全日病ニュース

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ホーム全日病ニュース(2021年)第994回/2021年9月15日号入院機能と外来機能の見える化が同時に進む

入院機能と外来機能の見える化が同時に進む

入院機能と外来機能の見える化が同時に進む

【特別講演2】石井孝宜・石井公認会計士事務所所長

 全日病参与でもある石井孝宜所長は、「コロナ禍の病院経営の検証とその対策~そして、外来改革で変わるか?病院機能」と題する特別講演を行った。来年度から外来機能報告制度が施行されるなど、今後、外来機能の明確化が進む見込み。石井所長は、「地域密着型の病院が、医療資源を重点的に活用する外来を基幹的に担う病院との関係で、地域でどのような機能を果たすのかを自ら考えることが重要になる」と指摘した。
 改正医療法により、外来機能報告制度が来年度から施行される。石井所長は、「今後の病院改革は、入院機能と外来機能の『見える化』が進められると考えられ、今までは入院機能が先行してきたが、コロナ禍により、それがほぼ同時に行われることになる」との見方を示した。
 その場合に、「地域に密着して尽力している病院が、今後、どういう形で機能を果たすのか。地域密着型病院が、医療資源重点外来を基幹的に担う病院になることも疑問だが、今の流れだと、そうならないのではないか。政策の変化を見極めながら、かつ全体の動きもみなければ、これからの変化に病院経営は太刀打ちできない」と警鐘を鳴らした。
 医療資源重点外来を基幹的に担う病院になるかは、自らの「手上げ」によるとされる。石井所長は、「手上げ」をする上で、インセンティブとなる報酬がどうなるかも、慎重に見極める必要があると述べた。
 入院医療の報告制度については、「今までは、『高度急性期が何床』など、病院の判断で機能を報告すればよかったが、今後は、定量的な基準を含め、病院の判断だけでは認められなくなる時代が来る」と予測した。その場合に、「単に高度急性期の大病院にとって影響があるだけで、地域密着型病院には影響がないと思ってしまいがちだが、そうだろうか。病床機能の割合を考えると、本当のところはどうなのかと強く感じている」と述べた。

民間病院のコロナ患者の受入れ
 石井所長は、「民間病院の新型コロナ患者の受入れが少ないのではないかといった指摘がある」と述べた上で、「新型コロナの患者は大都市に多く、大都市で受入れの比率が高いのは民間病院なので、現実にはかなりの役割を果たしてきた」と述べた。
 具体的には、新型コロナ患者を受け入れた実績のある1,697病院のうち、公立病院は439(25.9%)、公的等病院は465(27.4 %)、民間病院(民間の地域医療支援病院139施設を含む)が793(46.7 %)という数字を紹介した(2021年1月時点)。
 コロナ禍における病院等の経営状況については、政府の対応で「医療機関にはそれなりの支援金が入金されている現状だ。昨年11~ 12月以降は、収入としてはっきりと計上されるようになり、経営的にはある意味、損失補填が行われた形になっている」と述べた。
 一方で、今後の医療機関への支援等について、「第5波の感染状況で、このような支援金がどうなるのか、また、減ってしまった本来の患者がどう戻っていくのかなど、経営的な課題は山積み」と指摘した。新型コロナが与えている病院への経営的な影響を、「短期的に1年間だけの損益、収支だけで判断することは難しい」とした。

 

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