全日病ニュース

ケアマネジャーと病院職員の多職種協働で報告書

【高齢者医療介護委員会】モデル事業で情報共有の課題を抽出

　「入退院時におけるケアマネジャーと病院等職員との多職種協働のあり方に関する調査研究事業」の報告書がこのほどまとまった。ケアマネジャーと病院等職員の連携方策を検討するためのモデル事業を実施し、課題を抽出。入退院時における適切なケアマネジメントの検討に資する基礎資料を整備した。高齢者医療介護委員会が、2017年度老人保健事業推進費等補助金による調査研究事業として実施した。
　入院中の要介護者等が退院後に円滑に在宅生活に移行するためには、入退院時における医療機関等の職員（看護職員、医療ソーシャルワーカー）と居宅介護支援事業所（ケアマネジャー）との円滑な連携が重要だ。ただし、医療従事者と介護従事者では扱う情報の性質が異なるものも多い。情報共有の仕組みを構築するに当たっては、共有すべき情報の内容、情報共有すべき医療・介護関係者の範囲、情報共有の仕組みを具体的に検討する必要がある。
　そこで、入退院時における連携方策を検討するためのモデル事業を実施し、連携に向けた課題を抽出することとした。全日病の会員病院から協力施設として４病院を選定してモデル事業を実施。居宅介護支援事業所と入退院患者についての情報共有を行った。
　モデル事業に参加したのは、◇医療法人慈繁会付属土屋病院（福島県郡山市）◇公益財団法人脳血管研究所美原記念病院（群馬県伊勢崎市）◇医療法人愛の会光風園病院（山口県下関市）◇医療法人弘生会本庄内科病院（熊本県熊本市）の４病院で、計21名の患者を対象に実施した。
　モデル事業の主な特徴は、次の通り。
〇患者の入院時に、病院の地域連携室のスタッフが患者の入院前の担当ケアマネジャーと対面で情報収集すること
〇院内スタッフをはじめとして、患者本人や家族、ケアマネジャー等外部事業者をまじえた退院前カンファレンスを開催すること
〇退院前カンファレンスに先立ち、基本的な伝達事項を記載した資料を参加者に配布するとともに、当日の検討内容の議事抄録を後日配布すること　モデル事業を通じて、病院が患者のケアマネジャーを迅速に特定できる仕組みや病院側の連携窓口の必要性などが明らかになった。報告書は、効果的な連携に関する課題を次のようにまとめている。
〇入院時の面接や退院時のカンファレンスにおいて病院職員とケアマネジャーが「顔の見える」関係を構築することが重要。
〇ケアマネジャーは家族や介護サービス事業者から網羅的に情報を収集・集約して病院に伝える役割があり、地域連携室の担当者は、ケアマネジャーから提供される情報を院内スタッフに効果的・効率的に展開し、退院支援の取組みを進める役割があり、両者は情報の結節点として大きな役割がある。
〇各専門職が他職種にもわかる言語を用いて情報共有を行い、視点をそろえる必要がある。各専門職が職能発揮のために期待する情報ニーズについて意識合わせをすることも重要である。