全日病ニュース

【産業競争力会議】

地域医療連携推進法人
市場創造の施策に位置づけ、大学病院参加へ規制を緩和

　1月25日の産業競争力会議は「2015年度産業競争力強化のための重点施策等に関する報告書」をまとめるとともに、「産業競争力の強化に関する実行計画」「成長戦略の進化のための今後の検討方針」について合意した。
　「2015年度重点施策報告書」は、「戦略市場創造プラン関連」の項目で、「予防・健康管理の推進に関する新たな仕組みづくり」（保険者におけるデータヘルス計画の作成とレセプト情報等の分析にもとづく保健事業）などとともに「非営利ホールディングカンパニー型法人制度（仮称）の創設」を取り上げ、「当該新制度を活用した大学附属病院の別法人化の具体的な仕組みについては平成27年12 月に案を公表した。平成27年度中に制度上の措置を行うべく検討を行っている」と書き込んだ。
　「平成27年12月に案を公表した」というのは、12月11日の同会議実行実現点検会合で、厚労省と文科省が大学病院を地域医療連携推進法人に参加させるための環境整備への取り組み状況を報告し、その資料が公開されたことを指している。
　政府が提唱した「非営利ホールディングカンパニー」は、昨年9月に成立した医療法改正において地域医療連携推進法人制度というかたちで創設され、来年4月に施行される。
　一般社団である地域医療連携推進法人の社員には病院等の医療機関を開設する医療法人ほかの非営利法人が参加できる。したがって自治体病院や大学病院も参加できるわけだが、現実にはそれぞれに参加を拒む法的問題があるため、規制緩和を図る必要がある。
　そうした中、この会合で、文科省は大学病院を別法人化するスキームを示し、岡山大学をモデルケースとして実現を図る方針を明らかにするとともに、そのために、附属病院の大学からの分離を禁じている大学設置基準（文科省令）を16年度にも改正する意向を示した。
　厚生労働省も、同会合で、岡大病院、岡山市民病院、岡山労災病院、岡山日赤病院、岡山済生会病院、国立医療センターを社員とする一般社団法人（岡山大学メディカルセンター）を設立し、地域医療連携推進法人の認可を得た上で、地域の公立病院や民間病院と連携を組んだ「岡山21世紀型地域ネットワーク」を構築する構想を紹介した。
　1月25日の産業競争力会議は、同会議の15年度重点施策であった「非営利ホールディングカンパニー創設」の進捗結果を前出どおり報告書にしたためるとともに、「産業競争力の強化に関する実行計画案（2016 年版）」にあらためて地域医療連携推進法人制度の創設を盛り込み、「平成29年4月目途の施行に向けて、必要な政省令整備等の所要の措置を速やかに講じる」とともに「大学附属病院を大学から別法人化できるよう、平成27年度中に制度上の措置を目指す」と記した。
　同会議の「実行計画（2016年版）」には、医療分野の施策として、地域医療連携推進法人制度のほかに、ヘルスケア産業の創出支援、マイナンバー制度のインフラを活用した医療等分野への番号制度の導入、地域医療情報連携ネットワークの普及促進、医療介護費用の適正化等医療介護政策へのデータの一層の活用、個人・保険者・経営者等に対する健康・予防インセンティブの付与が書き込まれている。
　地域医療連携推進法人制度の実現という目標は、産業力競争会議の「成長戦略の進化のための今後の検討方針案」にも掲げられている。
　「検討方針案」は、地域医療連携推進法人制度の実現という課題を、「GDP600兆円に向けた戦略的成長市場の拡大」を図る施策課題の「質の高いヘルスケアサービスの成長産業化」の項に、「ヘルスケア産業の創出支援」「医療・介護等分野におけるICT 化の徹底」「日本発の優れた医薬品・医療機器等の開発・事業化」と並べて書き込み、同制度の普及が市場創造を図る重要な施策に位置づけられていることを示している。