全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2020年)第976回/2020年12月1日号若手経営者のネットワークで人材を養成
全日病の活動の担い手を広げる

若手経営者のネットワークで人材を養成
全日病の活動の担い手を広げる

若手経営者のネットワークで人材を養成
全日病の活動の担い手を広げる

【シリーズ●全日病の委員会】第9回 若手経営者育成事業委員会 須田 雅人 委員長に聞く

 全日病の委員会を紹介するシリーズの第9回は、若手経営者育成事業委員会(以下、当委員会)の須田雅人委員長にご登場いただきました。この委員会は、次世代を担う病院経営者を育成する目的で2011年に発足。講演会や病院見学会を通じて、若手経営者の研鑽やネットワークづくりに取り組んできました。須田委員長に、委員会活動に対する思いを聞きました。

講演会や病院見学を通じて若手のネットワークをつくる
──若手経営者育成事業委員会の活動について教えてください。
 2011年に委員会が発足して10年ほどになります。前身は、広報委員会が企画運営していた「ヤングフォーラム」で、それを引き継ぐ形で、中村康彦先生(現:副会長)が初代の委員長となり当委員会が発足しました。私は、2017年からの2代目の委員長として実務を引き継いでいます。
 当委員会の活動としては、大きく3つあります。
①『若手経営者の会』
 毎年2月の土曜日に、原則50歳以下の病院経営者及び経営者候補を対象とした研修会を、全日病の会議室で開催しています。皆さんが興味のありそうなテーマを当委員会で話し合い選定し、充分な質問時間を用意して開催しています。毎回、全国から80 ~100人が参加し、終了後には懇親会も行い、1人でも多くの繋がりが出来ることを大切に考えています。今年2月の会では、『今後の介護人材不足を補うための外国人材受入』の勉強と『病院での未収金回収』という2つのテーマで開催しました。 昨年は、『医療界の働き方改革』について勉強しています。
②『病院見学』
 毎年6月の土日を使って、病院見学会を行っています。先進的な取り組みや、他にはないシステムを医療推進の観点で構築できた病院を見学させて戴いています。今年は、残念ながら、新型コロナの影響で中止になりましたが、過去には、札幌禎心会病院、上尾中央総合病院、恵寿総合病院、織田病院、美原記念病院、くろさわ病院、富山西総合病院を見学させて戴きました。病院運営のノウハウ・コツ・ツボなどを少しでも多く吸収しようと、毎回多くの参加者が集まってくれます。ここでも見学の後に懇親会を開催し、今更聞けないことや悩みや将来の目指す形などを語り合っています。
③『ナイトフォーラム』
 秋に開催される全日病学会に際して、その土曜夜に「ナイトフォーラム」を開催しています。これは、若手病院経営者を中心とした学会参加者が集まり、その時代のトピックスを取り上げ、『若手経営者の会』同様に毎年講演会や勉強会(表1)も開催しています。その後は参加者同士の親睦を深め、秋の夜長をグラス片手に語り合います。
──ナイトフォーラムは夜9時頃から始まって、何時まで続くのですか?
 そうですね。会場の使用が許される(午前0時頃)まで居ますが、それが終わっても気の合う仲間で2軒・3軒とはしごする人たちもいるようです。普段顔を合わすことがない遠く離れた者同士が、1年に数回だけ当委員会の活動を通して再会できる機会を作れていることが、何よりも自分としての喜びです。

全国の若手経営者と意思疎通を図る
──若手経営者ということですが、対象になるのは、何歳くらいの方ですか。
 当委員会のメンバーは55歳を上限と規定しています。西日本若手の会と東日本若手の会と密接に連携が取れるように、どちらの団体のリーダーにも参加してもらっています。またこれまで尽力されてきた当委員会OB&OGにも、先輩として、また引き続き顔を出してもらえるように、イベントの際には連絡を欠かさないようにしています。
──病院見学会は東日本・西日本の若手経営者の会と共同で実施しているそうですね。
 東日本と西日本の会は、当委員会とは異なった独立した組織です。もともとは西日本の会があり、後から東日本の会ができたと聞いています。それぞれ独自に病院見学会を立案し実施しています。
 今後も東と西を交えて、しっかりとした意思疎通を計りながら委員会活動を進めて行きたいと考えています。

ヤングフォーラムをきっかけに交流が生まれる
──ヤングフォーラムから若手経営者育成事業委員会が発足した経緯を教えてくれますか。
 私自身は、全日病の理事になった2013年からの参加ですので、発足当時のことを詳しく知らないのですが、全日病学会で広報委員会が企画した「ヤングフォーラム」( 及びヤングフォーラム前夜祭)がその前身としてあるそうです。そこで回を重ねるごとに50歳を中心とする全国規模のネットワークが育ち、ヤングフォーラム以外でも連携を取り合うようになりました。
 こうした集まりは本音ベースで話し合いますから、非常に居心地の良い雰囲気のネットワークができていたと思います。当時の広報委員会の安藤高夫先生や高橋泰先生が中心となって、若手を盛り上げて行こうと働きかけてくれたことが、現在の礎になっていると聞いています。
 ヤングフォーラムの流れを受けて、次代の日本の病院経営を支える経営者、並びに次代の全日病を支える人材の育成・発掘を全日病全体で実施しようと、2011年6月に若手経営者育成事業委員会が発足したという経緯です。

医師以外の経営者にも門戸を開く
──ヤングフォーラムをきっかけとして、若手経営者のネットワークが自然発生的に生まれたということですね。
 病院を経営していく上で悩むことは多いのですが、不幸にして先代が急逝し若くして病院を継承した場合などは苦労することもあります。そういう人が実在するわけですが、1人で悩まないように、全日病の仲間と話し合って何らかのヒントや答えが生まれたりすることもあります。
 また、最近は、医師や歯科医師以外でも病院を継承するケースも増えています。いわゆる事務方出身の経営者の中にもとても優秀な人が頭角を現してきており、若手経営者の会にも参加してくれるようになっています。
 全日病の会員資格はこれまでは医師に限られていましたが、こうした状況を受けて、今年6月の総会において、非医師の経営者にも門戸を広げる規約改正が行われました。原則は医師とされていますが、都道府県の支部長が認め、全日病理事会が承認した場合には会員資格が認められることになりました。
 医師に限らず、多様な担い手が病院を経営するのは時代の流れだと思いますので、非医師であっても有能な経営者を仲間として受け入れていけるような土壌作りが、当委員会で今行うべき重要なことの一つとして考えています。
 また、そういった新しい形の病院経営者からの話を聞くことで、おそらく今まで経験したことのない発想の転換力や視点の違いを実感できることになり、新鮮な刺激として多くの期待をしています。

外国人材受入事業を若手経営者がサポート
──若手経営者の会の活動を通じてどんな成果がありましたか。
 病院経営に携わる者として研鑽を積む場になっていると思います。若手経営者の会の参加者は皆さん勉強熱心であり、貪欲になんでも吸収しようという気持ちがあります。何か面白いことを見つければ、それをみんなに教えてくれますし、さらに各人がそれぞれ調べて次の研修会のテーマにしようとか、あの先生の病院見学会を開催しようというアイデアも出してきてくれます。お互いに非常に話しやすい関係ですし、横の繋がりが強いと感じます。
 また、全日病の活動の担い手を増やしているとも感じます。若手の会を通じて知り合った人たちは、当委員会以外にも全日病の別の委員会でも活動していることが多く、例えば、私と大田泰正先生は、外国人材受入事業(国際交流委員会)に所属し、外国人介護技能実習生の受け入れにともに関わっています。
 現在、ベトナムとミャンマーから80人以上の介護技能実習生を受け入れ、すでに全国の34以上の会員病院で就労を開始しています。これらの外国人受入病院に対して、全日病が担っている監理団体の業務として、3か月に1回の監査を実施しています。しかし全国規模で展開していることもあり、外国人材受入事業の関係者だけではマンパワーが足りません。そこで、当委員会として若手の仲間に協力を仰ぐことにしました。外国人の監理業務の一部を担ってもらうことをお願いし、多くの方に協力を申し出て戴けました。若手の仲間にお願いしたのは、風通しの良い相談しやすさと、フットワークの軽さでした。その方々には、「監査特別構成員」として事業にご協力戴いています。今後、外国人受入事業がさらに拡大すれば、さらなる人材の確保が必要になると思います。
──最後に今後に向けて一言お願いします。
 若手経営者の会に参加してくれる人が今後も増えるよう願っています。共通の目標や悩みを持つ仲間として、打ち解けた雰囲気づくりを心掛けたいと思っています。
──ありがとうございました。

表1 過去のナイトフォーラムのテーマと講師
〇2013年埼玉
 「 地域包括ケア実現のためにコツを伝授」逢坂悟郎(厚生労働省老健局)
〇2014年福岡
 「 地域医療の経営者である皆様へのお願い」山下護(厚生労働省保険局)
〇2015年北海道
 「 地域医療構想について」佐々木昌弘(厚生労働省医政局)
 「 公的病院と民間病院の歴史的経緯」安藤高夫(全日病副会長)
 「 地域医療構想作りに関する香川県の現状報告」松浦一平(総合病院回生病院)
〇2016年熊本
 「 平成28年熊本地震」上村晋一(阿蘇立野病院)、鬼塚一郎(田主丸中央病院)、横倉義典(ヨコクラ病院)
〇2017年石川
 「 外国人技能実習制度」須田雅人(赤枝病院)、大田泰正(脳神経センター大田記念病院)
〇2018年東京
 「 看取りのあり方とコスパ比較」須田雅人(赤枝病院)
〇2019年愛知
 「 財務省から見た日本の医療」八幡道典(財務省主計局)
〇2020年岡山
学会延期に伴い開催なし
若手経営者育成事業委員会・委員
委員長  須田雅人
副委員長 大田泰正
委員  今村康宏
委員  大橋淳平
委員  鬼塚一郎
委員  北島明佳
委員  甲賀啓介
担当副会長 中村康彦

 

全日病ニュース2020年12月1日号 HTML版