全日病ニュース

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医薬分業 医療機関と薬局の構造規制見直しが検討課題

医薬分業 医療機関と薬局の構造規制見直しが検討課題

【規制改革会議】
増え続ける医療費の抑制へ、調剤報酬の仕組みの見直しも俎上

 政府の規制改革会議で医薬分業の現状に対する批判が高まり、その規制の内容と保険薬局のあり方を再考すべきではないかという認識で一致、見直しの議論を開始した。
 同会議の健康・医療ワーキング・グループは4月16日、医薬分業下の規制にかかわる検討課題として、①医療機関と保険薬局の構造規制の見直し、②保険薬局の診療報酬の仕組みの見直し、③保険薬局の業務のあり方の検討などを論点にあげた。(2面に関連記事)

 入院外の薬剤に関して処方医(医療機関)と薬剤師(薬局)が分担することでそれぞれの専門性を活かすという理念にもとづいて、医療機関の任意の下、医薬分業が進められてきた。医薬分業率(薬局の処方せん受取率)は2013年度に67.0%に達している。
 そして、処方と調剤・販売の独立性を担保するために、薬担規則で保険薬局と保険医療機関が経営と施設構造の上で一体化することを禁じ、面分業を推し進めてきた。
 ここで、「一体的な構造」とは、「保険薬局の土地・建物が保険医療機関の土地・建物と分離してなく、公道またはこれに準ずる道路等を介さずに専用通路等により患者が行き来するような形態」とされている(薬担規則の留意事項通知)。
 医薬分業を進めるために、院外処方の医療機関は処方せん料のみの算定となる。処方せん料は1998年改定までは大きく引き上げられたが、その後の改定で大幅に引き下げられた。
 院内処方の場合も処方せん料と大きくは変わらない報酬水準で推移してきている。
 一方、薬局には、患者の薬剤管理・指導、薬学的管理・指導、残薬状況の把握、後発医薬品の推進など、質向上と効率化の面で求められる多様な業務を評価するとして、調剤基本料、調剤料に加えて各種の加算や指導料の算定が認められ、その評価も継続的に引き上げられてきた。
 そのため、診療報酬の上で院内処方と院外処方には大きな差が生じており、処方によっては院外の方が2~3倍となるケースもあるなど、入院外医療費が増加してきた大きな要因となっている。
 こうしたことから、規制改革会議は、国民・患者に、診察を受けた医療機関から離れた薬局に出向くことの不便さと薬局の方が高い支払いとなることへの不満が強いとして、3月12日に開催した公開討論に内閣府が実施した調査の結果を示し、医薬分業にともなう規制に疑問を投げかけた。
 もっとも、内閣府調査では31.4%が「医療機関と薬局が離れている」ことを肯定し、否定は28.9%にとどまった。
 「医師と薬剤師が医療機関と薬局に分かれて業務を行なう必要性」の肯定・否定もほぼ同様の率で、医薬分業による規制に対する賛否は拮抗した。
 この調査では、このほか、院外処方における薬局の費用が高いことへの疑問が6割近くに及んだこと、薬を受け取るときに「医療機関からなるべく近い薬局」に出向くという回答が7割近いという結果が出ている。
 この結果も踏まえ、規制改革会議は、テーマを「患者(国民)にとってよりメリットのある医薬分業を実現するには」と抽象化して公開討論に臨んだ。
 公開討論で、規制改革会議の委員は「薬局と病院が物理的に離れている必要はない」と述べ、構造規制の緩和を求めた。これに対して、日本薬剤師会は「一体的構造になると(薬局は)機能面で特定の医療機関のものになってしまう可能性がある」と発言。厚労省も「面分業は必要。院内を認めると門前薬局を助長しかねない」と、現行規制の堅持を訴えた。
 一方、健保連は、医薬分業を支持するとした上で、院外処方によって患者負担が増えていることを指摘。「負担に見合う効果が生じているか」と疑問を呈した。日医は「基幹病院が一つしかない地域では隔壁を設ける必要はない」とし、緩和を検討する必要を認めた。

突如取り上げられた構造規制。背景に経済財政諮問会議の議論

 医薬分業にかかわる規制緩和は、規制改革会議が2015年6月答申に向けて昨年整理した検討課題には入っていない。3月の公開討論も、当初は「地域の空きキャパシティの利用に係る規制」のみをテーマとしていたが、1月28日の規制改革会議で「医薬分業における規制」を追加することが内閣府から提案され、急遽決まったものだ。
 背景に、経済財政諮問会議で高コストな医薬分業に対する批判とその見直しを求める声が相次いだことがある。
 公開討論の議論を踏まえ、同会議の事務局である内閣府規制改革推進室は4月16日の健康・医療WGに、「医薬分業推進の下での規制の見直しに関する論点」を提示、WGはこれにそって議論を具体化していくことを確認した。
 見直しの対象を「医薬分業における規制」(公開討論)から「医薬分業推進の下での規制」(4月16日のWG)に変えたのは、公開討論を報道する記事に「医薬分業を見直す」ととられかねない論調がみられたため、規制改革会議として医薬分業を推進する立場であることを明確にする必要があったためとみられる。
 したがって、規制改革会議にとって、この議論は、分業を肯定した上で、医療機関と薬局の構造規制の緩和を求めるとともに、薬局にはより高度で多面的な機能を求め、その一方で評価の適正化をも模索するという、やや複雑なものとなった。
 そのため、規制改革会議の岡議長(住友商事相談役)は公開討論後の会見で「6月の答申に間に合うかは議論次第だ。(16年度改定に間に合わせるかについても)まだ白紙だ」と答えるなど、議論の道筋と日程を明確に打ち出せない状況を認めた。
 公開討論を受け、規制改革会議は、4月16日の健康・医療WGで「医薬分業推進の下での規制の見直し」に関する論点を以下のように整理した。
(1)医療機関と薬局の経営の独立性を確保した上での構造上の規制の見直し
(2)医薬分業を進めてきた政策効果の検証と政策目標の明確化
(3)薬局に対する診療報酬の仕組みの見直し
(4)薬剤師の専門性を活かした業務のあり方の検討
(5)薬局におけるサービスと費用の分かりやすい開示。リフィル処方せんの導入と分割調剤見直しの検討の加速化
 このうち、(1)に関してWGに同席した厚労省担当官は否定的な見解を表わしたが、薬局のかかりつけ機能を重点的に評価すべきという点で両者の認識は一致。今後、6月の答申や規制改革実施計画にどう盛り込むか、規制改革会議と厚労省の間で調整を図っていくことを確認した。