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ホーム全日病ニュース(2020年)第976回/2020年12月1日号医療介護総合確保基金の交付状況などを報告

医療介護総合確保基金の交付状況などを報告

医療介護総合確保基金の交付状況などを報告

【厚労省・医療介護促進会議】市民病院の統合による大病院整備に懸念も

 医療介護総合確保促進会議(田中滋座長)が11月11日にオンラインで開催され、厚生労働省が地域医療総合確保基金の状況を報告した。2019年度の医療分の交付額は、「医療従事者の確保・養成」が421億円で、最も金額が大きかった。地域医療構想を推進するための交付額は361億円。交付額の使途の配分については、都道府県でばらつきが大きい。
 医療分の2019年度の交付額は基金規模で824億円(国費549億円)。内訳は、「地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設または設備の整備に関する事業」が361億円(同240億円)、「居宅等における医療の提供に関する事業」が45億円(同30億円)、「医療従事者の確保・養成に関する事業」が421億円(同281億円)となっている。
 公民の割合は都道府県計画作成時点で、公的医療機関が29.5%(162億円)、民間医療機関が60.7%(334億円)、交付先未定が9.8%(54億円)である。
 2020年度の内示額も示された。基金規模で809億円(同539.3億円)。最も多いのは東京都の74.1億円で、次いで多いのは兵庫県の52.5億円、大阪府の43.2億円、愛知県の38億円である。
 兵庫県が2番目に多かったことについて、日本医療法人協会会長の加納繁照委員が、「2つの市民病院の統合で、病床数が合計でほぼ変わらない巨大病院ができるときいている。周辺の民間病院が淘汰されかねない。地域医療構想の趣旨に則っているのか」と懸念を示した。厚労省は、兵庫県に交付を決めた経緯を改めて聴取する意向を示した。
 日本病院会副会長の仙賀裕委員は、「医療従事者の確保・養成」で民間人材紹介会社の手数料に、基金が使われることを問題視。厚労省は、適正な価格であれば、自治体の判断により活用はあり得ると回答したが、他の委員からも、同様の意見があり、施設ごとではなく、地域ごとに人材を確保する仕組みの充実を求める意見が出た。
 また、2014年度~ 2018年度の執行状況をみると、予算額は4,548億円(同3,032億円)、交付総額は4,548億円(同3,032億円)、執行(予定)総額は3,915億円(同2,610億円)となっている。
 交付総額に対し、執行額の低さを指摘する意見があるが、厚労省は「複数年度にわたって実施中および今後実施予定の施設整備事業について、後年度の負担分を確保しているため」と説明している。

介護分の昨年度交付額は530億円
 介護分の2019年度の交付額は、基金規模で530億円(国費354億円)。内訳は、「介護施設等の整備に関する事業」が419億円(同280億円)、「介護従事者の確保に関する事業」が110億円(同74億円)となっている。公民の割合は、公的医療機関が6.6%(23億円)、民間医療機関が72.6%(231億円)、交付先未定が20.8%(100億円)である。
 2020年度の内示額は、基金規模で538億円(同358億円)。最も多いのは東京都の66.1億円で、次いで多いのは、医療分と同様に兵庫県の29.4億円、埼玉県の27.4億円、神奈川県の25.6億円となっている。
 また、2014年度~ 2018年度の執行状況をみると、予算額は2,897億円(同1,931億円)、交付総額は2,456億円(同1,637億円)、執行(予定)総額は1,818億円(同1,212億円)。未執行額について、厚労省は、医療分と同様の説明を行っている。

医療と介護の情報共有を議論
 厚労省が今後の医療・介護の情報の共有のあり方を議題にあげた。菅義偉内閣はデジタル化を推進し、マイナンバーカードを活用したオンライン資格確認の導入準備などが行われている。医療・介護サービス利用者が共有すると有用な情報について、委員の意見を求めた。
 委員からは、共有する情報を増やすことだけでなく、情報を使えるようにするために、まずは医療と介護の言葉を一致させる必要があることなどが指摘された。薬剤情報を介護従事者が情報共有しても、うまく活用できない問題なども指摘された。同日の委員の意見を踏まえ、まずは介護分野でどの情報共有が有用であるかの議論を行う。

 

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