全日病ニュース

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持分なし医療法人への移行計画の認定制度めぐり議論

【続報・全日本病院学会 in 石川】

持分なし医療法人への移行計画の認定制度めぐり議論

【医業経営・税制委員会】

 先の通常国会で成立した医療法等改正により、持分なし医療法人への移行計画の認定制度が延長され、10月1日から施行された。多くの医療機関は、新たな認定制度をどう利用するか悩んでいると思われる。医業経営・税制委員会の企画は、延長された認定制度をめぐって議論した。座長は、全日病の中村康彦副会長(医業経営・税制委員会委員長)。
 厚生労働省医政局医療経営支援課の佐藤美幸課長が、10月1日からの新たな制度の概要を説明した。2014年10月に「持分なし医療法人」への移行計画を国が認定する制度を設け、相続税等の猶予・免除の税制措置を行ってきた。
 この認定制度は9月末までの措置だったが、今回の改正により3年間の延長が決まった。
 認定制度の延長に伴い、役員数や役員の親族要件、医療計画への記載などハードルの高い要件を緩和して贈与税の非課税対象を拡大する一方、法人の運営が適正であることを要件として追加し、移行後6年間、要件を維持することを求めることになった。
 佐藤課長は、8月のパブリックコメントをもとに、運営の適正性に関する要件を説明。要件は、◇当該医療法人の関係者に対し特別の利益を与えない、◇役員に対する報酬が不当に高額なものにならないよう支給基準を定めるなど8項目(要件は9月27日の医療法施行規則の一部を改正する省令(厚生労働省令101号)で示された)。
 8項目の認定要件に基づいて厚労省が移行計画の認定を行う。移行後6年間は、年に1回の報告を求め、要件を満たしていることを確認する。満たしていない場合は改善を求め、改善されない場合には認定の取消しとなり、遡って課税される。
存続のために持分なしへ移行を選択
 尾張温泉かにえ病院理事・事務局長の真野康子氏は、持分なし医療法人への移行に際して悩む医療法人の理事として発言した。同病院は、名古屋市近郊の蟹江町にある118床のケアミックス病院。父親の個人病院として始まり、医療法人に移行し、地域の医療のために病院を大きくしてきたが、高齢の母親の相続を考えるとこのままでは存続は難しいと判断。病院の継続のために持分の放棄を検討する中で様々な障害があることもわかってきた。10月からの移行計画認定制度では、障害となっている同族要件がなくなり、「要件を満たしやすくなって、なんとかなると思った」という。
 持分なし医療法人への移行にあたっては、要件を満たすかどうかのシミュレーションを行い、その上で親族に持分の放棄を依頼するための準備を進めている。専門的な知識が必要なので、素人が判断するのではなく、専門家の力を借りて進めることが重要と述べた。
 川原経営総合センターの川原丈貴代表は、経営の観点からみた持分なし医療法人への移行について発言した。長年、医業経営を続けていると、剰余金が巨額となり、相続税の課税や持分の払い戻しが発生すると経営の大きなリスクになる。
 これまでの制度では、税務署の個別判断でみなし贈与税が課税されるかどうかが判断されていたが、新たな認定医療法人制度では、厚生労働大臣の認定となった。認定の基準が医療法施行規則で定められ、認定を受けていればみなし贈与税の課税のリスクがないことが大きなポイントだと指摘した。また、持分なし医療法人に移行後、6年間は認定基準を維持しなければならないことも重要なポイントと指摘。要件を6年間維持できるかを踏まえて決断しなければならないと指摘した。
 中村副会長は「新しい認定医療法人制度は、かなり要件が緩和されたと感じている。地域の医療を守っていくために、病院の永続性を保つことは2代目、3代目の大きな役割だ。新しい制度をもとに、今後の方向を考えていく必要がある」と呼びかけた。