全日病ニュース

地域定着図るため臨床研修制度を見直し

【厚労省・臨床研修部会】地域枠の医師に研修病院の別枠設ける

　厚生労働省は９月27日の医道審議会・医師臨床研修部会（桐野高明部会長）に、医師の地域定着を図るための臨床研修制度の見直し案を示した。地域枠の医師が研修する臨床研修病院に、一般のマッチングとは別枠を設けるとともに、募集定員の設定に当たり都道府県が主体的に関わることとした。また、都道府県別の研修医の希望者に対する募集定員の比率は1.05倍程度まで圧縮することを検討する。次回に具体的な計算式を示し、年内に臨床研修制度における医師偏在対策をまとめる。
　臨床研修を出身大学と同じ都道府県で行うと、研修後も同じ都道府県で勤務する割合が高いとの調査がある。しかし地域枠の研修医が、一般の研修医とマッチングで競合すると、診療義務の課された地域の希望病院で採用されない可能性がある。そこで、医師不足の臨床研修病院などに、一般とは別枠を設け、地域枠の医師が出身大学の都道府県により多く残れるようにする。 　また、現在は国が定めている臨床研修病院・大学病院の指定・募集定員設定を、都道府県が決めるようにし、柔軟な対応を促す。国より都道府県の方が、地域の実態を把握しており、地域医療に責任を持つとされる都道府県の関与が限定的との指摘を踏まえた。
　全日病副会長の神野正博委員は、研修医募集定員を適正化する中で、地域枠の医師を別枠で優先することなく都道府県の調整機能で対応すべきと主張した。厚労省は、地域枠医師の別枠は地域の状況に応じ、慎重に対応すると説明し、次回に具体案を示すとした。
　現在、医師の大都市への集中を防ぐため、2020年に向け全体で1.1倍にすることを目指している研修医の希望者に対する募集定員の比率は、さらなる圧縮を検討する。全体の比率が決まると、一定の基準により、都道府県別の募集定員が決まる。比率を高くし、結果として募集定員が増えると、希望者が多い大都市に研修医が集中してしまう。逆に、募集定員が減れば、全国に研修医が配分されるが、過去の実績を下回る都道府県が出てきてしまう。
　厚労省は比率を1.1より下げた場合の試算を示した。2025年度に1.05倍だと、京都府で募集定員上限が2017年度実績を下回る。2025年度に1.00倍だと、東京都、大阪府、福岡県、京都府で下回る。熊本県や奈良県も上限が実績に近づくため、1.05倍が現実的とされた。厚労省は次回以降、計算式を示すと述べた。
　また、地域枠で入学したにも関わらず、約束した従事要件に反する研修医を臨床研修病院が採用した場合の対応を決めた。従事要件に反する研修医を採用した病院には臨床研修費補助金または募集定員の削減、あるいはその両方を課す。前回の部会では、金銭的なペナルティーは望ましくないとの意見が出て、調整していたが、一定の対応を図る。桐野部会長は「地域枠が本来の趣旨とは違う使われ方がされない対応が必要」と強調した。周知期間を経た上で、2019年度から実施する。
　一方、委員からは研修医本人に対しても、何らかの罰則を求める意見が相次いだ。しかし、行政処分以外に不利益処分を行う法令がないため、当面は病院への対応の運用状況を確認した上で、再度検討するとした。厚労省は口答で注意することは可能としている。