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ホーム全日病ニュース(2019年)第941回/2019年6月1日号具体的対応方針の検証に向けた議論の整理(たたき台)...

具体的対応方針の検証に向けた議論の整理(たたき台)

具体的対応方針の検証に向けた議論の整理(たたき台)

【資料】※ 5月16日の地域医療構想に関するワーキンググループから(暫定版)

 今回の「議論の整理」は、地域医療構想の実現に向け、地域医療構想調整会議において、この2年間で合意に至った具体的対応方針の内容を検証するものである。厚生労働省が診療実績等の一定の指標を設定し、各構想区域の医療提供体制を分析。公立・公的医療機関が民間医療機関では担えない機能に重点化されているかを判断する材料とする。他の医療機関との代替可能性があれば、再編・統合の検討対象となる。
 なお、5月16日時点での「議論の整理」は同日のWGの意見を受け、再修正される。

1.はじめに
○地域医療構想の実現に向けては、2016年度中に全都道府県で地域医療構想が策定されたことを踏まえ、2017年度以降、個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応方針の速やかな策定に向けて、地域医療構想調整会議において2年間程度で集中的な検討を進めることとした。
○特に公立・公的医療機関等に対しては、それぞれ「新公立病院改革プラン」「公的医療機関等2025プラン」を策定し、民間医療機関との役割分担を踏まえ、公立・公的医療機関等でなければ担えない分野へ重点化された具体的対応方針であるか確認することを求めた。
○また、都道府県に対しては、都道府県単位の地域医療構想調整会議の設置や地域医療構想アドバイザーの導入、地域の実情に応じた定量的な基準の検討など、地域医療構想調整会議の議論の活性化を図るための多様な方策の導入を求めた。
○現在も、各地域では、議論の活性化を図るための様々な努力を重ねながら、公立・公的医療機関等の具体的対応方針を中心に活発な議論を継続している状況にあるが、地域医療構想の実現に向けて、PDCA サイクルを着実に実施していく観点から、この2年間で合意に至った具体的対応方針の内容を検証した上で、その結果を踏まえ、地域医療構想の実現に向けた必要な対策を講じていくことが重要である。
(省略)
○このため、今回の議論の整理は、具体的対応方針の内容の検証や、その結果を踏まえた地域医療構想の実現に向けた一層の取組について、これまでの議論を踏まえ、整理を行うものである。

2.具体的対応方針の検証方法
(1)基本的な考え方
〇地域医療構想の実現に向けては、足下の4機能別の病床数と将来の病床数の必要量とを機械的に比較し、その過不足のみに着目し議論を進めるのではなく、診療実績等の詳細なデータにも着目した上で、住民に必要な医療を質が高く効率的な形で不足なく提供できるかという視点の議論が不可欠である。
〇地域の実情は、地域の関係者にしか分かりえない側面はあるものの、各構想区域の地域医療構想調整会議における議論が、病床数の多寡のみに固執した機械的で形骸化された議論が繰り返されることのないよう注意を促す観点から、厚生労働省において、診療実績等の一定の指標を設定し、各構想区域の医療提供体制の現状について分析を行うこととする。
○厚生労働省は、各都道府県に対し、この分析結果を踏まえ、一定の基準に合致した場合は、これまでの各構想区域の具体的対応方針に関する合意内容が、真に地域医療構想の実現に沿ったものとなっているか、地域医療構想調整会議において改めて検証するよう要請することとする。
〇なお、今回整理する厚生労働省による分析方法は、これまで各構想区域で優先的に議論を進めてきた公立・公的医療機関等の役割が、当該医療機関でなければ担えないものに重点化されているか分析するものである。
〇分析方法は、あくまで現状で把握可能なデータを用いる手法に留まるものであり、分析結果が、公立・公的医療機関等が将来に向けて担うべき役割や、それに必要な再編統合、ダウンサイジング等の方向性を機械的に決定するものではない。
〇各々の公立・公的医療機関等の取組の方向性については、地域医療構想調整会議において、今回の分析方法による結果を参考としつつ、当該方法だけでは判断しえない地域の実情に関する知見を補いながら議論を尽くし、合意を得ることが重要である。
(省略)
(2)分析の手法
①診療実績等に関する分析項目の設定

〇「地域医療構想策定ガイドライン」においては、地域医療構想を策定する際には、五疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病及び精神疾患)、五事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療及び小児救急医療を含む小児医療)等の医療計画において既に定められた内容を踏まえた地域医療構想を策定することとされている。
〇また、公立・公的医療機関等に期待される役割について、「新公立病院改革ガイドライン」や「経済財政運営と改革の基本方針2018」においてはそれぞれ、
 高度急性期・急性期医療や不採算部門、過疎地等の医療提供等
 山間へき地・離島など民間医療機関の立地が困難な過疎地等における一般医療の提供
 救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門に関わる医療の提供
 県立がんセンター、県立循環器病センター等地域の民間医療機関では限界のある高度・先進医療の提供
 研修の実施等を含む広域的な医師派遣の拠点としての機能が挙げられている。
〇現時点において、公立・公的医療機関等が、これらの期待される役割を果たし、当該医療機関でなければ担えない機能への重点化が図られているか、特定の診療行為の実績に関するデータ等により分析を行う。
〇具体的には、「地域医療構想策定ガイドライン」、「新公立病院改革ガイドライン」、「経済財政運営と改革の基本方針2018」において求められる役割や疾病との関係性を整理した一定の「領域」及び「分析項目」を設定し、分析項目ごとに病床機能報告のデータを活用して実績を分析することとする。
(省略)
②分析の視点
〇分析項目ごとに、公立・公的医療機関単位で、次の要件への該当性を確認することにより、他の医療機関による代替可能性があるか分析する。
A 各分析項目について、構想区域内に、一定数以上の診療実績(診療実績とは、当該行為の実施件数や構想区域内の実施件数の占有率を含む。以下同じ。)を有する医療機関が2つ以上あり、かつ、お互いの所在地が近接。
B 各分析項目について、診療実績が特に少ない。
〇分析にあたっては、緊急性が高い急性心筋梗塞や脳卒中のような疾患と、必ずしも緊急性が高くはないがんのような疾患との違いなど、疾患ごとの特性の違いを考慮しながら、分析項目ごとに個別に診療実績の分析を行うこととする。
〇分析にあたっては、構想区域内の公立・公的医療機関等と民間医療機関等との関係性のみならず、公立・公的医療機関等同士で役割の代替可能性がないかについても分析を行うこととする。
③他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等
〇1つ以上の分析項目について、「代替可能性がある」と分析された公立公的医療機関等を、「他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等」と位置づける。※「代替可能性」を判断する水準については、厚生労働省において分析作業を進める過程で、本ワーキンググループの構成員をはじめとする有識者の意見を個別に聴取しながら決定する。
④再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等
〇「他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等」のうち、大半の分析項目について「代替可能性がある」と分析された公立・公的医療機関等については、「再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等」と位置づける。
〇「大半の分析項目」の考え方について、「代替可能性がある」とされた項目数によって機械的に判断するのではなく、各分析項目の特性を十分に考慮することとする。
⑤分析結果の公表
(省略)
⑥分析にあたって留意する事項
(省略)
〇地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟において提供する医療は、公立・公的医療機関等でなくとも担うことが可能であるにも関わらず、多くの公立・公的医療機関が実施しているとの指摘があることから、これに関する必要な分析を行い、都道府県等に提供するよう努めることとする。
(省略)

3.分析を踏まえた地域医療構想調整会議における協議・検証の進め方
(1)他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等
○「他の医療機関による役割の代替可能性がある公立・公的医療機関等」は、構想区域の医療機関の診療実績や将来の医療需要の動向等を踏まえて、代替可能性があると分析された役割について、他の医療機関に機能を統合することの是非について協議し、遅くとも2020年3月末までに結論を得ること。
○他の医療機関に役割を統合することが妥当との結論を得た場合は、その結論を踏まえ、真に必要となる医療機能別の病床数についても協議し、「具体的対応方針」の内容について、既に合意に至っている場合であっても、その妥当性を検証した上で必要な見直しを行い、同じく2020年3月末までに改めて合意を得ること。※協議のスケジュールについては、新公立病院改革プランの対象期間が、2020年度を終期とすることが標準とされている点を踏まえつつ、厚生労働省において、本ワーキンググループの構成員をはじめとする有識者の意見を個別に聴取しながら決定する。((2)についても同様のプロセスで決定する。)
(2)再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等
○「再編統合の必要性について特に議論が必要な公立・公的医療機関等」は、構想区域の医療機関の診療実績や将来の医療需要の動向等を踏まえて、他の医療機関と統合することの是非について協議し、遅くとも2020年9月末までに結論を得ること。
○他の医療機関と統合することが妥当との結論を得た場合は、「具体的対応方針」の内容について、既に合意に至っている場合であっても、必要な見直しを行い、同じく2020年9月末までに改めて合意を得ること。
(3)その他の医療機関
○(1)(2)に掲げる医療機関以外の全ての医療機関は、(1)(2)に掲げる医療機関の役割に関する地域医療構想調整会議の協議の動向に留意しつつ、地域医療構想調整会議で協議した自院の2025年に向けた対応方針を適宜点検し、見直す必要が生じれば、速やかに、改めて協議し、合意を得ること。
(4)協議にあたり留意すべき事項
(省略)
○公立・公的医療機関同士の再編統合に関する協議でも、民間医療機関をはじめ構想区域内の関係者の意見を聴きながら検討を進めることが重要である。
(省略)
○過去の病院の再編統合事例においては、統合前後で病床数の合計が変わらない事例も見受けられるが、現在の病床利用率や将来の医療需要の動向をしっかり分析し、真に必要な病床数を精査することが重要である。
(省略)

4.更なる検討が必要な課題
(省略)
〇公立・公的医療機関等の補助金等の投入・活用状況は、十分に可視化されておらず、地域医療構想調整会議の協議に活用されていないとの指摘があることから、補助金等の情報を適切かつ分かりやすく可視化するために必要な対策について検討を進める必要がある。
〇再編統合等の取組を具体的に進める上では、職員の雇用に係る課題や借入金債務等の財務上の課題への対応が必要となるが、厚生労働省において、公的医療機関等の本部とも連携しながら、各医療機関が地域の医療需要の動向に沿って、真に必要な規模の診療体制に円滑に移行するために必要な対策について検討を進める必要がある。

5.おわりに
○今回の議論の整理は、具体的対応方針の内容の検証や、その結果を踏まえた地域医療構想の実現に向けた一層の取組について、着実かつ迅速な実施を求めるものである。
○また、厚生労働省が示す分析は、これまで各構想区域で優先的に議論を進めてきた公立・公的医療機関等の役割の重点化等について、分析するものであり、その方法は、公立・公的医療機関等が将来に向けて担うべき役割や、それに必要な再編統合、ダウンサイジング等の方向性を機械的に決定するものではない。分析結果を踏まえて、地域医療構想調整会議において具体的対応方針の検証やその結果を踏まえた必要な対策を検討すべき性格のものであることが重要である。
(省略)

 

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