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ホーム全日病ニュース(2019年)第943回/2019年7月1日号「医師の働き方改革」と「地域医療構想」をテーマに講演...

「医師の働き方改革」と「地域医療構想」をテーマに講演

「医師の働き方改革」と「地域医療構想」をテーマに講演

【支部長・副支部長会】公立・公的病院の医療機能の重点化を検証

 全日病の6月15日の第7回定時総会・第8回臨時総会後の第1回支部長・副支部長会では、役員による特別講演が行われた。猪口雄二会長が「医師の働き方改革」、織田正道副会長が「地域医療構想」をテーマに講演した。
 猪口会長は、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」がまとめた報告書を中心に、働き方改革の概要を説明。近く通知される予定の「宿日直」や「研鑽」の考え方なども示した。織田副会長は、厚労省の「地域医療構想に関するワーキンググループ(WG)」の「具体的対応方針の検証に向けた議論の整理」に沿って、公立・公的病院の医療機能の重点化を図る地域医療構想の進捗状況などを報告した。

宿日直と研鑽の取扱い近く明確に
 猪口会長は、人口減少社会で働き手が不足する社会の中で、医師偏在対策とともに、医師の働き方改革が病院に対して大きな影響を与えるとの観点で、概要を説明した。
 医師など特定の業種以外の働き方改革は4月から実施済み。医師は「応召義務等の特殊性」があり、別の対応が必要とされた。ただ、医師は医療機関との労働契約の範囲で診療を行い、その範囲を超えた診療指示の求めに応じられない場合でも、必ずしも医師法上の応召義務違反になるものではないと判断された。このため、応召義務ではなく、医療の性質と不可分の医師の特殊性が、別の取扱いを定める理由として、検討会で整理された。
 その結果、医師の働き方改革では、2024年度から新たな時間外労働規制が施行される。基本は年間960時間。救急医療の提供など一定の要件を満たす病院は年間1,860時間の特例がある。ただし、この特例は2036年をめどに解消する経過措置としての位置づけ。さらに、連続勤務時間制限28時間とインターバル9時間の確保が求められ、実施できない場合の代償休暇が課される追加的健康確保措置が義務となる。
 猪口会長は、特例の時間外労働時間が認められたとしても、追加的健康確保措置を履行するには、人員体制の総合的な見直しが必要になるとした。
 また、医師の働き方改革の病院への影響を左右する問題として、「宿日直」と「研鑽」を取り上げた。宿日直は現行の通知が古いので、医療現場の実態にあわせ、「現代化」する。特殊の措置を必要としない軽度・短時間の業務は、時間外労働ではなく、宿日直扱いとなる。その趣旨で近く通知が発出される。

公立・公的病院の医療機能を重点化
 織田副会長は、地域医療構想WGの「議論の整理」に沿って説明。「議論の整理」で、各公立・公的病院が公立・公的病院でなければ担えない分野に医療機能を重点化しているかを確認し、そうでなければ、再編や統合、ダウンサイジングを検討する方針が明確化されていることを強調した。厚労省は、主要な手術や救急などの診療実績データを夏までに集めて分析し、調整会議で活用してもらう方針を示している。
 政府の骨太方針2017に、2018年度までの2年間で各地域医療構想調整会議の集中的な議論を行うことが明記されていた。政府の後押しもあり、2019年3月末時点で、新公立病院改革プラン対象病院の95%、公的医療機関等2025プラン対象病院の98%が、2025年に向けた地域医療構想の議論で合意を得たと報告した(病床数換算)。
 しかし、内容をみると、公立病院では2018年度の17万4,423床が2025年度に17万3,620床で、わずか802床の減少、公的病院は30万2,293床が30万3,295床で、逆に1,002床の増加。織田副会長は結果に対し、地域医療構想WGで厳しい声があがったと報告するとともに、急性期から回復期への転換が、合計で1万2千床程度あることを問題視した。
 織田副会長は、「合意されたとの報告の実際は、各公立・公的病院の改革プランを追認しているだけ」と指摘。これに対し、今回は診療実績データを分析し、関係者に広く提供して議論されるため、地域医療調整会議で実効性のある議論が行われるための重要な資料になるとした。その際に、公立・公的病院にどの程度の補助金や税制優遇があり、借入金を抱えているかも、民間病院との役割分担を考える上で、正確に把握すべき問題であると指摘した。

 

全日病ニュース2019年7月1日号 HTML版

 

 

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