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ホーム全日病ニュース(2019年)第948回/2019年9月15日号「急性期、医療・看護必要度」の妥当性が論点に...

「急性期、医療・看護必要度」の妥当性が論点に

「急性期、医療・看護必要度」の妥当性が論点に

【中医協・入院医療分科会】回復期リハ病棟はFIMの適切性を確認

厚生労働省の「入院医療等の調査・評価分科会」(尾形裕也分科会長)は9月5日、次期診療報酬改定に向け、同分科会の診療情報・指標等作業グループの分析結果の報告を受けた。一般病棟の「急性期、医療・看護必要度」、療養病棟の「医療区分・ADL区分」、回復期リハビリテーション病棟のFIM(実績指数)について、次期改定の焦点となりそうな論点が示された。
 2018年度改定では、「急性期、医療・看護必要度」で、B項目(患者の状況等)における「診療・療養上の指示が通じる」または「危険行動」に該当すれば、患者が基準を満たしやすくなった。認知症やせん妄の患者は一般の患者より「手がかかる」ことを評価したためだ。ただ、急性期の中小病院に有利な見直しであったとの指摘がある。
 改定結果の調査では、この新たな基準(基準②)のみに該当する患者が、「病床規模が小さい病院」、「高齢者が多い病院」、「要介護が高い患者が多い病院」で多い傾向がみられた。保険者側の委員は、このような特徴を捉え、「高度な医療を提供する病棟であることを評価する指標として、違和感がある」と述べた。
 これに対し、全日病副会長の神野正博委員は、「高度な医療を提供するというのであればその通りだが、基準②は看護の必要度という意味では適切な評価だ。手術後にせん妄状態になった患者を管理する体制は急性期病院にとって重要な機能。そもそも、急性期医療の必要度と看護必要度を合わせたものが、『急性期、医療・看護必要度』であり、両者は分けて考えなければならない」と述べた。
 また、「高度急性期と急性期の病院があり、看護の必要度は、地域密着の急性期病院でより重要になる。それが否定されれば、地域の医療はなくなってしまう」と、高度急性期に偏りすぎない「重症度、医療・看護必要度」が必要であると主張した。
 一方、急性期の医療面を評価しているA項目の「専門的な治療・処置」やC項目(手術等の医学的状況)に対しては、外来でも多く実施されている治療・処置、手術があるため、入院で行われているものに重点化すべきとの意見が複数の委員から出た。

長期の中心静脈栄養の妥当性を議論
 「医療区分・ADL 区分」については、前回の分科会と同じく、医療区分3に区分される「中心静脈栄養」の妥当性が議論になった。厚労省は中心静脈栄養について、「医療区分3の該当項目の中で48.3%と最も多い」、「患者の主傷病は脳梗塞が27%で最も多い」、「入棟元は他院の一般病棟が44.6%で最も多い」などのデータを示した。
 また、入棟日または調査基準日に中心静脈栄養に該当していた患者の在院期間は、710日以上が13.2%、366 ~700日が13.5%、181 ~ 365日が25.7%と、180日以上で半分を超えた。この結果に対し、委員からは「医学的見地から問題がある」との指摘が出た。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員は、「急性期病院からの持ち込みが多い」と強調した上で、「医療区分3を維持する必要があるという面はある」とも述べた。また次回、協会アンケート調査の結果を示すとした。神野委員は、「長期間の中心静脈栄養は感染症リスクが高い。漫然と行われているのではなく、外す努力をしていることを示すことが大事」と指摘した。
 FIMについては、2018年度改定でFIMによるリハビリテーションのFIM得点が一定以上であることを要件とするアウトカム評価が導入された。改定後の状況をみると、FIM得点は改定後に全体的に大きく上昇しており、入院料1では7.2ポイント上昇している。特に、退棟時のFIM得点は緩やかな上昇傾向にあるのに対して、入棟時のFIM得点が下がっていることが問題視された。FIM得点の平均値は実績指数導入時に3.1ポイント、2018年度改定後に1.5ポイント下がっている。神野委員は、「急性期病院が、患者の状態が悪いうちに、より早く回復期リハ病棟に送り、そこで集中的なリハビリを行っているので、全体の日数も短縮している」と指摘した。
 ただ、急性期病院が早く送るという影響を除いても、入棟時のFIM得点が下がっているとのデータもあり、実績指数の適切性を確認する必要があるとの意見も出た。千葉大学附属病院長の山本修一委員は「人が人を判断するので、経営への影響を考慮して、仕方がない面もある」と指摘すると、森光敬子医療課長は、「関係者がみて、これは駄目だという判断はあり、第三者の評価を含めて、適切な評価が行われる必要がある」との姿勢を示した。

 

全日病ニュース2019年9月15日号 HTML版

 

 

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