全日病ニュース

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地域医療構想の議論は着実に進める

地域医療構想の議論は着実に進める

【厚労省・地域医療構想WG】具体的な工程はこの冬の感染状況みながら設定

 厚生労働省の地域医療構想に関するワーキンググループ(尾形裕也座長)は12月9日、コロナ対応を踏まえた今後の医療提供体制に向けた考え方を整理した。コロナ対応が続く現状だが、人口減少・高齢化という地域医療構想の背景にある状況は変わらない。このため、医療機能の分化・連携を推進する地域医療構想の議論は着実に進めていく必要があるとの認識で一致した。
 ただ、コロナの感染状況には地域差があり、議論の再開を全国一律に決めるのは困難。この冬の感染状況をみながら、改めて具体的な工程を設定することが適当との意見でまとまった。
 コロナのような新興感染症等への対応は「医療計画」に位置づけることになった。平時から、「感染拡大時にゾーニング等の観点から活用しやすい病床や感染症対応に転用しやすいスペースの確保に向けた施設・設備の整備や、人材確保の考え方の共有を進める」ことで、「平時の負担を最小限にしながら、有事に機動的かつ効率的に対応することが可能になる」とした。
 これに関し、全日病会長の猪口雄二委員は、コロナの経験を踏まえ、「人を集めるというのが、感染拡大時はとても難しい。人材確保策は、事前にフローチャートなどを作っておくなど、前もって十分に準備しておく必要がある」と強調した。
 全日病副会長の織田正道委員は、「地域医療構想では、地域における医療機能の分化・連携の議論をしてきた。コロナのような感染症拡大時に、急性期後の患者が、その後、どのような経過をたどっているかをきちんと把握し、対応する必要がある」と指摘した。
 その上で、「急性期後の体力が落ちた患者に、医療・介護がきちんと提供されているか心配だが、現状はどうか」と質問した。厚労省は、「正直、把握できていない」と回答するとともに、12月8日に閣議決定された総合経済対策で、コロナからの回復患者の転院支援での診療報酬の特例措置が盛り込まれたことを説明した。
 このように、新興感染症等への対応が平時からも必要になった。ただ、地域医療構想における医療需要・病床の必要量を超えて、一定数の稼働病床を確保し続ける場合、「その維持には追加的な費用がかかり過ぎる」ことも確認した。このため、今後の地域医療構想の議論においては、病床の必要量の推計などの基本的な枠組みは、従前の考え方どおりに進めていくことになる。
 従前の考え方を維持しつつ、地域医療構想を着実に進めていくため、国は様々な支援を実施する。
 具体的には、◇地域医療調整会議における議論の活性化に資するデータ・知見等の提供◇「重点支援区域」の選定◇「病床機能再編支援制度」は来年度以降、消費税財源を充当するための法改正を実施し、支援を継続◇医療機関の再編統合を行う場合の優遇税制措置の検討─を明記した。
 診療実績の乏しい公立・公的病院の再編統合の議論も、改めて対応方針の策定を進め、地域医療構想調整会議の議論を活性化させるとしている。
 猪口委員は、「『重点支援区域』への支援にしても、公立病院を再編統合し、基幹病院を新設する事例が出ている。支援する際には、機能分化・連携を推進する地域医療構想の趣旨に則っているかを、このワーキンググループで確認する必要がある」と要請した。

全国一律の取組み求めるのは困難
 今後、地域医療構想の議論が再開されることになる。しかし、「感染状況に地域差があり、地域医療構想の議論の進捗状況にも地域差が生じることを踏まえれば、現時点で全国一律に取組みを求めることは困難」、「現下のコロナ対応で、全力を尽くして対応している最中であり、現時点で工程を提示することは適切ではない」ことも確かだ。
 このため、コロナへの対応状況に配慮しつつ、自主的に取組みを進めている医療機関や地域に対しては、国が支援を行う。今後の進め方については、「この冬の感染状況をみながら、改めて具体的な工程を設定する」ということを、同ワーキンググループの検討結果としてまとめた。

 

全日病ニュース2021年1月1・15日合併号号 HTML版

 

 

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  • [1] 新興感染症等の感染拡大時の医療を5事業の記載事項に追加|第976 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20201201/news01.html

    2020年12月1日 ... ... 医療構想ワーキンググループ』のヒアリングでも、コロナ患者を受け入れた
    病院では、ハード面ではゾーニングや ... 一般医療が制限される分は、地域での
    役割分担のため、平時から新興感染症等に感染した患者を受け入れる ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年9月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200901.pdf

    2020年9月1日 ... の実施によっても、平時と同様の運用. は困難で ... ゾーニングと. は感染区域と非
    感染区域を明確に分け. ることで、院内のレッド・イエロー・. グリーンゾーンを
    決定します。スタッ ... ワーキンググループ」の報告があり、.

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2020年6月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200601.pdf

    2020年6月1日 ... 平時の対応に. ぎりぎりで、非常時に対応する能力が. 低下していた。重症者の
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