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ホーム全日病ニュース(2020年)第974回/2020年11月1日号医師の人材紹介平均手数料は352万円、看護師は76万円

医師の人材紹介平均手数料は352万円、看護師は76万円

医師の人材紹介平均手数料は352万円、看護師は76万円

【福祉医療機構】「病院の人材紹介手数料」に関するアンケート結果公表

 福祉医療機構は10月5日、「病院の人材紹介手数料」に関するアンケート調査の結果を公表した。人材紹介会社が病院に医師を紹介する場合の平均手数料は352万円、看護師は76万円だった。年収の2割を目安に設定されていることが多い。病院全体の医業利益率が1.8%程度である中で、手数料は平均で0.38%。病院経営を圧迫している。離職率の高さや保証期間など人材紹介会社のサービスの改善も課題だ。
 同調査は、全日病と日本医療法人協会の協力で実施された。全日病独自の調査結果は前号(10月15日号)既報のとおりである。全日病の調査では、医師の平均人材紹介手数料は333万円であり、福祉医療機構の集計の方が若干、高い結果となっている。
 2020年5月にWEBアンケートを行い、328病院から回答を得た結果をまとめた。うち241病院が人材紹介会社を利用し、87病院は未利用だった。病院の開設主体は医療法人が227病院、社会医療法人が44病院、その他が57病院となっている。その他には、社会福祉法人や公立病院が含まれる。
 回答病院のうち、医療機能別では、急性期が最も多く、全体の43%を占める。ただ、人材派遣会社を利用している病院の中では、回復期(34病院)の利用割合が最も高く、85%であった。
 職種別の平均手数料をみると、医師が最も高く352万円、次いで、助産師の116万円、薬剤師の115万円、作業療法士の90万円の順である。看護師は76万円。一方、どの職種を紹介してもらっているかでは、看護師が78%で最も高い。次いで、医師の38%、看護補助者の30%となっている(表1参照)。
 手数料は、医師で100 ~ 600万円、看護師で30 ~ 124万円、看護補助者で1万円から92万円まで幅があった。
 離職率は准看護師が最も高く、採用後1年以内で42%が辞める。次いで、離職率が高いのは、看護補助者の34%、助産師の27%、事務職員の24%である。医師は16%、看護師は20%。福祉医療機構は、「病院のニーズに合った即戦力を期待して、人材紹介会社を利用していると考えられるが、定着率は芳しくない」と解説している(表2参照)。

手数料が病院経営を圧迫
 医業収益に占める支払手数料総額の比率は、徐々に上がっている。3年度とも有効回答になっている153病院でみると、直近年度が0.38%、前年度が0.36%、前々年度が034%だった。直近年度で、高度急性期は0.5%、急性期は0.34%、回復期は0.35%、慢性期は0.59%、精神科は0.41%であり、慢性期が最も高くなっている。
 一般病院の医業利益率は平均1.8%(2018年度決算)にとどまる。四病院団体協議会などは従来から、元々低い利益率である病院経営を手数料が圧迫していると訴えている。わずかな医業利益率を手数料が漸減させる形となっており、状況の改善が求められる。
 また、直近年度の医業収益に対する手数料比率の分布をみると、0.05 ~0.1%未満の割合が最も高いが、2%前後の高水準の病院も一部にある。
 手数料は、採用者の年収の約2割程度を目安に設定されているようだ。全体平均では23.4%。定額制も一部あるが、契約の98%において、年収に対する割合で手数料が設定されていた。
 採用職員が自己都合でやめてしまった場合でも、9割の契約で「手数料の返戻の保証」がある。保証期間は3か月間が39%で最も多く、次いで6か月間の31%、1か月間の22%となっている。
 手数料に対しては、99%の病院が「高い」「やや高い」と回答した。サービス内容については、約3割が「満足」「やや満足」であるのに対し、約7割が「不満」「やや不満」と回答しており、不満が少なくない状況が明らかとなった。
 手数料の会計処理(勘定項目)は以下のとおりで病院により分かれる。「業務委託費・その他の経費」(31%)、「手数料」(28%)、「雑費」(16%)、「給与等の給与費・人件費」(11%)、「求人費等」(3.7%)、「広告宣伝費」(1.2%)。福祉医療機構は、「病院によりまちまちで、決算情報からの分析が困難である一因」と指摘した。
 これらの調査結果に対し、福祉医療機構は、「医療分野では、職員の人員配置基準と公定価格による診療報酬があることが、他業界よりも人材紹介手数料が問題となる背景と考えられる。今後、人口減少により人材確保が困難になることが見込まれ、人材紹介をめぐる状況が悪化する」と予想した。
 その上で、「適切なサービスを提供する人材紹介会社への評価、人材紹介手数料の一定の基準、保証期間の延長などについて、早急な検討が必要」と主張した。また、今回の調査結果を、人材紹介会社との折衝で活用することも提案している。

病院から様々な意見寄せられる
 そのほか、自由記載では病院から以下のような意見があった。
 手数料水準については、「(医師を除き)最近は一人100万円が目安になり割高感がある。月給くらいまで手数料が下がると使いやすくなる」、「看護師の場合、紹介料は想定年収の2割が相場だが、介護福祉士はそれよりも高く、介護職員不足の現状から足元をみられている」など、費用の低下を求める意見が多かった。
 人材紹介会社に対しては、「会社の規模や信用性に関わる情報を得ることが難しい」、「前職の退職事由が十分に把握されていない。数か月から1年足らずの職歴を繰り返す求職者が紹介される。面接当日のキャンセルもある」など不満を書き込む記載が多かった。

 

全日病ニュース2020年11月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病事務局からのお知らせ:お知らせ - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/

    2020.06.17 ○名簿作成についてご協力のお願い(看護師の特定行為に係る指定
    研修機関連絡会事務局、公益社団法人日本 ... 2018.04.17 ○日本准看護師連絡協議
    会 平成30年度会員募集等にかかるご協力のお願い(公益社団法人全日本病院協会
     ...

  • [3] 【資料】「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170501/news08.html

    2017年5月1日 ... 【資料】「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討
    会」報告書から|第893回/2017年5月1日号 HTML版。21世紀の医療を考える「
    全日病ニュース」は、全日本病院協会が毎月1日と15日に発行する機関紙です。
    ... 健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策教室教授)は前号既報の通り
    、4月6日に報告書をまとめた。 ... ⑤看護師のキャリアの複線化・多様化准看護
    が将来展望を持って、スキル向上とキャリア形成を行えることが ...

  • [4] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年5月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170501.pdf

    2017年5月1日 ... 医療の在り方を踏まえた医師・看護師 ... 全日病会長. の西澤寬俊委員は、「
    専門医の研修に. ついては、日本専門医機構が2018年度. の開始に向け新たな
    専門医の ... 既報の通り、4月6日に報告書をまと ... 准看護師が円滑に.

  • [5] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年4月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160401.pdf

    2016年4月1日 ... 全日病が主催する2016年度診療報酬改定説明会が3月14日に東京・新宿のベ.
    ルサール ... 重症度、医療・看護必要度」の見直しや病棟群の導入、救急医療の
    見直しなど、. 今回改定の ... 門員の資格を持つ看護師が地域の連携.

  • [6] Untitled - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/about_us/50years/pdf/50years.pdf

    2011年3月31日 ... 20年後を見据えた提言をしようと議論を重ねる中から、全日本病院協会の活動の
    柱とも. 言うべき ... 第7節 (昭和43年度) 「全日病ニュース」創刊 ………………
    …………33 ... 資料1 病院勤務看護婦および准看護婦不足状況.

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