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ホーム全日病ニュース(2022年)第1002回/2022年2月1日号厚労省予算案は33兆5,160億円で過去最高を更新

厚労省予算案は33兆5,160億円で過去最高を更新

厚労省予算案は33兆5,160億円で過去最高を更新

【2022年度予算案】コロナ対応の補正予算と合わせた16カ月予算で構成

 政府は昨年12月24日、2022年度予算案を閣議決定した。厚生労働省予算案は33兆5,160億円で2021年度から1.1%増加し、過去最高を更新した。大部分を占める社会保障関係費は33兆1,833億円で同1.2%増。昨夏の概算要求時点では、医療や年金の経費が高齢化などで増大する、いわゆる自然増を6,600億円程度見込んだが、薬価改定などにより、4,400億円まで圧縮したため、伸び率が低くなっている。
 厚労行政の政策的経費などその他の経費は3,327億円で、5.8%の減少。ただ、新型コロナ対策など経費の多くは2021年度補正予算に計上しており、2021年12月から2023年3月までの16カ月予算の考え方を取っている。

後期高齢者の医療費が増加
 社会保障関係費の33兆1,833億円のうち、最も金額が大きいのは年金の12兆6,857億円(2021年度と比べ0.5%増)、次いで医療の12兆1,903億円( 同0.9%増)、福祉等の4兆6,224億円(同3.0%増)、介護の3兆6,003億円(同3.3%増)となっている。雇用は新型コロナ対応で充実させた雇用調整助成金等の見直しにより、2021年度から21.4%の減少を見込み、847億円となっている。
 医療費の内訳は、協会けんぽが1兆2,149億円で対前年度比3億円の増加、国民健康保険が3兆2,160億円で同660億円の減少、後期高齢者医療が5兆4,643億円で同1,346億円の増加、生活保護の医療扶助など公的負担医療が1兆8,855億円で同219億円の減少となっている。
 国保が減少し、後期高齢者医療が増加しているのは、人口の多い団塊世代が75歳に到達し、国保から後期高齢者医療に移っているからである。

コロナ対応は補正予算で主に計上
 2022年度予算案は、2021年12月20日に成立した補正予算と2022年度予算を一体的にみる16カ月予算の考え方を取っている。特に、新型コロナ対応の経費が主に補正予算に計上されており、2020年度から継続する病床確保料など新型コロナウイルス感染症緊急包括支援金や検査・ワクチン接種体制の確保、ワクチン・治療薬の研究開発などを実施する。
 補正予算の新型コロナ関連予算は8兆9,733億円。2021年度の新型コロナ対策予備費も1兆8,539億円が残っている。当面、2021年度のコロナ対策を万全にする予算措置とした。
 16カ月予算の重点事項は4本柱で、それぞれ①新型コロナの経験を踏まえた保健・医療・介護②成長と分配の好循環の実現③子供を産み育てやすい社会④安心して暮らせる社会─を掲げた。
 以下で、「新型コロナの経験を踏まえた保健・医療・介護」の予算の内容を中心にみていく。
 新型コロナ対応の医療提供体制の確保のための経費は、前述のとおり補正予算で大部分を措置しており、2兆2,353億円を計上している。
 具体的には、◇新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金◇医療用物資等◇児童福祉施設等での感染症対策◇心のケア支援◇医薬品等の安定供給─などがあるが、新型コロナ交付金が2兆1,033億円を占める。新型コロナ交付金の主な事業は、新型コロナ患者を受け入れる病床や宿泊療養施設の確保、自宅療養者健康管理である。
 2022年度予算案では20億円を計上しており、◇新興感染症等の感染拡大時に対応可能なDMAT体制の整備◇「医療のお仕事KeyNet」等を活用した医療人材の確保◇新型コロナ感染者等が発生した介護事業所等のサービス継続支援─をあげている。
 検査体制の確保や保健所・検疫所等の機能強化、ワクチン接種体制の経費も補正予算でのコロナ対応が大部分であり、補正予算で1兆6,857億円、2022年度予算案で112億円となっている。
 補正予算では、◇行政検査◇検疫におけるワクチン接種証明書の電子化◇水際対策、入国者の健康確認◇ワクチン接種◇プレパンデミックワクチンの備蓄◇新型コロナ感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)等の感染症対策システムの総合的な運用─などがある。2022年度予算案では、水際対策の強化に向けた検疫所の検疫・検査体制の整備・拡充やIHEAT(保健所を支援する専門職の人材バンク)による保健所の人員体制強化、地方衛生研究所の機能強化がある。
 ワクチン・治療薬等の研究開発の経費も補正予算でのコロナ対応が中心であり、補正予算で8,817億円、2022年度予算案で15億円となっている。
 補正予算では、◇治療薬の実用化支援・供給確保◇新興感染症の治療薬等に関する研究開発◇新型コロナのワクチン開発支援─などがある。2022年度予算案では、感染症に関する危機管理機能やサーベイランス機能強化の研究、アジア地域における臨床研究・治験ネットワークの充実などを図る。
 一方、日本医療研究開発機構(AMED)や厚生労働科学研究の研究開発支援は、2022年度予算案で556億円を確保した。また、国立感染症研究所等の体制強化として、補正予算で14億円を計上している。

医師等の働き方改革の推進を支援
 地域医療構想・医師偏在対策・医療従事者の働き方改革の推進等のために、2022年度予算案で計上した経費は、1,618億円で対前年度比107億円の減少。補正予算は20億円となっている。
 施策の内訳は、◇地域医療介護総合確保基金による地域医療構想の推進◇総合診療医の養成◇ICT活用やタスク・シフティング◇看護師の特定行為、潜在看護師の復職◇女性医療職のキャリア支援◇薬剤師の資質向上◇歯科医療提供体制─となっている。これらは概ね2022年度予算で実施し、補正予算では、保健医療分野のデータ連携基盤の整備の推進(2.9億円)などがある。
 地域医療介護総合確保基金の医療分は国分が751億円、地方分が278億円であわせて1,029億円となった。対前年度比で国費が100億円、地方分が50億円減っている。地域医療介護総合確保基金の医療分の財源の使途には、「地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設又は設備の整備に関する事業」、「居宅等における医療の提供に関する事業」、「医療従事者の確保・養成に関する事業」、「勤務医の労働時間短縮に向けた体制整備」がある。2021年度に創設した「病床機能再編支援事業」も基金事業となっている。
 地域医療構想の実現に向けては、重点支援区域への支援として、別に5.4億円を計上し、国による助言や集中的な支援を行うとともに、地域医療構想アドバイザーの養成などに取り組む。
 2024年度からの医師の働き方改革を念頭に置いた施策では、新規を含めてさまざまな対応を用意した。中心的な施策は、地域医療介護総合確保基金を用いたもので、地域医療において特別な役割があり、かつ過酷な勤務環境になっていると都道府県知事が認める医療機関を支援する。女性医療従事者等の離職防止や再就業を促進するため、病院内保育所の運営や整備に対する支援も基金により実施する。
 基金以外の医療従事者の働き方改革の支援では、都道府県の「医療勤務環境改善支援センター」における医療機関の労務管理等の専門家による支援等(8.9億円)などのほか、新規事業として、勤務医等を対象とした働き方改革周知・啓発(1千万円)や地域医療への影響等に関する調査(8千万円)などがある。
 また、潜在看護師の復職支援等の人材確保では、新規事業でマイナンバー制度を活用した人材活用システムの構築を実施するために必要な調査等を実施する(3,300万円)。同じく新規事業で、薬剤師の資質向上に向け、がん患者や小児・妊産婦への薬物療法といった専門性の高い薬学的管理・指導を実施するための研修や薬剤師・薬局業務へのICT技術の導入などを推進する(2,500万円)。
 救急・災害医療体制の経費は、2022年度予算案で98億円、補正予算で29億円。2021年度予算から18億円の減少だが、ドクターヘリの導入促進やドクターカーの活用、BCPの策定、広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の安定的な運用などを図るとしている。補正予算の29億円は医療施設等の耐災害性強化等の経費。

データヘルス改革に1,100億円強
 健康関連の経費は、2022年度予算案が59億円、補正予算が5.9億円、データヘルス改革で2022年度予算案が1,109億円、補正予算が152億円。データヘルス改革には、新規事業で全額国分(735億円)の医療情報化支援基金によるオンライン資格確認・電子処方箋に向けた医療機関・薬局のシステム整備の経費が含まれている。
 がん・循環器病・肝炎・難病対策等の経費は、①がん・全ゲノム解析等(2022年度予算案が74億円、補正予算が44億円)②循環器病対策(2022年度予算案が45億円)③肝炎対策(2022年度予算案が1,229億円、補正予算が156億円)◇難病・小児慢性特定疾病対策等(2022年度予算案が20億円)で構成する。肝炎対策は大部分が、B型肝炎訴訟の給付金等の支給で2022年度予算案が1,176億円、補正予算が156億円となっている。
 公的部門における分配機能の強化として、看護、介護、保育など現場で働く職員の収入を引き上げる新規事業は「成長と分配の好循環の実現」の項目の中で、2022年度予算案で395億円、補正予算で1,665億円を盛り込んだ。収入引上げは2月から実施し、看護と介護は10月以降、報酬改定での対応となる。保育所等の収入引上げの経費は、内閣府予算案に計上している。

 

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  • [1] 保医発 0 3 2 6 第2号 平成 2 4 年3月 2 6 日 地方厚生(支)局医療 ...

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2012/120409_2.pdf

    公費負担医療(健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療又は退職 ... ウ 薬剤料に係る所定単位当たりの薬価が175円以下の薬剤の投与又は使用の原因となった傷病.

  • [2] 掲載記事一覧 | 公益社団法人全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/topics/column/backnumber/2019.html

    2019年度(平成31年度 / 令和元年度) · 令和2年度診療報酬改定関連通知等について(その4)(厚生労働省保険局医療課:R2.3.31) · 「医療機器の保険適用について」の一 ...

  • [3] ホスピタルフィーの あり方について

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    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2012/120421_1.pdf

    2012/04/20 ... 管部(局)国民健康保険主管課(部)及び都道府県後期高齢者医療主管部(局) ... また、平成24年3月14日発出の「平成24年度診療報酬改定における届出の留.

  • [5] 2020.8.1 No.968

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2020/200801.pdf

    2020/08/01 ... に対しては、◇薬価調査・薬価改定◇. 医療機関経営◇オンライン診療 ... り、1兆6,279億円を計上した。 ... 国民健康保険組合連合会となっている。

  • [6] 全日病ニュース 2017年2月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170201.pdf

    2017/02/01 ... 者として計上しているためである。で ... 査・薬価改定⑤後発品の薬価のあり方 ... ほか、国民健康保険の都道府県単位化.

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