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医学生が行う医行為を拡大の方向で整理

医学生が行う医行為を拡大の方向で整理

【厚労省研究班報告書】円滑な臨床研修に向け臨床実習を充実

 厚生労働省は7月31日、「医学部の臨床実習において実施可能な医行為の研究」を公表した。医学生が、臨床実習で行うことのできる医行為を拡大する方向で整理した。現状の実習で準拠されているいわゆる前川レポートは策定から26年が経過し、医療をめぐる環境は大きく変化した。環境変化に合わせるとともに、医師が卒業後に、より円滑に臨床研修に移行できる臨床実習の体制づくりを目指している。
 医学生は医師ではないため、医学生が医業を行うことは医師法違反になる。ただし、現行の法解釈では、「医師の医行為と同程度の安全性が確保される限度であれば、基本的に違法性はない」とされる。具体的には、①侵襲性がそれほど高くない②指導医によるきめ細かな指導・監視の下で行われる③事前に医学生を評価する④患者等の同意を得る─を条件に、臨床実習を実施している。
 これらの条件に従い、医学部4年~6年次に実施する臨床実習の医行為は、いわゆる前川レポート(臨床実習検討委員会最終報告)を目安に行われている。しかし、前川レポートが策定されてから26年が経過し、その間に、医療の技術が飛躍的に進歩するとともに、医学生が経験・習得すべき医行為は多様化した。さらに、医師免許取得後、早期に現場で活躍できる医師になるよう、臨床能力の向上が求められている。
 同研究では、今年2月から3月にかけて、臨床実習における医行為の実態を調査し、評価を行った。80大学医学部に対し、前川リポートなどから、126項目の医行為を選んだ。
 結果をみると、シミュレーション以外の項目のうち、「自信を持って行える」との回答が過半数であったものは、「手指消毒」(67%)、「ガウンテクニック」(67%)、「清潔操作」(53%)の3項目にとどまった。2割~5割は、「経皮的酸素飽和度モニター」(39%)、「皮膚消毒」(36%)、「バイタルサインチェック」(26 %)、「心電図検査」(25 %)、「医師へのプレゼンテーション」(24%)の5項目だった。その他の項目は2割未満であり、報告書は「多くの項目で『自信を持って行える』と答えた医学生は少ない傾向がみられた」と明記した。
 これらを踏まえ、報告書は、医学の進歩に合わせ、診療参加型臨床実習をさらに進めていくため、「医学生に許容される医行為を見直すとともに、医学生が経験・習得すべき診療技術を明確化」するとし、臨床実習で「実施されるべき医行為」と「実施が望ましい医行為」を再整理した。基本的には、臨床実習で実施する医行為を拡大する方向での見直しとなっている(表)。
 また、医行為を実施できる具体的な4条件も改めて整理している。
 「医学生に許容される医行為の範囲」については、表のとおり、必須項目と推奨項目で医行為を整理した。これに基づき、各大学が医学生の能力や臨床実習のカリキュラム、指導体制、実習施設などの実情に沿って、許容される医行為を定め、運用指針に記載することを求めた。
 「指導医による指導・監視」では、「指導医は実習生が医行為を実施していることを認識し、必要があれば、直ちに制止し、あるいはこれに介入できる状況であることが必要である」としている。指導者は、臨床研修制度や専門医制度の基本領域の指導医以上の指導歴があることが望ましいとした。
 「医学生の要件」では、「少なくとも公益社団法人の医療系大学間共用試験実施評価機構(CATO)が行うCBT(コンピュータによる選択式試験)における全国一律の合格水準に達する必要がある」としている。
 「患者等の同意」では、院内掲示のみでは不十分で、口頭または文書での同意を求めている。

 

 医師養成の観点から医学生が実施する医行為の例示

分類 ① 必須項目
医師養成の観点から臨床実習中に実施が開始されるべき医行為
② 推奨項目
医師養成の観点から臨床実習中に実施が開始されることが望ましい医行為
診察 診療記録記載 (診療録作成)
医療面接
バイタルサインチェック
診察法(全身・各臓器)
耳鏡 ・鼻鏡
眼底鏡
基本的な婦人科診察
乳房診察
直腸診察
前立腺触診
高齢者の診察(ADL 評価 、高齢者
総合機能評価)
患者・家族への病状の説明
分娩介助
直腸鏡・肛門鏡
一般
手技
皮膚消毒
外用薬の貼付・塗布
気道内吸引
ネブライザー
静脈採血
末梢静脈確保
胃管挿入
尿道カテーテル挿入・抜去
注射(皮下・皮内・筋肉・静脈内)
予防接種
ギプス巻き
小児からの採血
カニューレ交換
浣腸
外科
手技
清潔操作
手指消毒 (手術前の手洗い)
ガウンテクニック
皮膚縫合
消毒・ガーゼ交換
抜糸
止血処置
手術助手
膿瘍切開、排膿
嚢胞・膿瘍穿刺(体表)
創傷処置
熱傷処置
検査
手技
尿検査
血液塗抹標本の作成と観察
微生物学的検査(Gram 染色含む)
妊娠反応検査
超音波検査(心血管)
超音波検査(腹部)
心電図検査
経皮的酸素飽和度モニタリング
病原体抗原の迅速検査
簡易血糖測定
血液型判定
交差適合試験
アレルギー検査(塗布)
発達テスト 、知能テスト 、心理
テスト
救急 一次救命処置
気道確保
胸骨圧迫
バックバルブマスクによる換気
AED
電気ショック
気管挿管
固定など整形外科的保存療法
治療 処方薬(内服薬、注射、点滴など)
のオーダー
食事指示
安静度指示
定型的な術前・術後管理の指示
酸素投与量の調整
診療計画の作成
健康教育

 

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全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医学部の臨床実習において実施可能な医行為について(厚生労働省医政 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180801_8.pdf

    2018年7月30日 ... 員会において「臨床実習検討委員会最終報告J(平成 3年 5FJ13日付け健政発. 第 306
    号厚生省健康政策局長通知。以下、「前川レポートj という。)が取りまと. められ、臨床
    実習において医学生が実施することができる医行為の目安が学術.

  • [2] 共用試験や医学生の医行為を公的、法的に位置づけ|第905回/2017 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20171101/news05.html

    2017年11月1日 ... 卒後研修ですぐに地域医療で活躍できる医師の養成に向け、共用試験のCBTや医学生
    が行える医行為を公的、法的に ... 医学生が行える医行為を位置づけたものとしては、
    臨床実習検討委員会最終報告(文部科学省通知、1991年)がある。

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