全日病ニュース

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社会保障費の将来推計をめぐり議論

社会保障費の将来推計をめぐり議論

【社保審・医療保険部会】医療・介護費用の伸びには疑念も

 社会保障審議会の医療保険部会(遠藤久夫部会長)は5月25日、2040年を見据えた社会保障の将来見通しと政策課題を議論した。政府が5月21日の経済財政諮問会議に提出した「2040年度の医療・介護給付費の見通し」の説明を受けるとともに、厚生労働省が今後の医療保険制度の検討方針を示した。
 厚労省は「2040年度の医療・介護給付費」を説明。地域医療構想や介護保険事業計画などの施策を反映した「計画ベース」では、92.5兆~ 94.3兆円と推計した。このうち、医療給付費は66.7兆~ 68.5兆円になると見込んだ。
 また、2040年を展望した社会保障改革の政策課題については、①社会保障の持続可能性の確保②現役世代の人口が急減する中での社会の活力維持向上③労働力の制約が強まる中での医療・介護サービスの確保をあげた。
 その上で、今後の医療保険制度の検討について、「健康寿命の延伸と医療・介護サービスの生産性の向上に向けた目標設定や施策の具体化に着手し、可能なものから予算措置や制度改正を検討していくことが必要。あわせて、医療保険制度の持続可能性の確保のため、不断の改革を進め、総合的な社会保障改革に取り組んでいくことが必要」との考えを示した。
 医療保険制度の検討課題では、制度の持続可能性を図るため、「負担能力に応じた負担のあり方(世代間・世代内)」、「保険給付のあり方」、「医療保険制度の基盤・保険者機能の強化」、「高齢者医療制度のあり方」―をあげている。現役世代の人口が急減する中での社会の活力の維持向上に向けては、「介護予防と保健事業の一体的実施など健康寿命の延伸」「被用者保険の適用拡大」を課題とした。
 将来見通しに対し被用者保険代表の委員は、「今のままでは現役世代の拠出金や保険料の負担が増え、現行制度の枠組みでは国民皆保険の維持は極めて困難。医療費の負担構造改革は待ったなしだ」と訴えた。しかし医療関係団体の委員からは、医療・介護給付費は改定の影響や患者数の減少などで大きく伸びないとの疑念が示され、「シミュレーションをやり直したほうがいいのではないか」との声があがった。

 オンライン資格確認2020年度に導入
 同日の部会で厚労省は、オンライン資格確認や被保険者番号の個人単位での履歴管理について説明した。マイナンバーカードを含めた受診時のオンライン資格確認は、2020年度中に運用を開始する予定になっている。
 オンライン資格確認のメリットとしては、◇資格喪失後の受診に伴う事務コスト等の解消◇高額療養費限度額適用認定証の発行業務等の削減◇特定健診結果や薬剤情報を照会できる仕組みの整備◇保健医療データの分析の向上―があがっている。
 被保険者番号の個人単位での履歴管理については、マイナンバーのインフラを活用して、保険者の委託を受けて支払基金と国保中央会が資格履歴を一元的に管理する仕組みを整備する。個人単位の被保険者番号については、高額療養費の世帯合算等で世帯単位の番号を引続き使うため、現在の世帯単位の被保険者番号に2桁の個人を識別する番号を付する方向で調整している。
 導入スケジュールとしては、◇2020年4月以降、各保険者で個人単位の2桁番号を発行開始◇2020年秋から年内にかけて保険者のオンライン資格確認システムに個人単位の2桁番号を登録◇2020年度中にオンライン資格確認を開始◇2021年5月から世帯単位の番号に2桁番号を付してレセプト請求(4月診療分から)―を示した。

 

全日病ニュース2018年6月15日号 HTML版

 

 

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