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費用対効果評価の本格的な議論始まる

費用対効果評価の本格的な議論始まる

【中医協・費用対効果評価専門部会】アプレイザルの手法を議論

 中医協の費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は8月22日、医薬品などの費用対効果評価の仕組みについて本格的な議論に着手した。年度内のとりまとめを目指す。同日は、厚生労働省が有識者の研究報告を踏まえ、総合的評価(アプレイザル)の論点を提示。医薬品などの費用対効果のよい・悪いを判断するための科学的手法に関し、複数の適応疾患がある医薬品の取扱いなどで議論があった。様々な意見があったことから、同日は結論を出さず、引き続き議論することになった。
 新薬などが開発された場合に、類似の治療効果のある既存品と比べ、どれだけ費用対効果があるかを評価し、それを新薬の価格に反映させる仕組みが費用対効果評価だ。今年度は試行的に、抗がん剤のオプジーボやカドサイラ、医療機器のステントグラフトの費用対効果を評価し、価格調整を行った。2020年度からの本格実施を目指しているが、骨太方針2018では、2018年度中に具体的内容の結論を出すと明記されている。
 今後の主な検討課題としては、①対象品目の選定②企業によるデータ提出③再分析④総合的評価⑤価格調整─がある。同日は、総合的評価が議題に上がり、論点が示された。
 総合的評価(アプレイザル)では、対象品目の費用対効果を評価するのに、ICER(増分費用効果比)を用いる。具体的には、QALY(質調整生存年)を1年延ばすのに、どれだけの費用がかかるかを計算した上で、倫理的・社会的影響などの評価を加味して、総合判断する。それを薬価などの価格調整に反映させる。ただし、価格調整の方法は別の論点としている。
 有識者の研究報告(代表=福田敬・国立保健医療科学院)を踏まえ、特にICERの手法に関して、議論が行われた。具体的には、複数の疾患に適応がある場合の対応が論点になった。
 ある医薬品Xがあり、疾患Aと疾患Bに適応がある。疾患Aの場合のICER は300万円/QALY、疾患B の場合は600万円/QALYだった。一つの医薬品に一つのICERとするため、患者割合が同じとし、加重平均すると、450万円/QALYになる。試行的導入では、このような手法を用いた。
 しかし、これだと各疾患に対する評価が適切に反映されないという問題が生じる。これに対し研究報告では、適応疾患ごとにICERを計算し、それを加重平均する手法を紹介した。それにより、「適応疾患ごとに異なる価格が付けられたときの市場平均価格とも解釈でき、さらに各疾患における価値を価格に反映できる」と説明。より公正な手法と主張した。
 委員からは、妥当な考え方として賛成する意見がある一方で、引続き議論していくべき課題との意見があった。
 公益委員からは、「今回示された事例だと、費用対効果の悪い医薬品の薬価の引下げ幅が小さくなる」との指摘があった。これに対し厚労省は、「価格調整への反映の手法は別の論点」と強調した。
 そのほか、◇ICERで幅を持った数値を認める◇総合的評価は基本的には、試行的導入と同じやり方とする◇どのような形で情報公開するか─が論点になった。
 科学的に妥当な手法を用いても、分析結果が異なることがある。その場合に、幅を持った数値を認めることが論点になった。概ね合意が得られたが、価格調整にどう反映させるかが大きな課題になるとした。総合的評価のやり方では、ICERの結果に加味する倫理的・社会的影響などの評価に対し、「根拠があるものでなければならず、一定の基準を設けるべき。同じやり方とするかの判断は時期尚早」との意見が出た。
 情報公開については、できるだけ透明性の高いものにすることを求める意見があった。個別の医薬品などの情報をどこまで公表するかが今後の課題となる。有識者の研究報告によると、イギリスは企業分析を含め、膨大な資料が公開されているが、ほかの国では、医療技術評価機関からの要約が多いと報告している。

 オプジーボの薬価を4割程度引下げ
 中医協総会(田辺国昭会長)は8月22日、抗がん剤のオプジーボ(ニボルマブ・遺伝子組換え)の薬価を11月から4割程度引き下げることを承認した。今年度からの薬価制度抜本改革で、「用法用量変化再算定」による薬価見直しが、新薬収載の年4回の機会で可能になったことによる。あわせて、各適応の最適使用推進ガイドラインも見直した。
 「用法用量変化再算定」では、医薬品の1日当たりの通常の使用量が変化した場合に、薬価を変更する。薬価算定では、1日当たりの使用量が基準になっているためだ。8月21日に、オプジーボの主な効能効果である「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対して、用法用量が変更された(2週に1回3mg/㎏→2週に1回240㎎)。1㎏当たり1回3mgだったのが、体重に関係なく1回240㎎となった。これにより、体重の軽重で負担額に変化が生じる。
 実際の薬価をみると、オプジーボ点滴静注20㎎・1瓶は、5万7,225円が3万5,766円、100㎎・1瓶は、27万8,029円が17万3,768円となり、薬価が下がった。厚労省は、見直しで残薬が減ると説明している。
 これとあわせ、オプジーボに「悪性胸膜中皮腫」への適応が拡大されたことや、ヤーボイ(イピリムマブ・遺伝子組換え)との併用療法の効果が認められたことに伴い、オプジーボの各適応の最適使用推進ガイドラインが改訂される。「悪性黒色腫」、「非小細胞肺がん」、「腎細胞がん」、「古典的ホジキンリンパ腫」、「頭頸部がん」、「胃がん」、「悪性胸膜中皮種」(新規)で最適使用推進ガイドラインが見直された。

 東日本大震災と熊本地震の特例を報告
 東日本大震災と熊本地震に伴う被災地特例の7月時点の利用状況が、厚労省から報告された。それによると、東日本大震災に伴う特例は4医療機関で今年3月時点と変わらず、熊本地震に伴う特例は2医療機関減少し、3医療機関になったことがわかった。
 東日本大震災の特例では、3医療機関が「定数超過入院」を利用しており、宮城県が2医療機関、福島県が1医療機関となっている。残りの1件は、歯科医療機関で「仮設の建物による保険診療等」の特例を利用している。
 熊本地震の特例では、「仮設の建物による保険診療等」の利用が3医療機関で、3月から1医療機関減少した。「病棟以外への入院」の利用は3月から1医療機関減少して0件になった。「他の病棟への入院(被災地)」の利用は1医療機関(重複)で前回と変わらない。
 なお、同日の中医協は、厚労省の夏の人事異動後で初の開催。樽見英樹保険局長、森光敬子医療課長をはじめ、事務局が次期診療報酬改定に向けた新しい布陣となった。

 

全日病ニュース2018年9月1日号 HTML版

 

 

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    版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、 ... 中医協の費用対効果評価専門
    部会(荒井耕部会長)は7月26日、医薬品や医療機器の費用対効果評価の仕組みの
    議論の進め方を決めた。 ... 一方で、今年度から始まった試行的導入では、抗がん剤の
    オプジーボやC型肝炎治療薬のハーボニー、ソバルディなど13品目を選定 ...

  • [2] 中医協・費用対効果評価専門部会> 試行的導入での支払い意思額調査 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170901/news04.html

    2017年9月1日 ... 中医協の費用対効果評価専門部会(荒井耕部会長)は8月9日、費用対効果評価の
    試行的導入の進め方を協議。 ... 一方、試行的導入の対象となっている抗がん剤の
    オプジーボなど13品目の価格改定は、次期診療報酬改定とあわせて実施する予定に
    なっている。 ... 総合的評価(アプレイザル)では、増分費用効果比(ICER)による機械的
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  • [3] 費用対効果評価でアプレイザルのあり方等を了承|第891回/2017年4 ...

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    HTML版。21世紀の医療を考える「全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と
    15日に発行する機関紙です。最新号から3ヶ月前まではヘッドライン版 ...

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