全日病ニュース

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“管理者”とは、院長個人ではなく、病院を代表する者を指す

【医療事故調査制度の創設(2015年10月)に向け、我々はどうすべきか】

“管理者”とは、院長個人ではなく、病院を代表する者を指す」

西澤研究班報告書(ガイドライン)等を参考に省令、通知を決定。5月連休明けにも発出か

常任理事 公益財団法人東京都医療保健協会練馬総合病院 理事長・院長 飯田修平

 筆者は、本誌3月1日号で『医療事故調査制度への対応』と題し、『院内医療事故調査の指針』出版、医療事故調査の目的・意義・それに関する検討の経緯を解説した。
 また、事故調査の目的である原因究明・再発防止と、補償・責任追及・被害者家族の納得とは別の枠組みで検討すべきと主張した。同じ内容を日本品質管理学会と同学会の医療経営の総合的「質」研究会で「医療事故調査制度に関する声明」を公表した(http://www.jsqc.org/iryojiko.html 2014年7月)。
 医療事故調査制度(以下「本制度」と表記)の成立(2014年6月)を受けて、厚生労働科学研究費研究事業「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」(主任研究者西澤寛俊)(以下「研究班」)(2014年7月)と「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(以下「検討会」)(2014年11月)が設置され、共に2015年3月末に報告書がまとめられた。その概要と考え方を紹介する。

医療事故調査における留意事項

□医療事故対応と医療事故調査の相違
 医療事故発生時には、事故対応と事故調査が必要かつ重要である。しかし、両者の目的の相違を認識する必要がある。すなわち、事故調査の目的は事故原因を究明し再発防止に繋げることであり、事故対応の目的は事故の被害・影響を低減・解消することである。患者や遺族への説明、患者や遺族の理解と選択、遺族の納得や補償等は重要であるが、事故調査とは別の枠組みで対応する必要がある。
□一般的な医療事故調査と本制度における医療事故調査の相違
 一般的な医療事故調査は、事故発生(インシデント・アクシデント)報告を受けて、影響の重大性あるいはその可能性がある場合に開始する。
本制度における医療事故調査は、死亡報告をうけて、病院管理者が、「医療に起因した予期しない死亡又は死産」と判断することから始まる。医療事故調査の中の特殊な状況であることを認識する必要がある。

医療事故調査制度

 第6次医療法改正(2014年6月)で、「病院、診療所又は助産所(以下「病院等」)の管理者は、医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものをいう)が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚生労働省令で定める事項を第6条の15第1項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない(医療法第6条の10)」、さらに、「病院等の管理者は、医療事故が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、速やかにその原因を明らかにするために必要な調査(以下医療事故調査)を行わなければならない(医療法第6条の11第1項)」、また、「病院等の管理者は、前項の規定による報告をするに当たっては、あらかじめ、医療事故に係る死亡した者の遺族又は医療事故に係る死産した胎児の父母その他厚生労働省令で定める者(以下遺族)に対し、厚生労働省令で定める事項を説明しなければならない。ただし、遺族がないとき、又は遺族の所在が不明であるときは、この限りでない。(医療法第6条の10第2項)」と規定された。
 すなわち、“提供した医療に起因する(疑いも含む)予期しない死亡又は死産事例”の医療事故調査・支援センターへの報告と院内医療事故調査の実施、および、遺族への説明が義務化され、2015年10月から施行される。

医療事故調査制度の省令案・通知案*とガイドラインがまとまる

 研究班は、事前勉強会を2014年4月から7月までに計5回開催し、研究班会議を2014年7月から2015年3月までに計14回開催した。
 そのほかに、研究班に主査会議を設置し、詳細な事項に関して検討した。
 研究者は主任研究者1名であり、他は、医療界および患者および患者側代弁者を含む研究協力者である。筆者は、研究班と主査会議の構成員として参画した。報告書は3月末にまとめられ、近日中に公表予定である。
 検討会は、2014年11月から2015年3月までに計6回開催され、3月20日に座長とりまとめが報告された。
 研究班、検討会ともに、議論百出に対する批判がある。しかし、これは大きな問題ではない。立場や価値観の異なる構成員が真剣に議論し、紆余曲折を経て、報告書をまとめたことを評価すべきである。すなわち、本制度の実効性を担保する大前提となる指針を医療界挙げて検討し、まとめたことに意義がある。(5面上に続く)