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旧7対1の96.5%が改定後も同水準の急性期一般入院料1を維持

旧7対1の96.5%が改定後も同水準の急性期一般入院料1を維持

【中医協・入院医療等の調査・評価分科会】2018年度診療報酬改定の調査結果

 厚生労働省は6月7日の第2回中医協・入院医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)に、2018年度診療報酬改定の入院医療に関する調査結果(速報値)を報告した。旧7対1入院基本料を届け出ていた病棟の96.5%が、旧7対1に相当する急性期一般入院料1を維持しており、2018年度改定で実施した評価体系見直しによる変化は、2018年11月時点では、ほとんど生じていないことがわかった。
 今回の速報値では、①急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料等の評価体系の見直しの影響(その1)②地域包括ケア病棟入院料及び回復期リハビリテーション病棟入院料の評価体系の見直しの影響③療養病棟入院基本料等の慢性期入院医療における評価の見直しの影響(その1)④医療資源の少ない地域における保険医療機関の実態─の調査結果が示された。
 2018年度改定で入院医療の評価体系が大きく変わり、旧7対1、旧10対1入院基本料を急性期一般入院料1~7に再編した。医療資源投入量と医療ニーズが見合う入院料が選択できるよう、入院料1は7対1だが10対1の看護配置を基本に、柔軟な点数設定を行った。点数設定の最も高い旧7対1(1,591点)への届出が集中する状況に対しては、必ずしも医療ニーズに見合った診療報酬が算定されていないとの指摘があり、患者の状態像に応じた入院料の設定が求められていた。
 調査結果をみると、2018年11月時点で、旧7対1を届け出ていた病棟の96.5%が急性期一般入院料1を届け出ていた。理由をきくと、「7対1相当の看護職員配置が必要な入院患者が多い(医療需要がある)」が43.0%で最も多く、次いで、「施設基準を満たしており、特に転換する必要性を認めない」が40.8%だった。改定前に旧7対1を届け出ていた329施設、1,801病棟の調査結果で、そのうち民間病院は5割強となっており、許可病床数では100 ~199床が最も多い。
 一方、転換した病棟で最も多かったのは、急性期一般入院料2(2.6%)となっている。理由では、「『重症度、医療・看護必要度』の基準を満たすことが困難」が5割で最も高い。
 急性期一般入院料などの要件である「重症度、医療・看護必要度」については、2018年度改定で項目を見直すとともに、新たに「Ⅱ」を設けた。「Ⅱ」はEFファイルからレセプト電算コードを自動的に抽出するため、看護職員の負担が減る。ただ、患者の状況等を把握するHファイルなど一部看護職員の手作業に頼る項目が残っている。
 「Ⅱ」を用いている施設は、急性期一般入院料1では約2割、急性期一般入院料4~6では1割前後だった。
 「重症度、医療・看護必要度」の該当患者割合の平均をみると、2017年8~ 10月の旧7 対1 の29.8% と比べ、2018年8~ 10月の「Ⅰ」は35.2%、「Ⅱ」は26.7%。「重症度、医療・看護必要度」の基準は2018年度改定前で25%だったが、改定後は「Ⅰ」が30%、「Ⅱ」が25%となった。
 全日病副会長の神野正博委員は、多くの病棟が急性期一般入院料1にとどまったことについて、「急性期入院医療全体として、患者の受療率が下がっている。ベッドの稼働率を下げて、旧7対1を維持しているのではないか」と厚労省に実態把握を求めた。一方、保険者側の委員は、「入院基本料の段差をなだらかにして、動きやすくした改定だったはずなのに、期待が裏切られたと感じる」と述べた。
 「重症度、医療・看護必要度」の「Ⅰ」を用いる理由では、「診療実績情報データによる評価より、評価票の記入のほうが容易であり、Ⅱに変更する必要性を感じない」が41.4%で最も多い(複数回答)との結果だった。神野委員は、「『Ⅱ』の記入のほうが容易というのは、考えにくいが、食わず嫌いな面があるのかもしれない。ただ、手書きの部分が残っており、システムの不具合もある。改善すれば状況は変わる」と指摘した。

地ケアの旧7対1からの移行4.8%
 2018年度改定では、地域包括ケア病棟入院料でも地域包括ケアを支える病院としての実績部分の機能を評価するなど、大きな見直しを行っている。
 調査結果では改定前後で旧7対1から転換した病棟が4.8%で最も多い。改定前も地域包括ケア病棟であった病棟は68.3%である。地ケア病棟の利用の趣旨をきくと、「自院の急性期病棟からの転棟先」との回答が63.8%で最も多く、「在宅医療の後方支援で看取りが中心」が12.5%、「他院の急性期病棟からの転院先」が10.6%であった。
 回復期リハビリテーション病棟入院料は2018年度改定で、アウトカム評価を推進する観点から、リハビリテーションの実績指数を組み込むなどの見直しを行った。FIMによるADL評価を用いた入院料1の実績指数は「37以上」、入院料3、5の実績は「30以上」となった。2017年10月と2018年10月で実績指数の平均を比べると、入院1で41.0から48.2、入院料3で37.0から43.0、入院料5で31.2から39.8に上がった。
 療養病棟入院基本料については、「2」の看護配置を「1」と同じく、20対1に統一し、医療区分2・3の患者割合を厳格化して5割とするなどの見直しが、2018年度改定で行われた。改定後の病棟の変化をみると、「2」の継続が57.0%、「1」への転換が21.0%、「経過措置1」への転換が18.0%、「一部を地域包括ケア入院医療管理料の病室へ転換」が15.0%、介護医療院を含む他への転換はゼロ%となっている。
 医療資源の少ない地域の医療機関の実態調査では、電子カルテの導入状況などをみた。病院の場合、電子カルテの導入率は65.9%、オーダリングシステムの導入率は75.6%、医療情報ネットワークへの参加率は62.2%で、比較的高い傾向がみられた。一方、有床診療所の電子カルテの導入率は34.2%、オーダリングシステムの導入率は27.4%、医療情報ネットワークへの参加率は19.2%で、病院と比べると低い。

 

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