全日病ニュース

ＩＣＴの利活用を妨げない診療報酬が課題

【中医協総会】オンライン診療の要件見直しも検討

　中医協総会は６月12日、次期診療報酬改定に向けて「医療におけるICTの利活用」をテーマに議論を行った。厚生労働省は医療機関などの「情報共有・連携」で、柔軟な働き方や業務の効率化に資するために、ICTの利活用を妨げない対応が必要との論点を提示した。カンファレンスを行うことを要件としている診療報酬項目について、ICTを用いた場合の要件緩和の拡大などを課題とした。
　現行の診療報酬項目でも、「ハイリスク妊産婦連携指導料」や「在宅患者緊急時等カンファレンス料」などで、関係者が直接対面ではなく、ICTを用いて遠隔から参加した場合を認めている。ICTの発展・普及が目覚しい中で、診療報酬が効率的な医療の提供を妨げないことが必要となる。
　同日、例示されたのは訪問看護ステーションによる退院時共同指導。現行でも医療資源が少ない地域に属する場合は、訪問看護ステーションの担当者が、患者が入院している医療機関に赴いて共同して指導する場合に、ICTを用いて遠隔から指導しても、報酬を算定できる。しかし、通常は認められず、訪看ステーションの退院時共同指導加算を算定しない理由として、「医療機関が遠い」、「スケジュール調整できない」、「手間と報酬が見合わない」などがあり、ICTの利活用により解決が見込まれることを示唆した。
　また、厚労省は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」が近く改訂されることを踏まえ、普及状況の検証を行いつつ、診療報酬上の対応を検討する方針を示した。議論では診療側と支払側が、オンライン診療は対面診療の補完であるとの原則で一致。その上で、今後の要件見直しに向けた前哨戦の議論を行った。
　支払側からは現行の要件が厳しすぎるとして、緩和を求める意見が相次ぎ、「在宅時医学総合管理料など特定の診療報酬の算定が必要との要件は外すべき」との主張を行った。診療側の委員は、「利便性を強調して要件緩和するのは問題」と指摘したが、支払側は「利便性ではなく、（禁煙外来や慢性疾患の）脱落者を減らすことや、治療と就労の両立のために緩和が必要」と述べた。
　その他の論点では、◇遠隔医療の個別領域の利活用を学会からの提案などを踏まえ検討◇離島・へき地など医療資源の少ない地域での利活用とそれ以外の利活用を分けて整理─が示されて、その方向で議論することを了承した。

医療技術評価は基本的に現行を踏襲
　新たな医療技術の評価では、安全性・有効性が同等の既存技術の評価を準用するこれまでの評価方法を踏襲する。ただし、保険収載後に、新たな有効性・安全性が見つかれば、再評価が必要になる。新たな有効性・安全性を医療技術評価分科会で議論する際に、学会など中立的な立場の専門的な評価を活用することを了承した。逆に、使われなくなった医療技術は簡素化の観点からも削除を検討する。臨床的有用性が低下した医療技術も再評価を検討する。
　全日病会長の猪口雄二委員は、医療技術の評価について、「ロボット手術や粒子線治療など設備が非常に高額である場合の費用をどう考えるか。病院として導入する際に、設備投資をどう回収するかが問題になる」と述べた。厚労省は、「現行制度では、基本的な（運用の）コストはみるものの、同じ有効性・安全性であれば、既存技術に準じる点数を設定している。新たな有効性・安全性が示されれば、評価の見直しが検討課題となる」と回答した。