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新専門医制度の来年度開始に一定の理解

新専門医制度の来年度開始に一定の理解

【厚労省・医師養成等検討会】全国市長会が地域医療への配慮を念押し

 厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(遠藤久夫座長)は8月9日、新専門医制度への対応を協議した。来年度の制度開始を目指す日本専門医機構の説明に対し、委員の多くが理解を示した。ただ全国市長会の立谷秀清委員(相馬市長)は、新専門医制度が地域医療に悪影響を与える可能性が依然としてあるとの考えを表明した。
 機構は新専門医制度の開始を当初の2017年度から1年延期する方針を決定して以降、医師偏在の拡大など地域医療への悪影響が生じないよう、新整備指針や運用細則を改訂し、来年度の実施に向けて準備を進めてきた。
塩崎前厚労相が談話を発表し地域医療への配慮を求める
 8月2日には、塩崎恭久前厚労相が機構の吉村博邦理事長と面会し、談話を発表した。談話は、指導医や専攻医が基幹病院に集中するなどの懸念を「完全に払拭するに至っていない」と指摘。都道府県協議会だけでなく、厚労省に対しても、学会ごとの専攻医の応募状況や配属状況などを迅速に報告し、「万が一、地域医療に影響を与える懸念が生じた」と厚労省が判断する場合には、「機構と学会に、実効性ある対応を求める」と釘を刺した。
 塩崎厚労相の談話に対し、吉村理事長は8月4日の会見で重く受け止めると表明するとともに、制度の改善が必要と判断すれば、研修内容の修正を学会に依頼することを明確にした。あわせて、専攻医の不安を払拭するため、新専門医制度の来年度開始を宣言。10月初旬を目途に、基本19領域の専攻医の一次登録を始め、12月中旬には二次登録を実施。研修を希望するすべての専攻医が参加できるよう、年内に調整する意向を示した。
相馬市長が新制度に懸念を表明
 これらの経緯を踏まえ、9日の検討会では、改めて新専門医制度開始に向けて議論した。冒頭、立谷委員が「機構が来年度開始を宣言したことは違和感がある」と述べた上で、「都道府県の格差が大きく、都道府県協議会が実施状況をチェックするのは困難ではないか」と質問した。
 これらに対し、機構の松原謙二副理事長は、「地方自治体の首長の意見を重く受け止める。専攻医が不安に感じており、走りながらでも進めていく必要があり、来年4月に開始したい」と理解を求めた。
 厚労省は都道府県協議会について、(6月27日に)通知を出し、担当者への説明会も開催しており、体制整備が進められている状況を説明した。
 日本医療法人協会の加納繁照委員は、「総合診療専門医の研修内容が、まだ具体的に示されていない」として現況を尋ねた。松原副理事長は、研修の整備規準等を近日中に機構のホームページに掲載する予定であるとするとともに、整備規準等に基づいた研修内容が都道府県協議会で諮られると述べた。その上で、「総合診療専門医の研修が都市に集中すれば、本末転倒なので十分注意して対応する」と述べた。
 また、加納委員は、今後の制度の運用で問題が生じれば、同検討会を通じて、是正を求める意見を出すことができるかと厚労省に質問した。厚労省は、「この検討会で議論できる」と述べ、卒前・卒後の一貫した医師養成のあり方の検討とあわせ、同検討会を当面存続させる考えを説明した。
 そのほかの委員からも、更新要件の緩和など、来年度の制度開始に関連する質問が出たが、全体としては、真摯に対応するという機構側の説明を受けて概ね了承する形となった。
 ただ最後に、吉村理事長が「最初の専門医の認定では、(年次ごとに研修場所や研修内容を定める)プログラム制を原則とするが、その後の認定では、(年次を定めず、到達目標を達成すれば受験資格を得られる)カリキュラム制を柔軟に活用する」と発言すると、立谷委員が「プログラム制が原則だと専門医取得のハードルが上がる。プログラム制に拘泥するなら、全国市長会として反対する」と反論する一幕もあった。
山形と島根の医師養成の取組みを紹介
 同日の検討会では、地域の医師養成の取組みについて、山形県と島根県の事例が紹介された。
 山形県については、山形大学医学部を中心とする蔵王協議会(嘉山孝正会長)の紹介があった。地域医療適正配置委員会を組織し、個々の病院長の主観的な要望ではなく、地域の人口や年齢分布、医療機関数や医師数など医療資源を分析したエビデンスに基づき、医師の需給調整を行っている。
 また、山形大学医学部では、休職後の「リフレッシュ研修」を実施しており、過去10年間で、医師17名、看護師64名が再就職した実績がある。嘉山会長は「これを全国規模に拡大させれば、大きな効果がある」と強調した。
 加納委員は蔵王協議会に民間病院の代表が加わっていないことに対し、「民間病院の意見をどう反映させているのか」と質問。嘉山会長は「地域の状況はよく把握できているので、個々の委員が民間病院の意見を汲み取って発言している」と回答するにとどめた。
 島根県は「しまね地域医療支援センター」の取組みを紹介した。同センターは、①若手医師のキャリア形成支援②研修体制の充実支援③研修医の確保④ワークライフバランスの推進⑤医師不足状況の把握・分析─などを実施している。
 キャリア形成支援では、地域枠・奨学金貸与者全員の登録を求め、就職希望の確認を行っている。学生・研修医と各医療機関との意見交換などを実施しながら、関係者との調整を経て、キャリアプランを作成。初期・後期研修の県内実施や、義務履行の県内勤務の早期実施などを促すことで、地域定着を目指している。
 島根県の担当者は、県内の後期研修医のうち、地域枠等の医師の占める割合が5年間で4%から24%に増えるなど、一定の効果が出ていることを示した。今後の課題としては、「若手医師が充実した研修を受けられる体制を構築する」ことをあげた。

 

全日病ニュース2017年9月1日号 HTML版

 

 

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    養成の在り方と地域医療に関する検討会」(遠藤久夫座長)が4月24日に初会合を開い
    た。 ... 懸念に配慮して、基幹施設の基準や5都府県の都市部に設けた専攻医募集定員
    の上限設定、カリキュラム制導入など対応を講じていることを説明した。

  • [2] 新専門医制度の来年4月開始を宣言|第900回/2017年8月15日 ...

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    世紀の医療を考える「全日病 ... 日本専門医機構の吉村博邦理事長は8月4日、理事会
    後の会見で、10月初旬を目途に専攻医の一次登録を始め、新たな ... 地域医療への
    配慮については、厚労省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」で
    指摘された事項などを新整備指針や運用細則に反映させたことを明記した。

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    2016年4月15日 ... 新専門医制度に関する厚労省の委員会が初会合|第869回/2016年4月15日号
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