全日病ニュース

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子ども医療の地方単独事業への国庫負担調整措置が議論の俎上に

子ども医療の地方単独事業への国庫負担調整措置が議論の俎上に

子どもの医療制度で検討会。自己負担と国保国庫負担のあり方等を検討

 子どもの医療制度の在り方等に関する検討会が厚労省内に設置され、9月2日に初会合がもたれた。少子化対策の一環として、今後の子どもの医療のあり方等について検討を加えることが検討会の目的。
 事務局(厚労省保険局総務課)は、大きく、(1)受診状況、提供体制、自己負担など、子どもの医療に関する現状を把握、その上で、(2)子どもの医療のかかり方、子どもの医療提供体制と自己負担のあり方、国保の国庫負担のあり方など、子どもの医療に関する課題の確認と対応策提言の2点を検討会の検討事項とした。
 事務局は保険局総務課が務めるが、検討会そのものは医政、雇用均等・児童家庭、保険の3局長によって開催される、省内横断の検討会である。
 検討会の開催趣旨に、事務局は、「少子高齢化が進む中、子育て支援、地方創生、地域包括ケア等に関して実効性のある施策の展開が求められており、子どもの医療分野において、そうした観点から今後の在り方等についての検討を行う」と記した。
 「地方創生」という政策概念がキーワードの1つになっているのが目新らしいが、検討会の検討事項には「国保の国庫負担のあり方」という一項も入っており、一見すると分かりにくい。
 この問題について、第1回の会合に、委員の1人は「子どもの医療の自己負担の一律減免には反対。国保の国庫負担の調整措置は適切である」とする意見書を出した。
 子どもの窓口負担は3割(学齢前は2割)だが、対象年齢、所得制限等の違いはあるものの、すべての都道府県で管内市町村に補助が行なわれ、各市町村が自己負担の減免を実施している。
 この地方単独事業において、多くの市町村が都道府県の対象年齢等を拡大しているだけでなく、子ども医療費窓口無料化を実施しているところも少なくない。
 この減免措置に対して、厚労省は、一部負担金の軽減化にともなう波及効果で医療費が増加した分は当該自治体が負担すべきという論理から国保の国庫負担を減額している。
 この“ペナルティ”に、子育て支援=地方創生という見地から自治体は見直しを求めてきたが、全国知事会はこの7月の「国への緊急要請」で、「全ての子どもを対象にした子どもの医療費助成制度の創設」と「(それが)創設されるまでの間の子どもの医療費助成に係る国保の国庫負担金の減額制度の廃止」を求めた。
 国保に関する国と地方の協議(国保基盤強化協議会)がこの2月に合意した文書(「国民健康保険の見直しについての議論のとりまとめ」)は、「子どもに係る均等割保険料の軽減措置の導入や地方単独事業に係る国庫負担調整措置の見直しといった地方からの提案についても、現行制度の趣旨や国保財政に与える影響等を考慮しながら、引き続き議論していく」と明記。
 子ども医療費自己負担の軽減化の制度化に関する議論を、国保の都道府県移管に向けた国と地方の協議事項に位置づけた。
 子育て支援等による若い世代の定着を願う地方と財源不足という足枷を踏まえて保険制度を運営する国との間で、少子対策と地方創生といっても政策の優先度が違ってくる中、2つのテーマの政策が問われるこの検討会で、子ども医療にかかわる地方単独事業への国庫負担調整措置の見直しが議論される予定だ。
 事務局は、月1回程開催し、来年の夏をめどに報告をとりまとたいとしている。