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ホーム全日病ニュース(2018年)第924回/2018年9月1日号医師の働き方改革に係る緊急アンケート調査まとまる...

医師の働き方改革に係る緊急アンケート調査まとまる

医師の働き方改革に係る緊急アンケート調査まとまる

半数の病院が現状の救急体制を維持できないと回答

 全日病は、「医師の働き方改革に係る緊急アンケート」調査の結果をまとめ、7月21日の常任理事会に報告した。それによると、回答した病院の約半数が、医師の増員なしには「救急体制が維持できない」と考えていることがわかった。医師に対する時間外労働の上限規制が検討される中で、調査結果は医療現場の実態を知る貴重な資料となっている。

 現状の救急体制は維持できない
 アンケート調査は、3月19日~4月6日に病院のあり方委員会が実施した。調査対象は、全日病会員のうち、救急告示病院、2次救急指定病院、3次救急指定病院、その他医療資源の少ない地域の病院を対象とした合計1,454病院。回答数は411で、回答率は28.3%だった。
 アンケートでは、医師の労働時間に上限が設定された場合、医師の増員なしで救急体制が維持できるかを聞いた。「医師の働き方改革に関する検討会」が2月にまとめた「中間的な論点整理」で、時間外労働の上限規制について、連続複数月の平均で80時間(最大100時間/月)、年間720時間とする意見が示されていることを踏まえ、医師増員なしの救急体制維持の可否を聞いたところ、この上限時間をもってしても、約半数の病院は現状の救急体制を維持できないと回答した(図1)。

図1 「医師の働き方改革に関する検討会」で議論されている労働時間における医師増員なしの救急体制維持の可否

 大規模病院で救急体制維持が困難に
 「救急体制を維持できない」と回答した病院は比較的大規模の病院が多く、「救急体制を維持できる」と回答した病院と比較して病床数で約1.5倍、常勤医師数は約2倍、救急患者数は約2.5倍だった(表1)。「救急体制を維持できない」と回答した病院は常勤医師1人当たりの当直回数が多く、かつ、当直に当たる医師の数も多い。常勤医師の平均当直回数(月)をみると、「救急体制を維持できる」と回答した病院は2.1回/月であるのに対し、「できない」と回答した病院は2.8回/月である。
 平均夜間当直医師数(人/週)をみると、「救急体制を維持できる」と回答した病院は、10.4人/週であるのに対し、「できない」と回答した病院は、20.0人/週である。非常勤の医師で補っている病院の方が「維持できる」と答え、常勤で当直している病院は「維持できない」と答えている。

 外来診療縮小や救急診療制限も検討
 労働時間の管理状況について聞くと、タイムレコーダや出退勤のみの管理が多いが、8%が把握できていないと答えている(図2)。
 「当直を労働時間に含めるか」という質問に対し、半数以上の57%の病院が「当直を労働時間に含めない」と答えている(図3)。
 当直医師の勤務環境については、45%の病院が労基法に定める宿直環境を遵守できていないと回答している(図4)。また、遵守している病院においても約3割の病院で労働基準監督署の許可を得ていないと回答している(図5)。これらの病院は、労基署の立ち入りを受けると違法の指摘を受ける可能性がある。
 勤務時間の上限規制が適用された場合、医師の増員で対応すると回答した病院が多数を占める一方、外来診療の縮小や救急診療の制限、取りやめを検討すると回答した病院も多い(図6)。

図2 勤務時間把握方法 (単位:病院) 図3 当直を労働時間に含めるか
(単位:病院)

図4 労働基準法41条当直環境遵守状況
(単位:病院)
図5 労働基準法41条労基署許認可取得状況
(単位:病院)

図6 勤務時間上限が導入された場合の対応について (単位:病院)

 

全日病ニュース2018年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 「医師の働き方改革に係る緊急アンケート」 結果概要

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/180808_2.pdf

    2018年6月21日 ... 医師の働き方改革に係る緊急アンケート」調査結果. 2.主要調査項目平均値比較. 救急
    体制を維. 持できる. (n=185). 救急体制を維持 ... 救急体制を維持できない」と回答した
    病院は常勤医師一人あたりの当直回数が多く、かつ、当直. にあたる ...

  • [2] DMATの体制強化で人件費の増額求める|第922回/2018年8月1日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180801/news02.html

    2018年8月1日 ... DMATの体制強化で人件費の増額求める|第922回/2018年8月1日号 HTML版。21
    世紀の医療を考える「全日病 ... しかし専任の常勤職員は3名で、そのほかは併任や
    非常勤職員だ。 ... 高齢化や医師働き方改革など社会の変化に対応するため、第1次
    ~3次救急体制の見直しを含め、広範な検討を行うことになる。

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年5月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180501.pdf

    2018年5月1日 ... 医師働き方改革は厚労省検討会の結. 論が来年3月に出される。医学部受験 .... 護
    職員の平均給与額(常勤者・月給=. 2018年9月)は、前年同月比1万2,200 ....
    センターを含む救急医療提供体制を議. 論するとともに、災害医療について今.

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