全日病ニュース

地域密着型病院が市区町村単位で多様な機能を果たす

【学会企画シンポジウム１】コロナの診療実績踏まえた急性期の議論も始まる

　「コロナ禍のグレート・リセット、新しい日本の医療を考える」をテーマに今後の医療提供体制などをめぐり意見が交わされた。
　全日病の猪口雄二会長は、民間病院が果たす役割として、地域密着型の病院が市区町村単位の医療圏で軽度急性期や回復期機能を担いつつ、介護等も含めて地域で連携することが重要になると強調した。日本病院会の相澤孝夫会長や日本医療法人協会の加納繁照明会長からも同様の機能を重視する「地域密着型病院」の役割が語られ、目指す姿の共通性が示される形となった。

民間と公的の得意・不得意ある
　厚生労働省の迫井正深医政局長は新型コロナ対応では主として急性期医療の機能が求められる局面であったとし、レセプト等により把握される今般のコロナの診療実績等をベースラインとして、地域の実情に応じて急性期機能などを議論することが必要であるとの認識を示した。
　また、民・公による医療の二元体制での役割分担について説明した。「急性期は技術の革新が早く、逆にいうと陳腐化も早い。一方で長期療養、回復期は生活に密着する安定的な運用が求められる。こういったことは民間、公的それぞれに得意、不得意がある」と述べ、民間病院には技術革新やサービス改善にスピード感を持って対応できる利点があると強調した。
　また、医療は体制転換に時間がかかるとし、「日本の医療提供体制は民間主導であり、民間主導でやっていくことの良さを活かしてきた。コロナ対応を踏まえて、今後どう対応していくのか、特措法、感染症法による要請、勧告、公表をどう考えるのか、といった論点が重要になる」と述べた。
　相澤会長は「地域密着型病院」の役割は、一般の急性期から回復期、場合によっては慢性期の患者も診るなど、多機能を発揮できる病院を指すものだと説明した。地域包括ケアにとって重要な介護サービスや生活支援、重症化予防、リハビリ、健診などに関わることで、多くの医療資源を投入する「基幹型病院」とも連携し、「地域の入院医療の中核になり、かつ地域包括ケアにおいても中核的な役割を果たす病院になるべきではないか」と強調した。
　加納会長は有事の際の病院間の役割分担について、「公的資金が投入されている基幹的な病院で感染症も対応できるところはしっかり対応し、それを補完する意味で民間病院が協力医療機関として手伝うことができる」と述べた。さらに、人口集積度が低く今後高齢者人口が減少する地域等において、「医療を安定的に提供する意味では公的病院のあり方は非常に大事だと認識している」とした。
　猪口会長は、全日病が提唱してきた「地域一般病棟」の考え方で、地域の中で軽度の急性期から回復期、在宅医療等を担うなど「地域密着型病院」としての役割を果たすことが地域包括ケアシステムの要になると強調した。
　現在介護は市区町村単位、医療は二次医療圏単位が基本となるためミスマッチが生じていると指摘し、「地域密着型の病院は市区町村単位で介護と一緒に話し合いをしたほうが上手く連携できる。介護の人たちと一緒に仕事をしていくことで、『地域包括ヘルスケアシステム』として今後非常に有効になっていくのではないか」と述べた。
　ディスカッションでは、座長の神野正博副会長が「どこでどれだけ今コロナを診ているのかは、今後の医療計画策定の上でも重要になるのではないか」と指摘した。これに対し迫井医政局長は、コロナ対応の実績をレセプトや交付金のデータとして把握しており、今後の議論に活かすとの考えを示した。