全日病ニュース

2018年度医療・介護同時改定を睨む

【医療保険・診療報酬委員会】

医療保険・診療報酬委員会　委員長　津留英智

　はじめに座長の猪口雄二会長（中医協委員）より、2018年の医療・介護同時改定について総説があった。内閣府により高齢化による社会保障費の伸びは年間5,000億円に抑えることとされており、約1,400億円分の抑制をしなければならない問題に加え、財政制度等審議会より、７対１入院医療の厳格化、介護医療院の創設、調剤報酬の見直し等々の、更に強い抑制方針が示されており、極めて厳しい改定が予想されるとした。続いて、４名の演者から発言があった。その要旨は以下の通り。
① DPC・急性期（医療保険・診療報酬委員会　太田圭洋副委員長）
　急性期入院基本料はこれまで主に看護師配置を要件とされてきたが、新たな評価指標が作成される方向にある。
　ただし2018年からではなく段階的に適応される見通し。７対１、10対１の評価指標である、「重症度、医療・看護必要度」の見直しがあるのかは注視が必要。DPC では、暫定調整係数の激変緩和措置の廃止に伴い、マイナス緩和措置病院には大規模な効率化が求められる。今後、入退院支援が重要なポイントとなる。
②回復期リハ病棟・地域包括ケア病棟（同委員会　津留英智委員長）
　（回リハについて）FIM によるアウトカム評価について更なる検討が必要。また高齢者へのリハ提供については、都道府県ごとに年齢別に減点・査定のダブルスタンダードが存在するのは問題。退院後のADL 低下をどう防ぐのかも課題である。
　（地域包括ケア病棟について）サブアキュートの緊急時の受入、在宅・生活復帰支援を重視する方向へ検討されており、大病院が院内転棟目的で病床機能転換すると、地域における機能分化・連携を阻害しかねないことから、在宅からの入棟患者の割合などで評価される可能性がある。
③療養病棟入院基本料（同委員会　田蒔正治委員）
　来春、介護療養（6.1万床）と医療療養25対１（27.8万床）が廃止となり、介護医療院が創設されるが、転換準備期間が６年ある。25対１医療療養が残る可能性もある。介護医療院は、介護報酬が未定であり、市町村が保険者なので、財政的な不安がある。医療区分１～３の見直しや「重症度、医療・看護必要度」との評価項目の整合性が必要であり、現行の医療区分１の70％を在宅医療・介護医療院へ移行することの弊害が危惧される。当面は「医療区分制度」が存続するだろうが、慢性期DPC 等の新たな適正評価・見直しが求められる。
④介護保険・介護医療院（全日本病院協会　安藤高朗副会長）
　国への要望としては、これまでに様々な団体より意見が出されている。創設される介護医療院については、日常的な医学管理が必要な重介護者の受入ができること、看取り・ターミナルといった機能を持つ必要性が高いこと、居宅系施設として取り扱い、医療機関からの在宅復帰率の対象とすべきであること、円滑な転換に向けて段階的転換を検討すること、利用者の状態に応じたリハビリの提供、アウトカムを基にした評価を導入すること、認知症ケアに対する評価が必要であり、介護職員処遇改善のための支援策の継続と、急性期DPC にて出来高算定できる薬剤との統一的な扱いにして欲しい等が挙がっており、医療と介護のどちらにも関係する施設として、各団体にて活発な議論が行われている。
　その後パネルディスカッションが行われた。「重症度、医療・看護必要度」に代わり、DPC データを使った評価についての見通し、地域包括ケア病床については、地域完結型ではなく自院完結型医療としての利用は問題である点、介護医療院は介護保険財源で将来的に担保されるのかが懸念される点、介護ロボットについては、未来投資会議での議論として、食事、排泄介護は困難だが、見守り、介護記録については可能性があるなどの意見があった。