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ホーム全日病ニュース(2022年)第1002回/2022年2月1日号「重症度、医療・看護必要度」見直しでシミュレーション結果示す

「重症度、医療・看護必要度」見直しでシミュレーション結果示す

「重症度、医療・看護必要度」見直しでシミュレーション結果示す

【中医協総会】最も厳しい案では急性期一般入院料1の約2割が満たせない

 厚生労働省は1月12日の中医協総会(小塩隆士会長)に、一般病棟用と治療室用の「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)の項目や基準値を変更した場合のシミュレーション結果を示した。各項目の変更を組み合わせた4案のうち、最も厳しい案では、急性期一般入院料1 を算定する病院の18.1%が、見直し後は基準を満たせなくなるとの結果となっている。
 一般病棟用の「必要度」のシミュレーション条件として、A項目に関して①「点滴ライン同時3本以上の管理」を「点滴薬剤3種に変更」②「心電図モニターの管理」を削除③「輸血や血液製剤の管理」を1点から2点に引上げ、B項目に関して④「衣服の着脱」を削除、C項目に関して⑤「骨の手術(11日間)を10日間に短縮」─を組み合わせ、4案を選択肢とした(図表を参照)。
 「点滴ライン同時3本以上の管理」は、ライン3本であるのに、薬剤が2種類という患者のデータがあり、レセプト電算処理システム用コードが原因とも指摘され、薬剤数への変更が考えられた。「心電図モニターの管理」は、保有台数など医学的必要性以外の理由で装着を決定している医療機関があるほか、急性期の評価指標として適切ではないとの指摘があった。
 「輸血や血液製剤の管理」では、医師による診察や看護師の看護提供が頻回な患者が多いとのデータが出ていた。「口腔清潔」と「衣服の着脱」は両者に高い相関があり、どちらかへの代替が可能と判断された。「骨の手術」は、各手術の日数について、2020年度以降のデータを分析した結果、実態を踏まえた日数設定が望ましいとしている。
 昨年12月17日の中医協総会の資料によると、「必要度」の基準値を満たす上で、「輸血や血液製剤の管理」以外は、厳格化の方向で作用する。特に、「心電図モニターの管理」の削除が「必要度」に与える影響は大きい。
 急性期一般入院料1~3については、各項目を変更した場合のみの条件でシミュレーションを実施した。急性期一般入院料4~6については、基準値を変更した場合も含めた。

200床未満の病院への影響大きい
 急性期一般入院基本料で最も点数が高い、急性期一般入院料1の結果をみていく。条件の①~⑤をすべて採用した最も厳しい案では、現行で基準を満たす病院のうち、18.1%が基準値を満たせなくなるとの結果であった。この割合は「必要度Ⅱ」で8.9%、「必要度Ⅰ」では31.9%という数字になる。
 「必要度」では、「A得点が2点以上かつB得点が3点以上」、「A得点が3点以上」、「C得点が1点以上」のいずれかに該当する患者の割合を基準値として定めている。A得点の獲得が「心電図モニターの管理」の削除により、難しくなる状況を反映している。
 なお、急性期一般入院医療1の基準値は、「必要度Ⅰ」で31%以上、「必要度Ⅱ」で29%以上である。
 200床未満と200床以上に分けると、200床未満で、より厳しい結果となる。200床未満の急性期一般入院料1で条件①~⑤をすべて採用した案をみると、基準値を満たせなくなる病院の割合は27.8%。「必要度Ⅱ」では14%、「必要度Ⅰ」では33.5%となった。
 一方、200床以上では、14.6%に下がる。200床以上の病院に与える影響は、200床未満と比べると小さいが、200床以上では、「必要度Ⅱ」を用いている病院が多いためであり、200床以上でも、「必要度Ⅰ」では30.1%であり、どちらも3割を超えている。200床以上の「必要度Ⅱ」は7.9%。
 次に、急性期一般入院料4の状況をみる。上記の4案について、基準値を変更した場合のシミュレーションを実施している。最も厳しい案を採用した場合の影響は、200床以上の病院で「必要度Ⅰ」の基準値を22%から21%に下げて、「必要度Ⅱ」の基準値を20%から19%に下げた場合で、9.8%となった。200床未満の病院で最も厳しい案を採用し、「必要度Ⅰ」の基準値を20%から19%に下げて、「必要度Ⅱ」の基準値を18%から17%に下げた場合で、14.8%となった。
 このような結果を受け、日本医師会常任理事の城守国斗委員は、「新型コロナが収束しておらず、医療が逼迫している地域も出てきている中で、必要度をより厳格化することは到底承服できない。新興感染症等に対応できる医療提供体制の構築のためには、診療報酬のさらなる充実が必要であるのに、シミュレーションの結果をみると、より厳しくなるとの結果になっている。
 特に、『心電図モニターの管理』については、元々内科系入院への評価が不十分で、これを削除すると、手術や処置が少ない内科系病院に大きな影響を与える。これを実施することはあり得ないと言わざるを得ない」と述べた。
 日本慢性期医療協会副会長の池端幸彦委員も、「急性期を担う病院には、地域により様々な機能がある。シミュレーション結果では、中小規模の急性期病院が相当ダメージを受けることが示された。現状の2〜3割の病院が満たせなくなる項目への変更はあり得ない、地域医療が壊れてしまう」と訴えた。
 これに対し健康保険組合連合会理事の松本真人委員は、「コロナ禍ではあるが、高齢化・人口構造は着実に進んでおり、分化・連携の取組みが必要不可欠であることは、2022年度改定の基本方針に書いてある。新興感染症にも強い医療提供体制とするためにもそれが必要だ。項目見直しでは、最も厳しい案を軸に考えるべきで、『輸血や血液製剤の管理』を1点のままとすれば、もう少し深掘りできる」と述べた。

治療室のB項目削除の影響小さい
 治療室用のシミュレーションも行った。救命救急入院料2、4と特定集中治療室1~4を対象とした。条件は、A項目の「心電図モニターの管理」の削除と、B項目をすべて削除した場合。それぞれに応じて判定基準を変化させて、シミュレーションを実施した。
 その結果、B項目を削除し、「A得点4点以上かつB得点3点以上」を「A得点4点以上」に変更しても、B項目の要件がなくなることによる該当患者割合の上昇はわずかで、A項目でB項目を概ね代替できていることが改めて確認された。「心電図モニターの管理」の削除については、一般病棟用と同様に、基準を満たすことのできる病院の割合が下がるという結果が出た。
 厳しい結果となったのは、B項目を削除し、「A得点4点以上」に変更し、「心電図モニターの管理」を削除した場合の特定集中治療室3で、12.0%が基準を満たせなくなる。一方、「心電図モニターの管理」を削除し、判定基準を「A得点3点以上かつB得点3点以上」にすると、ほぼ影響はなくなる。

 

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  • [1] 2021.11.1 No.997

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2021/211101.pdf

    2021/11/01 ... 中医協総会(小塩隆士会長)は10月 ... 「輸血や血液製剤の管理」有りの方が、診察が頻回 ... ○「衣服の着脱」については、いずれの入院料にお.

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