全日病ニュース

全日病ニュース

救急医療管理加算や慢性期のデータ提出で新たな指標

救急医療管理加算や慢性期のデータ提出で新たな指標

【中医協・入院医療分科会】短期滞在手術等基本料の追加は再度分析

 中医協の入院医療等の調査・評価分科会(武藤正樹分科会長)は10月18日と11月2日に会合を開き、入院医療に関する2017年度調査の分析を行うとともに次期診療報酬改定の方向性を議論した。具体的には、短期滞在手術等基本料、救急医療管理加算、慢性期病棟のデータ提出項目、「重症度、医療・看護必要度」とDPC データの連関性の分析の結果などを議題とした。
 短期滞在手術等基本料3では、一定程度治療法が標準化され、短期間で退院可能な手術・検査について、4泊5日までの報酬を包括評価している。対象となる手術・検査は、◇在院日数の平均+1SD が5日以内◇一定の症例数が存在◇入院5日以内の包括範囲の出来高実績点数のばらつきが小さい─を基準としている。
 厚生労働省はこれらの条件に適合するものとして、「副腎静脈サンプリング」「子宮鏡下子宮内膜焼灼術」「子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術」「子宮内膜ポリープ切除術」を提示した。しかし委員からは、「包括範囲の出来高実績点数のばらつきが必ずしも小さくない」との意見があり、再度データを分析することになった。
 救急医療管理加算は、加算を算定できる患者基準の見直しが課題となっている。2016年度改定で「1」(900点)の基準が明確化されたが、「2」(300点)は基本的に「1」に準じる状態とされ、算定回数も増えている。厚労省は基準を見直すため、救命救急センターの充実段階評価の基準例や救急患者に関する指標を例示した。
 救急患者に関する指標としては、「意識障害または昏睡」の判断に「JCS、GCS」、「呼吸不全または心不全で重篤な状態」の判断に「動脈血酸素分圧、NYHA 分類等」、「ショック」の判断に「収縮期血圧の低下、昇圧剤の使用等」などをあげた。全日病副会長の神野正博委員は、「分析するのは賛成だが、例示は厳しすぎるようにみえる。様々な医療機関が救急医療を行っており、救命救急センターと同じ指標は使えない」と述べた。
 慢性期病棟のデータ提出項目の検討は、同分科会の中間まとめで、DPC対象病院が提出しているデータ提出を一定規模以上の回復期リハビリテーション病棟や療養病棟にも求める方向性を盛り込んだことを踏まえたもの。ただ回復期や慢性期にあったデータとする必要があり、今回厚労省が新たな項目などを提示した。
 慢性期の患者に特徴的な症状・状態としては、「脱水」「発熱」「褥瘡」「摂食・嚥下機能低下」「低栄養」「疼痛の訴え」「認知症の周辺症状」があがった。さらに、要介護度や主治医意見書に含まれる症状・状態など介護との連携に関連する項目を示した。神野委員は、急性期との連続性のあるデータを把握するため、共通項目のデータが一定程度あることが重要と強調した。
 そのほか、厚労省が13年ぶりに病院の給食部門の収支を調べ、公表した。
 結果は、全面委託、一部委託、完全直営のいずれの場合でも、収支差額は赤字だった。患者1人1日あたりの収支は全面委託で▲661円、一部委託で▲757円、完全直営で▲706円。過去の調査より大幅に収支が悪化していた。
 神野委員は「給食部門で手当てがなかったことが、疑問の余地なく明らかになった」と述べた。
 11月2日の分科会では、「重症度、医療・看護必要度」とDPC データ(EFファイル)の連関性の分析結果が示された。両者の連関性が強ければ、DPCデータに入力する診療報酬項目で、看護必要度の測定を代替できる可能性がある。分析結果では、C項目(手術等の医学的状況)では一部を除き、連関性が高いが、A項目(モニタリングおよび処置等)は、連関性が高い項目と低い項目で差があることがわかった。
 委員からは、「現状でEF ファイルを患者重症度の判定に用いるのは難しい」と慎重な対応を求める意見があったが、EF ファイルで判定すると、調査した7対1入院管理料病棟で、該当患者割合は、看護必要度の28.8%に対し24.8%となり、より低くなった。活用する場合、神野委員は現行25%基準を下げる必要があるとした。
 次期改定でのDPC データの活用に慎重な意見が相次いだことに対し厚労省は、「判定で活用できる可能性が示唆された」ことを強調した。

:

 

全日病ニュース2017年11月15日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 中医協・入院医療分科会> 2017年度調査の結果は9月以降に公表

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170515/news03.html

    2017年5月15日 ... 2017年度調査の結果は9月以降に公表|第894回/2017年5月15日号 HTML版。21
    世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と15日に発行
    する機関紙です。最新号から3ヶ月前まではヘッドライン版を、3か月前以前は紙面PDF
    を無料でご覧頂けます。全日病会員の方は、最新号まですべての紙面PDFがご覧頂け
    ます。

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2015年11月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2015/151115.pdf

    2015年11月15日 ... 中医協. 鈴木委員地域包括ケア病棟について日医・四病協見解を提言. 全日本病院
    協会の猪口雄二副会長は10月30日付で中央社会保険医療協議会の2号側. (診療側)
    委員に選任され、11月4日の中医協総会から審議に参加した。長瀬委員(日精協 ..... は
    、「ケ 緊急手術を必要とする状態」に準じて救急医. 療管理加算1として評価してはどうか
    。 ◎小児慢性期医療に関する論点. ・小児入院医療管理料について、在宅療養指導
    管理. 料や在宅療養指導管理材料加算など在宅医療の導入. に係る項目は ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。