全日病ニュース

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介護サービスの質の評価と事業者インセンティブを議論

介護サービスの質の評価と事業者インセンティブを議論

【社保審・介護給付費分科会】議論が一巡、次回に関係団体のヒアリング実施

 社会保障審議会・介護給付費分科会(分科会長=田中滋慶大名誉教授)は8月23日、(1)介護サービスの質の評価と自立支援にかかわる事業者インセンティブ、(2)介護人材確保対策、(3)区分支給限度基準額の3点を取り上げて議論した。この日の議論で、2018年度介護報酬改定に向けた議論は一巡し、9月からは第2ラウンドの議論に入る。9月6日と13日に四病協を含む24団体を招いてヒアリングを実施する予定だ。
 (1)の事業者インセンティブのテーマは、直接には「事業者における自立支援の実績を介護報酬でどう評価するか」というもの。ここには「介護報酬以外の評価のあり方」も論点に入る。
 「自立支援の実績」としては、アウトカムとしての「要介護度の改善」が分かりやすいが、こうした視点からの評価は、介護予防の通所介護と通所リハにおける事業所評価加算を除くと、今の介護報酬にはない。
 ただし、要介護度によらない状態等の改善を評価する項目としては、老健における在宅復帰・在宅療養支援機能加算(在宅復帰を評価)、訪問リハ・通所リハにおける社会参加支援加算(リハを通じた社会参加を評価)がある。
介護の質の評価をめぐり議論
 このテーマについて、事務局(老健局老人保健課)は、自立の概念を紹介した上で、事業者における自立支援に向けた介護サ-ビスの質の評価をストラクチャー、プロセス、アウトカムの3つの面で試みてきたこれまでの経緯を説明した。
 その上で、アウトカムに関しては、例えば要介護度や自立度の改善に着目した場合も、その変化は「様々な要因が複合的に関連した指標であり、利用者個人の要因による影響が大きい」ことから単純に事業者の評価に使えるか疑問があるとした。
 また、「様々なサービスを組み合わせて利用している場合が多く、提供される介護サービスのどれが効果的であったかの判断が困難である」として、特定の報酬項目で評価することは難しいとの見解を表明。さらに、「事業者がアウトカムの改善が見込まれる高齢者を選別する等、いわゆるクリームスキミングが起こる可能性がある」と指摘した。
 このように自立支援につながる介護サ-ビスの質の評価については、一義的にはどのような指標で質を測るかという問題があるが、同時に、身体機能だけでなくQOLや社会活動への参加、あるいは参加意欲といった精神状況等も対象とすべきかという評価範囲の問題もある。
 この日の議論では、委員の多くが現時点ではエビデンスに乏しく、適切な評価指標は見出せないと指摘。まずは「データの収集を行うべき」とする意見が大勢を占めた。そのためには、診療報酬におけるデータ提出加算などのインセンティブを設けてはどうかとの提案も出た。
 こうした意見に対して、介護保険サービスにおける質の評価に関する調査研究事業を手がけている松田晋哉委員(産業医科大学教授)は「エビデンスはあるが、現場には届いていないようだ」と述べ、そのいくつかを披露した。松田委員は「どういうケアマネジメントがなされれば効果が出るかという点を10年間研究した結果、明らかなエビデンスが得られている」と述べ、「ケアマネジメントの継続性」が鍵になっているとの認識を示した。
 介護サービスの質評価の議論は緒についたばかりだが、骨太2017は、2018年度介護報酬改定で「自立支援に向けた介護サービス事業者に対するインセンティブ付与のためのアウトカム等に応じた介護報酬のメリハリ付け」を求めており、今後の議論が注目される。
処遇改善加算IV とVの廃止を提案
 (2)の介護人材確保対策として、厚労省は前回の改定で実施された介護職員処遇改善加算のうち加算IV(キャリアパス要件のI・IIと職場環境要件のいずれかを満たす)と加算V(いずれも満たさない)を2018年度改定で廃止する考えを提示した。加算のIVとVはいずれも取得率が1%程度にとどまっている。
 多くの委員は廃止に賛同したが、日本労働組合総連合会の伊藤彰久委員は「加算IVとVを取得している事業所は小規模な介護療養、介護老健、通所介護などだ。これらの切り捨てにつながることはすべきではない」と廃止に強く反対した。
 (3)の区分支給限度基準額では、訪問系サービスで減算の適用を受ける場合が論点になった。事業所と同一敷地内・隣接敷地内にある集合住宅に対する訪問介護等の報酬は減算されているため、減算された報酬の単位数で区分支給限度が管理されると、減算を受けない人との間に不公平が生ずるという問題がある。多くの委員が、「区分支給限度基準額の費用の算定は減算前の単位数で計算すべき」と主張した。

 

全日病ニュース2017年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年6月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170601.pdf

    2017年4月7日 ... 回復期リハのアウトカム評価で議論. 回復期リハビリテーション病棟入院 .... 重度者(
    介護度3以上)の割合は50. %となっている(2016年4月審査分)。 ..... 向けた介護事業
    へのインセンティブ. 付与」、「生活援助を中心に訪問介護を.

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年6月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/150601.pdf

    2015年6月1日 ... 厚労省委託の「指導者育成事業実施団体」に選ばれる. 厚生労働省 ... もの。 厚生
    労働省は5月22日に、2015年度. 地域医療介護総合確保基金(介護分)に. ついて、国
    が負担する分の各都道府県 ..... 業化やインセンティブ改革等を強力に進 .... 度の仕組み
    を大胆に見直し、アウトカム指標に基づ ..... 表1 報酬単位の比較(病院、多床室、看護6:
    1、介護4:1の場合). 表2 療養機能強化型の算定基準(病院). 要介護度. 1.

  • [3] 公明党厚生労働部会(平成19年度 予算等要望・税制改正要望)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/060907.pdf

    2006年9月7日 ... 量、患者の要介護度・医療必要度を考えると困難であること、新規に介護施設を. 開設
    すること ... ては国のリーダーシップの下、国家予算を用いてのIT化の推進事業は、種々
    の ... 18年度診療報酬改訂によりIT化に伴う費用の一部が診療報酬に反映されたもの
    ... 果(アウトカム)についての情報を整備し公開することは、医療の質を維持・向 ... こと
    によりインセンティブを付与するなどの試みは各国において行われている。

  • [4] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年2月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160201.pdf

    2016年2月1日 ... もの考えがどれほど制度に反映されるかとなると不安が残る検討会となった印. 象は私
    だけ ... リハ病棟入院料には、アウトカム評価. の導入や .... 当事業の. 普及を図りつつ
    保険者インセンティブ .... 16年度に5疾病5事業と病床規制の方法など医療計画を
    見直し. 改正医療 ...... 正化する。 要介護者(外来)の維持期リハは来3月まで.

  • [5] 中小病院のあり方に関するプロジェクト委員会報告書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/199810.pdf

    る場合の料金徴集などの経済的インセンティブに関わらず、依然として外来部門の.
    機能分化は進ん ..... (3)1999年4月より介護サービス実施事業者の指定作業開始され
    る。 ... 院中の患者でも2000年4月以降は要介護度1~5と認定されなければ入院でき
    ず、.

  • [6] 病院のあり方に関する報告書 (2015-2016年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2015_2016_arikata.pdf

    施設利用は中重度中心でユニットケアが普及、各要介護度の認定者 ... 介護予防等
    リスクを軽減する取り組みにより要介護者等が3%程度減. 少 ...... ③ 診療アウトカム
    評価事業とDPC 分析事業の一元化 ...... に対するインセンティブを設けた制度設計が期.

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