全日病ニュース

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ホーム全日病ニュース(2021年)第994回/2021年9月15日号質向上・価値創造、地域と共にー持続可能へのチャレンジ

質向上・価値創造、地域と共にー持続可能へのチャレンジ

質向上・価値創造、地域と共にー持続可能へのチャレンジ

【佐能学会長講演】医療福祉複合施設で地域包括ケアシステムの実現目指す

 私たちの目前の課題は、withコロナであり、2025年と2040年の時に象徴される超少子高齢化・人口減少社会への対策である。自らの病院が10年後に現在の形で残っているかどうかはわからないが、コロナ禍での連携や地域包括ケアシステムの実現に今取り組むことが、持続可能への挑戦の最終チャンスではないかと思っている。
 経済界ではSDGsを強力に推し進めており、モノからの価値創造という視点で私どもの光生病院の生い立ちを紹介する。マニラの全滅した部隊からただ一人生還した創設者佐能正が、昭和27年に光生病院を開設し、『慈愛と奉仕』の理念と「昼夜を厭わず身体を動かし、困っている患者を助ける」との行動指針で救急医療一筋、昭和38年に救急病院の指定、昭和41年に特定医療法人社団光生病院となり、昭和の増改築で220床の病院となっていた。平成に入り、最初のイノベーションとして近代化設備整備事業で老健50床・デイケアを8階建救急病院198床に合築した。また、父が昭和49年に創立した社会福祉法人ことぶき会は特養宇甘川荘100床を開設していたので、介護保険の創設を機に、ことぶき会を生かして医療と健康管理を充実したユニット化・個室化で広域型特養や地域密着型小規模特養・多機能施設、サ高住、ショートステイ、グループホーム、デイサービス等を創設し、社会医療法人248床と社会福祉法人15施設・750床で約1000床となる光生病院グループを形成した。さらなるイノベーションとして、社会医療法人の耐震補強増改築事業では、社会福祉法人と一体となって12階建医療福祉複合施設を建設し、救急病院に小規模特養やサ高住や地域交流スペースを合築した。
 モノからコトへという観点では、岡山市には岡山大学病院、川崎医科大学附属病院、岡山市民病院、赤十字や済生会など大規模病院が密集しており、高度急性期医療では「光生病院の居場所がなくなる」という危機感から、持続可能への挑戦では、地域の医療と介護を支える地域密着型の多機能病院が一つのヒントとなった。また、地域高齢者医療センターとして中核病院と連携してポストアキュート機能を充実させ、訪問看護・リハビリ等在宅医療支援に力を入れ在宅医療強化診療所と連携した在宅医療支援拠点病院を目指すしかないとの結論に至っている。
 弘法大師の言葉に『菩薩は慈悲を体としたもう』という教えがある。医療は菩薩の業!とは「人の苦しみや悲しみを我が苦しみ悲しみとし、ただ人に喜んでもらうことを我が喜びとする」となり、患者よし、医療人よし、世間よし、未来よし!となる。もので溢れる心の貧乏ではなく、時間で溢れる真の自由を手に入れ、残り少ない自分の時間の質を高め、人生の価値向上に努めるしかない。持続可能への挑戦とは、菩薩の医療に挑み、2040年を見据えた人口減少下における長寿で健康な地域共生社会を創り、病院を中心によりよく生きるを支え、元気でお年寄りの笑顔が絶えない街づくりで豊かな心の時代の実現にあると想う。

 

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