全日病ニュース

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全日病として「事故発生時の適切な対応研修会」を開催

【医療事故調査制度の創設(2015年10月)に向け、我々はどうすべきか】

全日病として「事故発生時の適切な対応研修会」を開催

本制度の支援団体として参画する用意。会員各位の積極的な参加と参画を期待

(4面下から続く)
 同様のことが、厚労省の「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」(2011年8月~2013年5月)と、その分科会「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会(13回開催)」(2012年2月~2013年5月)の両検討会の報告書「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」に関しても言える。
 この報告書について、筆者は「医療界を挙げて議論し合意したものであり、満足できないが70%は納得できる」と発言した。
 検討会報告書、そのパブリックコメントと研究班報告書(ガイドライン)を参考に、省令、通知が連休明けには発出される予定である。
□検討会および研究班における論点
 検討会および研究班の最大の論点は、①本制度における“医療事故”の定義と、②遺族への説明であった。すなわち、①-1“医療に起因”と①-2“死亡又は死産を予期しなかった”の定義と、②遺族への説明時の事故報告書の取り扱いである。概要を表に示す。
 本制度で報告すべき事例は、①-1と①-2を満たすと管理者が判断したものである。その順番が重要である。“管理者”とは院長個人ではなく、病院を代表する者という意味である。すなわち、当該事例の関係者から詳細に事情聴取し、分析して判断することになる。
□医療の範囲
 医療法や医療保険機関及び保険医療養担当規則の法文を見るまでもなく、医療と療養は同義であり、医療機関における健康に関するお世話のすべてを言う。
 手術、処置、投薬及びそれに準じる医療行為(検査、医療機器の使用、医療上の管理など)を含む。用語の定義に基づいて議論すべきだが、研究班・検討会共に、これを理解しない構成員が多かった。
 医療に含まないものは、施設管理に関連するもの(火災、地震・落雷等天災、その他)、併発症(提供した医療に関連ない偶発疾患)、原病の進行、自殺、その他(殺人・傷害致死、等)である。
 研究班報告書(ガイドライン)では、判断の考え方と参考事例を提示している。
□予期しなかったもの
 予期するとは、死亡又は死産の統計的データを提示することではなく、事例固有の状況を勘案して死亡又は死産を予期し、それを患者あるいは家族が理解できるように適切に説明し、診療録その他の文書等に記録することが必要である。
 予期したからには、リスクへの適切な対応が求められることに留意すべきである。
□遺族への説明と事故報告書の取り扱い
 遺族へは、口頭(内容をカルテに記載)又は書面(報告書又は説明用の資料)あるいはその双方により、センターへの報告事項の内容を説明する。関係者について匿名化する。
□医療事故調査・支援センターへの報告事項
 法律で定められた事項(表 参照)を報告時点で把握している範囲で報告する。不明な事項は不明と記載する。
□死亡から報告までの期限
 できる限りすみやかに遅滞なく報告する。正当な理由無く漫然と遅延してはいけない。
□院内事故調査
 管理者は、医療事故調査に必要な範囲内で調査事項を選択し(表参照)、情報収集及び整理し、以下の事項に留意して当該医療事故の原因を明らかにする。 ・調査の目的は医療の安全確保であり、個人の責任追及ではない。
・調査の対象者として当該医療従事者を除外しない。
・可能な限り匿名性の確保に配慮する。
・必ずしも原因が明らかになるとは限らない。
・再発防止を検討することが望ましいが、再発防止策が得られるとは限らない。
□支援団体の支援
 管理者の判断により、医学医術に関する学術団体その他の厚生労働大臣が定める団体(医療事故調査等支援団体)に対し、医療事故調査に必要な支援を求める。
 支援団体は、団体間で連携して、ある程度広域でも連携がとれる体制を構築し、支援窓口や担当者の一元化を目指す。解剖・死亡時画像診断は専用の施設・医師の確保の支援が必要である。

全日本病院協会の医療事故調査制度への対応

 全日病は医療の質向上委員会を中心に、医療安全、とくに、医療事故調査と医療事故対応を最重要課題として、調査、研究、教育、提言等の活動を継続している。
 会員病院の本制度の認識と対応が十分ではないと考え、『院内医療事故調査の指針』を出版し、これを教材として、昨年12月、講義と演習を含む「院内医療事故調査の指針―事故発生時の適切な対応研修会」を開催した。応募が多く、本年3月に2回を開催したが、さらにあふれたので、第3回研修会を8月15日(土)・16日(日)に開催予定である。
 全日病は本制度の支援団体として参画する必要があると考える。会員各位の種々の形での積極的な参加と参画を期待したい。