院の役割を多面的に捉え、病棟レベルの機能分化を踏まえた病院の機能分化・連携を進めていく考え方が示されている。
今回の、四病協と日病協が足並みを揃えて具現化を図る「病棟群単位の入院基本料」は、病棟機能の報告制度が創設された今、機能類型をみていく上で病院と病棟の関係性を見直していくきっかけとなる可能性がある。