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ホーム全日病ニュース(2020年)第976回/2020年12月1日号受診歴あれば初診からのオンライン診療可能に

受診歴あれば初診からのオンライン診療可能に

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【厚労省・オンライン診療指針検討会】安全性・信頼性を確保する手段を検討

 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)は11月13日、オンライン診療を推進するための議論を行った。過去の受診歴がある患者で、安全性・信頼性を確保できれば、初診からのオンライン診療を認めることを了承した。過去の受診歴を遡る期間や安全性・信頼性を確保する手段に関して、様々な意見があった。
 菅義偉内閣によるデジタル化の推進の下、初診からのオンライン診療を認める方向で検討することについては、田村憲久厚生労働大臣、平井卓也デジタル改革担当大臣、河野太郎行政改革担当大臣による3大臣合意で決まっている。その具体的なルールづくりを同検討会で行っている。
 再診でのオンライン診療はすでにガイドラインが定められており、その緩和も課題だが、初診からのオンライン診療は、これまで対面診療が原則であったため、ガイドラインの大きな見直しになる。厚労省は前回の検討会の議論を踏まえ、「初診でも安全性・信頼性を担保するには、医師が患者の医学的情報を把握し、医師・患者間の関係性が醸成されていることが重要」と整理。「過去の受診歴がベースになる」との考えを示した。
 新たな症状への診察である「初診」であっても、「慢性疾患で定期受診中の患者に対する新たな別の症状の診療・処方」であれば、医師はある程度患者を把握しており、医学的なリスクを軽減できる。このため、他の安全性・信頼性の要件を満たすならば、初診からのオンライン診療を認めるということで、合意が得られた。
 ただ、受診歴があっても、一定以上の期間が過ぎてしまえば、ある程度患者を把握しているとは言えなくなる。厚労省は、受診から12カ月以上経過している場合は、「十分な状態把握は困難」と指摘。それを過ぎていれば、対面診療が必要との論点を示した。
 これに対し、株式会社メディヴァ代表取締役の大石佳能子委員は、「勤労世代で定期的に受診しないサラリーマンなどを想定すれば、もう少し長いほうがよい」と述べた。一方、NPO 法人COML理事長の山口育子委員は、「1年を過ぎれば、患者の状態は結構変わると思う」と厚労省案に賛成した。
 受診歴がない患者についても、初診からのオンライン診療を認める場合が議論された。厚労省は論点として、2つのケースを示した。
 一つは「他院からの診療情報の提供がある場合」で、具体的には、診療情報提供書があり、紹介元がオンライン診療を可能と判断しているケース。もう一つは、「看護職員がリアルタイムで患者のそばにいる、いわゆるD toP with N」。介護施設などで医師が不在のケースを想定している。
 これらについて、様々な意見があったが、概ね賛意が得られた。

対面診療が必要な場合の対応
 受診歴以外で安全性・信頼性を確保する手段としては、◇必要な対面診療の確保◇事前トリアージ◇事前説明・同意◇本人確認◇処方制限◇研修の必修化─などのルールを設ける方向だ。
 同日は、主に「必要な対面診療の確保」を議題とした。緊急時や、重大な疾患の見落とし防止のため、対面診療を適切に確保しておくことも重要な課題となる。その場合は原則、かかりつけ医を想定し、オンライン診療を実施した医師が対応するとした。
 初診を含むオンライン診療は、患者の生活圏で完結することが望ましい。しかし、距離要件を明確に定めることは現実的ではないとの意見や、居住場所が複数ある患者への対応で様々な意見があった。厚労省は、委員の意見を踏まえ、考え方を改めて整理する。
 紹介状により専門医が初診のオンライン診療を行う場合は、その専門医が対面診療に対応するが、専門医の医療機関が距離的に離れているなら、紹介元の医師が対面診療を行うことを基本とすることになった。
 営利目的のオンライン診療専門の医療機関への懸念に対しては、地域医療に与える影響を念頭に、検討を行う。
 また、現在特例で実施されている初診を含む電話・オンライン診療については、電話のみの初診を段階的に縮小させていくべきとの考えで一致した。

 

全日病ニュース2020年12月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 新型コロナウイルス対応で初診からのオンライン診療認める|第961回

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20200415/news04.html

    2020年4月15日 ... 新型コロナウイルス対応で初診からのオンライン診療認める|第961回/2020年4
    月15日号 HTML版。21世紀の医療を考える「 ... 厚生労働省の「オンライン診療の
    適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(山本隆一座長)は4月2日
    、新型コロナ ... が明らかに増加している期間のみ、外来医療提供体制が危機的な
    状況である地域に限定」した上で、認めることを論点とした。

  • [2] AGAやED、アレルギー性鼻炎は対面診療で|第935回/2019年3月1 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190301/news06.html

    2019年3月1日 ... 厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討
    会」(山本隆一座長)は2月8 ... だが、◇男性型脱毛症(AGA)◇勃起不全症(
    ED)◇季節性アレルギー性鼻炎◇性感染症は、同検討会で議論した結果、いずれ
    初診の対面診療で、患者の状態に ... 忙しい」が理由だと、なし崩しの懸念 同
    検討会では、5月頃に指針見直し案をまとめるため、様々な論点 ...

  • [3] オンライン診療でガイドラインを作成|第912回/2018年3月1日号 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180301/news04.html

    2018年3月1日 ... 厚生労働省の「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」(
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    ①遠隔診療の定義と名称②基本理念と倫理指針③ガイドラインの項目─を論点
    として示した。 ... 情報通信機器の発展を踏まえれば、対面診療を完全に代替でき
    初診でも活用できる場合を見込むべきとの意見もあったが、「その ...

  • [4] 厚労省が「医療資源重点外来」

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/201115.pdf

    2020年11月15日 ... る検討会」(山本隆一座長)が11月2日、. オンラインで開催された ... 初診は、
    その医療機関に初めて受診する場合と、受診歴はあるが診療期間が空い. たため
    診療報酬上初診と ... 論点として提示した。 報告に診療所を含める ...

  • [5] 全日病ニュース・紙面PDF(2019年4月15日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2019/190415.pdf

    2019年4月15日 ... ような論点を出してほしい」との要望. が出た。 全日病会長の猪口雄二 ... 検討会
    山本隆一座長)は3月29日、. 緊急避妊薬を一定の条件の下で、オン. ライン
    診療の初診対面診療原則の例外. として認めることを了承した。

  • [6] 全日病ニュース・紙面PDF(2018年3月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2018/180301.pdf

    2018年3月1日 ... 急的な取組み」と「中間的な論点整理」. をまとめた。緊急的な取組みでは、 ...
    会」(山本隆一座長)は2月8日に初会. 合を開き、情報通信機器を用いた ... 面
    診療を完全に代替でき、初診でも活. と説明。補助金でメリハリを ...

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