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ホーム全日病ニュース(2022年)第1002回/2022年2月1日号「議論の整理」がまとまり、2022年度改定の議論が大詰めに

「議論の整理」がまとまり、2022年度改定の議論が大詰めに

「議論の整理」がまとまり、2022年度改定の議論が大詰めに

【中医協総会】2020年度改定の経過措置の延長は終了に

 中医協総会(小塩隆士会長)は1月14日、2022年度診療報酬改定に向けたこれまでの「議論の整理」をまとめた。同日、後藤茂之厚生労働大臣は中医協に対し、2022年度改定を諮問。中医協総会は2月上旬の答申に向け、大詰めの議論に入る。
 「議論の整理」について厚労省は1月21日までパブリックコメントを募集。21日には、オンライン形式で「議論の整理」を踏まえた公聴会を開催した。以下で、「議論の整理」の内容をみていくが、現在、点数設定を含めた個別改定事項の議論が中医協総会で進行中であるため、「議論の整理」をめぐり、意見があった項目を中心に紹介する。
 なお、「議論の整理」の文言については、診療側と支払側の両者の合意が得られていない項目が一部にある。このため、冒頭に「今後の中央社会保険医療協議会における議論により、必要な変更が加えられる」との留意事項が示されている。

コロナ特例対応は当面続ける
 「議論の整理」の項目立ては、社会保障審議会医療保険部会・医療部会の基本方針に即しており、最初が新型コロナ関係となっている。
 2020年度の感染拡大以降、段階的に拡充されてきた新型コロナの入院患者などへの特例的な診療報酬は、引き続き実施される方針だ。一方、2020年度改定の経過措置となっていた改定項目は、ほぼ実施されないまま延長が続き、2022年度改定に至る形になるが、新たな改定項目ごとに経過措置が設けられることから、延長せずに終了する。
 同日の中医協総会で経過措置の終了を了承した。経過措置には、急性期一般入院料等の「重症度、医療・看護必要度」の引上げや地域包括ケア病棟入院料等の診療実績の水準引上げなど基準値に関わる項目と、地域医療体制確保加算の救急搬送受入れ件数など年間実績に関わる項目がある。
 当初は2020年9月末までの経過措置だった。新型コロナの感染拡大に伴い、新型コロナの感染者を受け入れた病院で、病棟の患者構成の変化が生じることなどに配慮し、経過措置を延長してきた。2021年10月以降は、基本的にコロナ患者を受け入れる病院だけを対象とした。
 2022年度改定ではこれらの基準について、新たに基準が設定され、項目ごとに経過措置が設定されるとみられるため、現行の経過措置は終了する。なお、新たな基準においても、新型コロナ対応の期間は含めずに、診療実績を算出するなどの取扱いとする、いわゆる「コロナ補正」は適用される。
 また、外来時の感染防止対策の評価については、新型コロナでの特例が一般外来では昨年9月末に終了しており、小児への外来における特例も今年3月末で終了となる。しかし、特例措置は終了するものの、新型コロナの経験も踏まえ、外来時の感染防止対策の体制を新たに評価するとともに、感染防止対策加算の名称、要件・評価を見直すことが、「議論の整理」に明記された。

高度急性期入院医療で新たな評価
 入院医療の機能分化、連携を推進する観点での見直しについては、診療側が、新型コロナの感染拡大により2020年度改定が十全に実施されず、状況も収束していないことから、大きな見直しに対し、一貫して反対してきた。
 一方、支払側は、高齢化・人口構造の変化という中長期的な課題への対応の期限が迫っているほか、機能分化、連携の推進が新型コロナ対応にも有効であるとの観点から、特に急性期入院医療のメリハリのある評価への見直しを主張している。
 昨年12月22日、改定率を決定した後藤茂之厚労相と鈴木俊一財務大臣の大臣折衝でも、支払側が主張するような急性期入院医療の機能分化、連携の推進が明記されており、一定の厳格化は不可避の状況となっている。
 「議論の整理」では、急性期・高度急性期入院医療に関し、◇手術や救急医療等の高度かつ専門的な医療の実績を一定程度有する体制を新たに評価◇総合入院体制加算の見直し◇「重症度、医療・看護必要度」の評価項目、入院料の評価のあり方を見直し◇200床以上の急性期一般入院料1に「重症度、医療・看護必要度Ⅱ」を要件化─などを盛り込んだ。

地ケアは役割に応じた見直し
 地域包括ケア病棟等は、「地域包括ケア病棟に求められる役割に応じた医療の提供を推進する観点から、地域包括ケア病棟入院料の要件及び評価のあり方を見直す」という抽象的な表現となっているが、見直すことは明記されている。
 また、当初の「議論の整理」では、「一般病床及び療養病床の入院患者の特性の違いを踏まえ、それぞれの役割に応じた医療の提供を推進する観点」から見直すとの表現もあった。しかし、日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員が、「一般でも療養でも地域包括ケア病棟としての役割は同じではないか」と述べ、「それぞれの役割に応じた医療の提供を推進する観点」との文言は削除された。
 回復期リハビリテーション病棟入院料の評価の見直しも、同様に抽象的な表現となっている。一方、回リハ病棟入院料に、心大血管疾患の発症後・手術後を、「回リハを要する患者の状態」に追加することや、特定機能病院で実施するリハビリテーションを新たに評価することでは合意を得ている。
 療養病棟入院基本料については、経過措置の取扱いを見直す。医療区分3の「中心静脈栄養」の要件も見直す。

紹介受診重点病院に評価を設定
 外来では、2022年度から外来機能報告制度が施行され、2022年度後半には、「紹介受診重点医療機関」が位置づけられる。200床以上の「紹介受診重点医療機関」は新たな受診時定額負担の対象となることから、「新たな評価」を設ける方向だ。支払側はこれに反対している。「議論の整理」では評価の理由を、「入院機能の強化や勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上するため」と説明している。
 医療機関間の紹介・逆紹介を増やし、外来医療の機能分化を促す方向での見直しは幅広く行う見込みだ。診療情報提供料が算定しにくい状況を改善するきめ細かな対応なども図る。
 在宅医療は、住民の需要があるにもかかわらず、それを担う医療機関が伸び悩んでいる現状を踏まえ、質の担保を図りつつ、一定の緩和を行う方向での見直しが実施される。
 24時間体制が要件である継続診療加算の見直しや機能強化型在宅療養支援診療所の要件の見直しなどもある。

看護職員の処遇改善は別に答申
 医師等の働き方改革の対応では、2020年度改定で新設した地域医療体制確保加算の対象医療機関の追加と要件・評価を変更する。医師の働き方改革を実効的に進める観点から、算定できる対象医療機関を拡大する考えだ。
 2021年11月に閣議決定された経済対策を踏まえた看護職員等への収入引上げの2022年10月以降の診療報酬での対応については、4月からの2022年度改定とは別に諮問・答申を行う方針が示された。その場合、一定の周知期間を含め10月の実施に間に合うよう日程を設定するとしている。
 医療従事者のタスクシェアリングを推進する観点から、医師事務作業補助体制加算、栄養サポートチーム等加算、病棟薬剤業務実施加算などの見直しも実施する。ただ、「看護職員及び看護補助者に対して、より充実した研修を実施した場合等の新たな評価」については、支払側が反対した。
 オンライン診療は、初診からのオンライン診療を可能とするとのガイドラインの改訂を踏まえ、初診の点数設定を行う。再診や医学管理の要件・評価も見直す。
 「オンライン資格確認システムの活用により、診断及び診療等の質の向上を図る観点から、新たな評価を行う」にも支払側は反対した。診療側は、オンライン資格確認システムは、今後の医療情報ネットワークの基盤になるとして、導入促進のために必要であることを説明し、理解を求めた。
 不妊治療は、保険適用の対象を拡大する。一般不妊治療について、「医学的管理及び療養上の指導等の新たな評価」と「人工授精の実施の新たな評価」を行う。生殖補助医療については、「医学的管理及び療養上の指導等の評価」を行うとともに、「採卵」、「体外受精・顕微授精」、「胚の培養等の管理」、「胚の凍結保存」、「胚移植」などを新たに評価する。男性不妊治療の医療技術も新たに評価する。

 

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