全日病ニュース

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整理案は療養病床転換のモデル。他病棟からの参入や新設は今後の議論

整理案は療養病床転換のモデル。他病棟からの参入や新設は今後の議論

【療養病床の転換先となる新たな施設類型】
規制緩和や経過措置は社保審の議論次第。18年3月までに解決すべき問題が山積

 1月15日に開かれた「療養病床の在り方等に関する検討会」は介護療養病床と療養病床25対1の転換先となる「新たな施設類型」として3タイプからなる“新たなサービスモデル”の案をまとめ、社保審の議論に付す整理案とした。 (1面記事から続く)

 検討会では、整理案の原文に対して、構成員から様々な疑問や意見が出た。
 鈴木構成員(日医常任理事)は、まず、「現行施設の再延長を含めて社保審の議論に付すべき」と発言。また、「3タイプよりも、日医・四病協が提言(11月27日)した医療内包型と医療外付型の2タイプの方が分かりやすい」と指摘した。
 また、実効性を高める見地から、新たな施設類型は「療養病床からの転換を前提とすべきであり、その際、6.4㎡と多床室を前提にしないと話は進まない。そのためには経過措置の期限は建て替えまでとすべきであり、転換が終わるまでは現行の報酬を維持すべきではないか」と注文。
 さらに、「この転換が(療養病床の必要量をカウントする)地域医療構想の中で(必要病床として)認められるようにしなければならない」と、他方、介護保険適用となる場合は「介護保険事業計画による量的制限をするべきではない」などと訴えた。
 同構成員の意見に対して、事務局(厚労省保険局医療介護連携政策課)は、「再延長との意見は整理案に添付する『構成員からの発言』に盛り込んである。また、看取りとターミナルの24時間体制という点で案1 を2 つに区分したが、大きくは医療内包型と医療外付型である」(城医療介護連携政策課長)と、あるいは「介護給付の対象施設が転換する場合は問題はないが、医療保険適用から介護保険に移っていく場合は介護保険事業計画の事業量との調整が必要になる」(佐原老健局老人保健課長)などと答えたが、経過措置の期限と地域医療構想における必要病床への位置づけに関しては答弁を控えた
 6.4㎡と多床室を前提とすべきという意見には、他の構成員から「住まいの機能が軽視されてないか」といった疑問の声もあがった。
 転換元については、「今回は(療養病床からの)転換に限った話だが、まったくの新設や他病棟からの参入については、基準も含めたこのモデルの制度化を論じる中で議論されるのではないか」(城課長)との認識を披露。
 この点について、検討会後のブリーフィングでは、「このモデル案は、療養病床単体も、一般と療養のケアミックスのところも想定している。まったく新たに新設して参入してくるケースについては現時点では結論を出していない」(城課長)とも説明した。
 やはり構成員からの、「(医療内包型には)医師と看護師の存在が想起されるが、それ以外のスタッフがみえてこない」との疑問には、「20対1病床と同様にリハや栄養管理士等も重要なスタッフと考えている」(佐原課長)との認識を示した。また、「利用者がどれに入所するかは自由なのか」との質問には、「どちらの保険適用となるか、どんな条件となるかで利用者は変わってくる。また、利用者を相互排他的とするか、柔軟にするかは今後の議論次第だ」(迫井地域医療計画課長)とした。
 整理案で「実際の移行先は各医療機関が対応案の中から自ら選択する」とされた箇所に関しては、ブリーフィングで、「20対1に移るところもあるだろうし、老健にいくという選択肢もある。それらも含め、新たな選択肢を用意したということだ」(城課長)と説明した。

複数部会でバラバラな結論への懸念。社保審は合同開催か

 このように疑問や意見は多々出たものの、「具体的な議論は社保審で行なわれる。検討会は、議論の素材として新類型の大枠を示したに過ぎない」というのが事務局の認識だ。
 では、社保審での議論はどうなるのか。介護療養病床廃止に関連した事項を議論する介護保険部会と医療法の看護配置基準にかかわる経過措置廃止問題を議論する医療部会が検討の場として想定されているが、医療保険適用の問題が絡む場合は医療保険部会も議論に参加することになる。
 この点に関して、構成員からは、複数部会でバラバラな議論がなされる結果、部会によって異なる方針が出ることへの懸念が示された。
 検討会では合同でやるというアイデアも出たが、委員の数が多すぎるという難点がある。ブリーフィングでは「代表制とかWG方式などの別形式という方法もあり得る」(城課長)との案が語られたが、今後、開催形式を決め、委員を絞り込み、日程を調整するなどの段取りを考えると、社保審における議論開始は「3月末から4月初め」もあり得る。
 介護療養病床は法的に廃止されるので当然に介護報酬は支払われなくなる。看護配置の経過措置が切れる25対1療養病床は医療法上の指導の対象となる。その期限は2017年度末だ。
 したがって、「社保審での議論の結果、新類型を創設する上で法改正が必要となれば、2018年度に間に合わせなければならない」(城課長)ため、法案要綱をまとめる上では17年末が期限となるが、同時改定の議論に間に合わせるためには、17年秋までには基準や人員配置の結論を出さなければならない。
 施設の制度設計、基準・人員配置、規制緩和と経過措置、適用保険制度、助成金を含む財政の見通し、転換する病床と患者数の予測等々、実務的にも難題が控える中、ひとまず、社保審に委ねる原型の案がまとまったということになる。

「療養病床・慢性期医療の在り方の検討に向けて−サービス提供体制の新たな選択肢の整理案について」から 1月28日

2.新たな選択肢を考えるに当たっての基本的な条件(抜粋)(新たな選択肢に求められる条件)○具体的に、新たな類型については、次のような「利用者の視点」と「実現可能性の視点」が必要となる。
≪利用者の視点≫
●提供されるサービスの内容が、利用者の状態(医療の必要度、要介護度など)に即したものであること
●生活の質(QOL)等の観点も踏まえ、長期にサービスを利用する場として、適切な生活空間が確保されていること
●費用面から見て、利用者にとって負担可能なものであること
≪実現可能性の視点≫
●地域のマンパワーで対応可能な形態であること
●経過措置として、既存施設の有効活用も考慮すること
●経営者・職員にとって魅力があり、やりがいを感じられるものであること
3.考えられる選択肢
(本検討会における新たな選択肢の整理)
○現行の介護療養病床・医療療養病床(25対1)が提供している機能を担う選択肢として、新たな選択肢を考えるに当たって、「住まい」の機能の強化を中心とすると、
①医療を内包した施設類型
②医療を外から提供する、「住まい」と医療機関の併設類型(※)の類型が考えられる。
※現行制度においても併設は可能だが、移行を促進する観点から、個別の類型としての基準の緩和について併せて検討することも考えられる。
○その上で、現行の介護療養病床・医療療養病床(25対1)が提供している機能を担う選択肢として、別表のような対応案が考えられる。
○なお、療養病床を有する個々の医療機関の選択肢としては、これら新たな類型に移行する、医療療養病床(20対1)や介護老人保健施設、有料老人ホーム等の既存の類型に移行する、あるいは複数の類型と組み合わせて移行する等、多様な対応の選択肢が考えられる。
○また、実際の移行先は、各医療機関が、入院する患者像や経営状況などを勘案して、既存類型や上記の対応案の中から、自ら選択することとする。
○個別の制度や法律等については、社会保障審議会医療部会、介護保険部会等において議論を行うものであり、本検討会は、そこでの議論を行うことを前提として、新たな類型を新たな選択肢として追加して提示するものである。
 この新たな類型と既存の類型、在宅医療・介護サービスも活用しながら、利用者像に即した多様な機能(サービス)を用意し、地域差にも配慮しつつ、今後の医療・介護ニーズに適切に対応できる体制を整備することが重要である。

 

全日病ニュース2016年2月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 医療内包型と医療外付型の事務局骨格案を基本的に了承

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160101/news09.html

    2016年1月1日 ...療養病床の在り方等に関する検討会】 ... 療養病床以外からの)新規参入の可能性」
    については「社保審での議論次第」とした。 ... 議論において、鈴木構成員(日医常任
    理事)は、「既存施設の転換がうまくいく前提は6.4㎡を認めることである。

  • [2] 介護療養と25対1病床の移行先となる3施設別に機能・特性を整理|第 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160201/news02.html

    2016年2月1日 ... 介護療養と25対1病床の移行先となる3施設別に機能・特性を整理. 【新たな施設類型】
    社保審に諮る案まとまる。現行施設の転換と既存施設+居住施設がベース. △検討会
    に臨む土屋常任理事(写真右端). 2018年3月末で廃止が決まって ...

  • [3] 厚労省「介護療養型医療施設の機能は確保していく必要がある」|第830 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20140815/news01.html

    2014年8月15日 ... 2015年度介護報酬改定に向けた議論を行なっている社会保障審議会介護給付費分科
    会は、8月7日の会合で介護老人保健施設と介護療養型医療施設を取り上げた。 ...
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