全日病ニュース

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ICTの活用(オンライン診療等)

ICTの活用(オンライン診療等)

診療報酬改定シリーズ●2020年度改定への対応③医療保険・診療報酬委員会 委員 田蒔正治

 ICT の活用には、PHR(個人健康情報管理)やEHR(地域医療連携ネットワーク)等もあるが、今回はオンライン診療について述べてみたい。新型コロナウイルスの感染拡大により医療現場が危機に直面し、4月16日に緊急事態宣言が全都道府県を対象に発令された。その後、一時は感染者数が減少するかに見えたが、7月から第2波に襲われ、9月中旬の全国感染者数は7.5万人に上り、感染症対策は抜本的見直しを迫られている。
 この中で、オンライン診療は医療従事者や他の患者に感染させるリスクを減らし、医療崩壊を防ぐ一助となる。4月診療報酬改定ではこれまでどおり、初診は対面診療としていたが、感染拡大を受け、収束するまでの時限措置として全面解禁となった。8月5日時点の厚労省HPによると、電話・オンライン診療を実施する施設は全国に約16,000機関に上った。このうち、初診からの実施施設は約6,800機関となっている。課題として、時限的な取り扱いは感染が収束するまでの間とし、原則として3か月毎に感染拡大状況、施策の実用性と実効性の観点、医療安全等の観点から検証を実施することとなった。

2020年度改定における対応
 2020年度診療報酬改定で、情報通信機器を用いた診療に係る要件が下記のように見直された。
①事前の対面診療に係る実施要件の見直し
 オンライン診療料の算定要件は、改定後は「オンライン診療料対象管理料等を初めて算定した月から3月以上経過し、かつオンライン診療を実施しようとする月の直近3月の間、同管理料等の対象となる疾患について、毎月対面診療を受けている患者」となり、事前の対面診療が6月から3月に見直された。
②緊急時の対応に係る見直し
 改定後の算定要件に「日常的に通院又は訪問による対面診療が可能な患者を対象とし、原則として当該医療機関が必要な対応を行うこと。やむを得ず対応できない場合は、患者が速やかに受診可能な医療機関で対面診療を行えるよう、あらかじめ患者に受診可能な医療機関を説明した上で、診療計画に記載しておくこと」となった。ただし、緊急時に30分以内の対面診察が可能等の施設基準は削除された。
③対象疾患の見直し
 これまでのオンライン診療料の対象患者に加えて、在宅自己注射指導管理料を算定している糖尿病、肝疾患(経過が慢性なものに限る)、慢性ウイルス肝炎の患者、さらに事前の対面診療、CT・MRI撮影で一次性頭痛と診断されたが、慢性的な頭痛で定期受診が必要な患者が追加された。

コロナ禍における臨時的対応
 新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関への受診が困難になりつつある状況下において、国民・患者が安心して医療を受けることができるよう、電話やオンライン活用による診療・服薬指導・診療報酬に関する事務連絡が2月28日及び3月19日、4月10日に追記された。特記すべきは、初診から電話やオンラインにより診断や処方をすることが可能となったことである。
 さらに、電話等による診療を行う医師は過去に受診歴のない人、有りでも新たな症状に対して、その判断により診断や処方を実施できる。
 留意点として、初診から電話やオンラインによる診療を行う場合、①濫用や横流しのリスクに対応するため、麻薬及び向精神薬の処方は不可。②診療録や診療情報提供書等により患者の基礎疾患の情報を把握できない場合、医療の安全性等の観点から、処方日数は7日間を上限とし、ハイリスク薬の処方も不可。③地域での実効あるフォローアップを可能とするため、必要に応じて対面診療への移行を促す、または事前に承諾を得た医療機関へ紹介する。
 診療報酬では、表1にあるようにコロナ禍の時限的対応として、事前の診療計画は必要なく、視覚情報のない電話でも実施可能で、調剤薬局から服薬指導や薬の送付も受けられる。具体的には電話やオンラインによる初診料として214点、再診料・処方料・処方箋料はそのままで、電話等診療により以前から対面診療を受けていた慢性疾患患者の特定の医学管理料が147点に引き上げとなった。
 2020年4月~6月の電話再診・オンライン診療の実積として、初診件数の比率は2:1で、年齢層では10才までの受診者が30~ 40%と最も多く、電話再診は各年齢層に用いられているが、オンライン診療は50才までの若い人達が約90%を占めている。受診者の主な疾患・症状は発熱・上気道炎・呼吸器疾患・アレルギー性鼻炎・湿疹等が殆どとなっている。基礎疾患のあるケースが約60%、診療科は内科・小児科・皮膚科の順となっている。
 現在、オンライン診療システムに専用システムの導入や汎用サービス(Zoom、LINE)の利用がある。システム事業者は数社あり、予約診療やセキュリティには問題なく、初期費用・月額利用料・カード決済手数料等に違いがある。課題は事前のアプリ操作が煩雑、自費の通話料等の設定で患者負担となっている。しかし、診療報酬が低く、算定対象が限られており、算定が広がらない理由となっている。
 オンライン診療は過疎地における遠隔診療や病状の安定した慢性期疾患の診療にも有用であり、今後は、コロナ禍対策以後も算定要件を緩和し、診療報酬を見直して、オンライン診療の広がりを期待する。オンライン診療やPHR、EHR等の積極的なICTを活用し、医療のデジタル化とネットワーク化の促進を期待する。

表1 オンライン診療、電話等を用いた診療の点数

 

全日病ニュース2020年11月1日号 HTML版

 

 

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