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妊産婦が負担に見合うと満足できるサービスを

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【厚労省・妊産婦の保健医療体制検討】「乳幼児医療費助成制度を妊産婦にも」

 厚生労働省の妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会は5月16日、これまでの議論を整理し、とりまとめに向けた議論を行った。妊産婦の診療の評価については、患者本人が自己負担に見合う医療が受けられたと満足できるようにすべきとの意見が複数あった。検討会は次回、とりまとめを行う見通し。
 厚労省はこれまでの議論を「妊産婦に対する相談・支援」「妊産婦に対する医療提供」「妊産婦を支える体制等」の3つに分けて、課題やこれまでの議論で出された主な意見を整理した。
 妊産婦への医療提供においては、妊娠中に特に重症化しやすい疾患があったり、薬剤や放射線検査の胎児への影響を妊娠週数に応じて考慮する必要があったりするために、特別な配慮が必要であるとした。
 妊産婦の治療方法を決定する際は、胎児への影響に配慮して、妊産婦本人だけでなく、家族も含めて時間をかけて説明し、意思決定を支援すべき面もあるとした。
 近年、出産年齢が上昇傾向にあり、糖尿病や甲状腺疾患など、妊娠とは直接関係しない偶発合併症が増加傾向にある。そのため、産婦人科と他の診療科の連携の拡充が求められている。
 産婦人科の分娩取扱施設は年々、減少し、地域によっては産婦人科の医療機関までのアクセスが不便な事例もあるため、産婦人科以外の診療科も、風邪などのコモンディジーズに対応できるようにすることが求められている。しかし、「妊産婦の診療に自信をもてない」、「薬について正確な情報を伝える自信がない」などの理由で、妊産婦の診療に消極的な医師がいることが課題であると指摘した。
 前回の検討会に厚労省が報告した「妊産婦の医療や健康管理等に関する調査」では、産婦人科以外の診療科を受診しようとしたのに、他の医療機関を受診するように勧められた妊産婦が約15%いることが明らかになった。
 妊産婦の診療について医師が研修を受ける機会が少ないことも指摘されてきた。同日の検討会では、日本医師会が、今後、妊産婦の診療での留意点などの情報をかかりつけ医研修に追加することを検討していると報告した。
 厚労省は議論の整理のなかで、薬剤についてもまとめた。妊産婦はリスクに対して慎重であるため、処方された薬の内服を自己判断で止めてしまうことがある。そこで、薬剤師など医療者側が、妊産婦に配慮した説明をできるように、コミュニケーションに関するトレーニングをすることが重要とした。
 同日の意見交換では、妊産婦が産婦人科以外の診療科を受診する場合について、「妊産婦の診療は、かかりつけ医が広く対応できる体制が望ましい」、「妊産婦が自己負担に見合う満足を得られるようにすべき。そのためには、妊産婦に渡す説明文書を用意すべき」、「妊産婦が、サービスの質が高いからお金を払ってもかまわないと実感できる取組みを評価することが重要」、「研修の受講証を掲げるだけでも(妊産婦が受ける印象が)違う。妊産婦自身がSNSで発信して、情報を広めることもあるだろう」、「産婦人科と他科の診療情報の共有がとても大切だ。共有方法を明確に示してほしい。母子手帳の予備欄でもいい」などの意見が出た。

「妊産婦医療費助成制度」創設を

 妊産婦を支える体制をどう考えるかという視点での議論で、妊産婦の診療の費用負担の援助が論点になった。
 妊婦健診の費用について、すべての市区町村で公費負担制度を実施しているが、健診の内容によっては公費助成を超えてしまうこともあり、妊婦に自己負担が生じている。妊娠中に生じる偶発合併症等の診療については、通常の診療と同様に自己負担がある。
 同日の意見交換では、「すでに少子化対策として全自治体で行われている乳幼児・子ども医療費の助成制度を妊産婦にも広げて、妊産婦医療費助成制度というかたちにすることを検討する必要があるのではないか」との意見があがった。すでに茨城など4県では、診療の費用の一部を助成する妊産婦への医療費助成制度を実施している。
 同検討会は次回、とりまとめを行う見通しだ。妊産婦に対する診療報酬上の評価については、検討会のまとめの報告を受けて、中医協が検討する。

 

全日病ニュース2019年6月1日号 HTML版

 

 

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