全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2019年)第941回/2019年6月1日号公立・公的病院の重点化進める具体的対応方針を再度修正...

公立・公的病院の重点化進める具体的対応方針を再度修正

公立・公的病院の重点化進める具体的対応方針を再度修正

【厚労省・地域医療構想WG】構想と偏在対策、働き方改革の関係整理

 厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)は5月16日、地域医療構想を推進するため、公立・公的病院の医療機能の重点化の議論を後押しする「具体的対応方針の検証に向けた議論の整理」を修正するとともに、地域医療構想調整会議の進捗状況や2018年度病床機能報告制度の報告を受けた。公立・公的病院の機能の見直しはあまり進んでおらず、具体的対応方針に沿って、地域医療構想を着実に進める必要があるとの方針を確認した。
 厚労省は最初に、2040年を展望した医療提供体制の改革として、地域医療構想、医師・医療従事者の働き方改革、医師偏在対策を三位一体で推進する方針を示した。その上で、同WGが前回(3月20日)に暫定的にまとめた「具体的な対応方針の検証に向けた議論の整理」にそれらの内容を加筆したものを提示した。
 具体的には、「今後は、地域医療構想に関する議論については、医師偏在対策及び医師の働き方改革の動向を踏まえて、統合的に進めていくことが必要である」と加筆された。また、「(偏在対策のための医師確保計画の策定状況や医師の時間外労働規制など)医療機関を取り巻く環境の変化に応じて、公立・公的医療機関等の担うべき役割は今後も変化していくと考えられる。そのため、厚労省及び都道府県はその変化に応じて、地域医療構想の実現のために柔軟な対応を行っていくべき」との文言の追加があった。
 しかし、これらの修正に対しては、異論が相次いだ。まず、今回の具体的対応方針が、公立・公的医療機関の機能の重点化のために、早期に具体的な取組みを促すものであるのに、それを遅らせてでも、他の改革と歩調をあわせなければならないと受け止められた。さらに、公立・公的医療機関の重点化の議論も他の要素が加わることで、複雑になり、それにより、現場で収束しつつある議論も振り出しに戻りかねない懸念も生じた。
 全日病副会長の織田正道委員は、「前回の具体的対応方針でよいものができたと思ったのに、焦点がぼやけて、複雑になった。現場での説明が難しくなる」と指摘。他の委員からも同様の意見が相次ぎ、三位一体で推進する必要性は認めつつ、具体的対応方針の文言としては、改めて整理を行うことになった。織田委員は、「偏在対策や働き方改革を議論するとなると、二次医療圏の調整会議だけでは難しいので、都道府県単位の調整会議がより重要になる」と述べるとともに、地域医療対策協議会など都道府県の他の会議体との整合性を求めた。
 続いて、厚労省から2019年3月末時点の地域医療構想調整会議の開催状況が報告された。それによると、新公立病院改革プラン対象病院の95%、公的医療機関等2025プラン対象病院の98%が、総病床数換算で「合意済み」と回答している。「合意済み」の結果を集計すると、2025年度見込みで、公立病院は全体の病床数が17万4,423床から17万3,620床で、803床の減少に過ぎなかった。また、公的医療機関等は30万2,293床から30万3,295床で、逆に1,002床の増加となった。
 この結果に対し、委員からは「結果にがっかりする。ほとんど現状追認ではないか」との意見が出た。織田委員も「公立・公的で急性期から民間が担うべき回復期に転換している例が多い。また、非稼動病床については、削減という選択肢があり得る」と問題提起した。機能別では、公立病院では、急性期が5.4%減少し、回復期が40.9%増加、公的医療機関等では急性期が0.6%減少し、回復期が31.2%増加となっている。
 2018年度病床機能報告制度の速報値も公表された。前回の見直しでは、高度急性期・急性期に関連する項目の診療実績が全くない病棟は、両者を選択できないことにした。実態と極端に診療実績が異なっている病院の報告を見直してもらうとの趣旨だが、厚労省の一定の効果が出ていると説明した。
 全体の集計で2017年からの変化をみると、高度急性期は2017年確定値が13.1%、2018年速報値が12.8%、2025年見込みが13.5%、急性期は同46.7%、同45.7%、同45.6%と、急性期で若干の割合の低下があった。回復期は同12.2%、同13.7%、同15.1%と若干の増加となっている。
 開設主体別の病床機能については、特に、特定機能病院の多くがすべての病床を高度急性期と報告していることなどが問題視された。特定病院の2018年度速報値は、6万8,035床のうち、80%(5万4,397床)が高度急性期と報告されている。残りはほぼ急性期(18%、1万2,376床)である。

 

全日病ニュース2019年6月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 安藤副会長が衆院・予算委員会分科会で質問|第936回/2019年3月 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190315/news03.html

    2019年3月15日 ... 医師の働き方改革で財政支援を要請、消費税課税化の議論を提起 ... 月27日、衆院
    予算委員会第五分科会で、医師の働き方改革地域医療構想、控除対象外 ... 公立
    病院には相当額の繰入金が入っていることから、民間病院では担うことの ...

  • [2] 地域医療構想、働き方改革、偏在対策の三位一体|第940回/2019年5 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190515/news01.html

    2019年5月15日 ... 委員からは、「地域医療構想働き方改革と医師偏在対策が相互に関連し、 ... 期を担う
    病院が多い公立・公的病院の再編・統合を先行して進める方針に ...

  • [3] 2018年度診療報酬改定が意味するもの、今後の方向性について|第 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180601/news05.html

    2018年6月1日 ... 【診療報酬改定シリーズ 2018年度改定への対応①】医療保険・診療報酬委員会 ...
    制度の開始、医師の働き方改革地域医療構想の推進など、様々な医療制度 ... 実現・
    充実、Ⅲ医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、Ⅳ効率化・適正化 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。