全日病ニュース

代替可能性のある公立・公的病院の整理を進める協議で工夫

【厚労省・地域医療構想WG】重点的に支援する地域を指定

　厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」（尾形裕也座長）は６月21日、「具体的対応方針の検証に向けた議論の整理」の追加事項として、他の医療機関との代替可能性のある公立・公的病院の整理で合意を得るための協議の進め方の工夫で、一定の事項を了解した。再編統合の対象になった公立・公的病院だけで協議を進めるのではなく、地域全体の将来像の方向性で合意を得た上で、各構想区域で地域医療構想の実現に向けた合意につなげる。
　今回示された事例では、例えば、Ａ病院、Ｂ病院、Ｃ病院が同じ地域にあり、競合している。いずれの病院も「経皮的冠動脈形成術」を実施しているが、Ｂ病院の実績は少なく、「代替可能性」がある。その場合に、Ａ病院とＢ病院、またはＣ病院とＢ病院の「経皮的冠動脈形成術」の機能の統合が検討課題となる。しかし、Ａ病院が民間で、Ｂ病院とＣ病院が公立・公的病院の場合、Ｂ病院とＣ病院が統合の協議を関係者だけで行い、その結果、Ａ病院の実績を大きく上回るようになれば、民間のＡ病院は圧迫を受ける。
　全日病副会長の織田正道委員は、「地域で競合する病院が複数ある場合、公立・公的病院だけの議論が進み、再編統合が行われれば、寡占化が進み、民間が太刀打ちできなくなる可能性がある。調整会議で地域全体の医療提供体制を見据えた上で、民間を巻き込んだ議論を行うことが重要だ」と述べた。
　2017 ～ 2018年度は、地域医療構想調整会議が集中的な議論をする期間だったが、実際の再編統合や医療機能の転換、病床削減の議論はあまり進展していないことが、その後の実態把握でわかった。厚労省は、夏以降に各病院の診療実績データを集計し、公表。そのデータに基づき、都道府県に対して公立・公的医療機関の具体的対応方針の検証を要請し、要請対象の医療機関を公表するとしている。
　要請対象の医療機関がある地域の一部については、重点的に支援する区域として設定。その地域に対して、厚労省がデータ分析や再編統合の方向性を直接助言する方針も示された。地域医療介護総合確保基金の活用とあわせ、骨太方針2019に盛り込む。ただ、委員からは、国が強権的に調整会議に地域に介入することを懸念する意見が出た。
　また、同日、日本医師会の中川俊男副会長が、公立・公的医療機関への公的資金の投入や税金の状況を報告した。それによると、◇公立病院（都道府県・市町村）への繰入金は合計年８千億程度◇公立病院は給与費率が高い傾向にあり、給与費率60％超では繰入金を含めてもほとんど赤字◇一般病床のある公立病院の約３分の１は赤字で、病床利用率70％未満ではほとんど赤字◇病床利用率が高くても赤字の病院が多い─ことなどを示した。