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厚労省の2020年度概算要求は過去最大の32兆6,234億円

厚労省の2020年度概算要求は過去最大の32兆6,234億円

【来年度予算】医療の要求額は11.9兆円

厚生労働省は8月27日、2020年度予算の概算要求を公表した。一般会計は過去最大の32兆6,234億円となった。対前年度比は2.1%増。大部分を占める社会保障関係費は30兆5,269億円で1.8%増となっている。医療は11.9兆円で年金に次いで多い。財務省は各省の概算要求を精査し、12月下旬に政府として2020年度予算案を決定する。診療報酬改定の改定率は例年通り、12月中旬頃に厚生労働大臣と財務大臣の折衝で固まる見通しだ。
 一般会計の要求額は2019年度予算額より6,593億円多い32兆6,234億円となった。伸び率は2.1%。大部分を占める社会保障関係費は同5,353億円多い30兆5,269億円で、初めて30兆円を超えた。伸び率は1.8%。そのうち、年金が12.1兆円、医療が11.9兆円、介護が3.1兆円、障害が1.8兆円、福祉その他が1.7兆円となっている。
 医療の11兆8,599億円の内訳をみると、全国健康保険協会(協会けんぽ)が1兆2,912億円、国民健康保険(国保)が3兆3,282億円、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度が5兆3,274億円、生活保護の医療扶助が多くを占める公費負担医療が1 兆9,130億円となっている。
 社会保障関係費の増加額は5,353億円となっているが、予算編成の基本方針ではこれまでの歳出抑制を継続し、高齢化による伸びに相当する伸びに抑えることが求められている。抑制額は明示されていないものの、最近の予算編成では5千億円を下回る伸びに抑えてきた。このため、2020年度予算案においても、同程度の抑制が達成されるよう政府内で調整が図られる模様だ。
 75歳を超えると、一人当たり医療費が急激に増えていく。ただ、2020年度は75歳に達する高齢者がちょうど戦中期にあたり、極端に出生数が少ない。このため、医療費の伸びも緩やかになっている。しかし、2022年から2025年度にかけては、団塊の世代が75歳に達する期間にあたる。
 政府は2022年度以降に急増する社会保障関係費を圧縮するため、秋以降、「負担と給付のあり方」の議論に着手する方針だ。当面の予算編成で社会保障に対する厳しい抑制はないものの、負担の引上げと給付の抑制に向けた議論が今後本格化していくのは必至だ。
 2020年度診療報酬改定については、薬価改定による財源が例年ほどには期待できない中で、他の財源ねん出策とあわせ、その水準が決まっていくと考えられる。また、消費税率引上げの財源で実施する教育負担の軽減・子育て支援・介護人材の確保についても、予算編成過程で検討される。

優先課題推進枠には2,239億円要望
 予算のメリハリをつけるために設けている優先課題推進枠には、2,239億円を要望した。最近の概算要求では、裁量的経費について、全体を1割削減した上で、重点項目に対しては削減額の3倍の予算を要望できる優先課題推進枠を設けている。
 優先課題推進枠を含めた重点項目では、「多様な就労・社会参加の促進」、「健康寿命延伸等に向けた保健・医療・介護の充実」、「安全・安心な暮らしの確保等」のテーマで要望を行った。その中で、「健康寿命延伸等に向けた保健・医療・介護の充実」の内容をみていく。
 地域医療構想の推進に向けては、地域医療介護総合確保基金について、2019年度(国622億円)を超える水準の確保を目指す。新たに創設される医療情報化支援基金の財源確保(300億円)も見込む。医師偏在対策や医療従事者働き方改革の推進とあわせ、前年度比135億円増の979億円を要求した。
 医師偏在対策では、「医師少数区域等の医師の勤務環境改善等の支援」、「総合診療医の養成支援」、医療従事者の働き方改革の推進では、「ICT活用やタスク・シフティング等の勤務環境改善・労働時間短縮に取り組む医療機関の支援・医療勤務環境改善支援センターによる医療機関の訪問支援」、「女性医療職等のキャリア支援、病院内保育所への支援」などがある。
 災害医療対策では98億円を要求した。病院の給水設備・非常用自家発電装置の整備などにより、相次ぐ災害に備える。
 介護の受け皿整備や介護人材の確保では、医療と同様に、地域医療介護総合確保基金について、2019年度(国483億円)を超える水準の確保を目指す。そのほか、「介護事業所における業務改善の成果の全国展開、介護ロボット・ICT等の介護事業所への導入支援」、などで、前年度比19億円増の811億円を要求している。
 また、自立支援・重度化防止に向けた取組みの強化では218億円、認知症施策推進大綱に基づく施策の推進では135億円を求めた。
 健康寿命延伸に向けた予防・健康づくりは全体で1,025億円。「保険者のインセンティブ強化」、「生活習慣病の疾病予防・重症化予防等の先進的なデータヘルス事例の全国展開」などがある。
 そのほか、◇感染症対策(155億円)◇がん対策(80億円)◇難病・小児慢性特定疾病対策(20億円)◇肝炎対策(35億円)◇ハンセン病対策(10億円)がある。
 データヘルス改革、ロボット・AI・ICT等の実用化の予算要求は607億円で、前年度より116億円少ないが、これは医療保険オンライン資格確認に伴う中間サーバの改修が2019年度に終了するためである。保健医療分野等の研究開発は、前年度より116億円多い688億円。日本医療研究開発機構(AMED)における医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤、研究開発基礎基盤などの研究開発支援を行う。
 外国人患者の受入れ環境の整備では、「医療機関における多言語コミュニケーション対応の支援、医療機関等からの相談にワンストップで対応するための地方自治体の体制整備への支援」、「過去に医療費の不払等の経歴がある外国人に対して厳格な入国審査を実施するための仕組みの構築」をあげており、18億円を要求した。

 

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