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ホーム全日病ニュース(2022年)第1002回/2022年2月1日号「新型コロナ感染症に係る個人情報の取扱い」に関するアンケート調査

「新型コロナ感染症に係る個人情報の取扱い」に関するアンケート調査

「新型コロナ感染症に係る個人情報の取扱い」に関するアンケート調査

個人情報保護担当委員会

1 はじめに
 新型コロナ感染症(COVID-19)はいまだ予断を許さない状況にあり、医療提供体制の維持が社会的な関心事である。新型コロナウィルス感染症パンデミックは、医療提供以外にも、未経験の多くの課題を突きつけている。例えば、患者の個人情報保護は、感染拡大防止のためのサーベイランスを時に困難にする。具体的な対応は、明確な形で指針などが示されず、病院は個別に対処しているのが現状である。全日病は医療にかかわる認定個人情報保護団体として、現状と課題を明らかにして、解決を図ることが、社会的な責務であるとの認識の下、会員病院を対象にアンケート調査を実施した。以下では、概要を紹介する。詳細な分析結果は、ホームページ等で公開の予定である。

2 調査結果の概要
 対象は、全日病会員病院であり、2021年9月に無記名式アンケート調査票をメールにより送付・回収した。回収率は、16.0%(407/2536)である。以下の集計では、特に示さない限り分母を407として、無回答を含めた%を示す。

(1)職員からの検査結果・ワクチン接種についての情報収集
 病院が、職員にPCR・抗原検査歴の情報提供を要請することは、「よい」77.6%、「状況により許容される」19.9%であった。実際に結果を把握しているのは、「全職員」が78.4%、「一部職員」が13.8%であった。結果を把握している場合に、その結果にアクセスできる職員を定めているのは72.7%であった(n=384)。

(2)職員へのワクチン接種の勧奨
 病院が、職員にワクチン接種歴の情報提供を要請することは、「よい」75.2%、「状況により許される」16.5%であった。職員へのワクチン接種推奨は81.8%が「よい」と答え、接種指示については22.9%が「よい」と答えた。また、ワクチン接種を希望しない場合の理由の聴取は70.5%が「よい」であった。
 ワクチン接種を希望しない理由で適切と考える内容は、「主治医との相談」94.6%、「ポリエチレングリコールにアレルギー」93.1%、「インフルエンザワクチンでアナフィラキシーの既往」80.3%、「その他のアレルギー」77.9%、「妊娠中・妊娠予定」62.2%、「長期の影響が不明」59.7%、「副反応が怖い」59.0%、「家族との相談」55.8%、「基礎疾患がある」53.3%の順であった(複数回答可)。
 ワクチンを接種しないことを理由とした職員の処遇は、「患者に直接接触する部署からの配置転換」27.0%、「ボーナス査定など金銭的不利益」1.0%、「解雇」0.0%が、それぞれ「可能である」であった。
 ワクチン接種歴、新型コロナ感染症の既往を根拠にした職場配置は、「コロナ病棟」45.0%、「発熱外来」44.2%、「救急外来」39.3%、「ICU/CCU」37.8%が、それぞれ「可能である」であった。

(3)職員のワクチン接種状況への問い合わせ
 患者から、個別の職員のワクチン接種状況を聞かれた際は、接種済みの場合は、「知らせる」15.7%、「回答できない(と答える)」72.0%、未接種の場合は、「知らせる」7.6%、「回答できない」77.9%であった。また、職員全般の接種状況は、「知らせる」35.4%、「回答できない」52.1%であった。
 職員から聞かれた際には、個別の職員のワクチン接種状況は、接種済みの場合は、「知らせる」21.6%、「回答できない」65.1%、未接種の場合は、「知らせる」16.7%、「回答できない」68.3%であった。また、職員全般の接種状況は、「知らせる」51.4%、「回答できない」36.9%であった。

(4)職員・家族からの健康情報等の情報収集
 職員への健康情報(発熱、自覚症状等)の提供要請は、「よい」91.6%、「状況により許容される」8.1%(以下、同順)、同居家族の体調不良・渡航など感染リスクが想定される事項の報告86.7%、11.8%、同居家族の健康情報52.1%、34.9%、職員の会食・旅行の報告48.4%、38.1%、同居家族の会食・旅行の報告32.2%、37.8%であった。

(5)職員等への行動制限
 職員の会食・旅行は、「状況により一定の制限は許される」40.5%、「注意喚起は許される」58.5%であった。職員の同居家族については、それぞれ17.2%、70.8%であった。

(6)患者情報の保健所への提供
 患者の行動歴を保健所へ提供する際の本人の同意は、33.4%が「同意は必要ない」と回答した。また、患者の行動歴から濃厚接触が疑われる人については、34.6%が「同意は必要ない」であった。

(7)職員名の公表等
 職員が感染または濃厚接触の場合に、「院内で職員名を公表してよい」は22.1%であり、職員の問い合わせには、「知らせる」17.4%、「回答できない(と答える)」64.4%、外部からの問い合わせには、「知らせる」1.2%、「回答できない」92.9%であった。

(8)患者・来訪者への情報提供の要請と対応
 患者・来訪者に、情報提供を求めて「よい」とする内容は、「健康情報」が患者98.5%、来訪者96.3%であった(以下、同順)、「家族など身近に体調不良者の有無」82.3%、49.4%、「最近の会食・旅行の有無」71.3%、40.5%、「ワクチン接種歴」78.4%、36.9%、「新型コロナウィルス感染の既往」70.5%、33.7%、「クラスターが発生した医療機関の受診・訪問」40.5%、22.1%であった。
 得られた情報に基づき、患者の動線を分けるなど異なった対応をする理由は、「健康情報」77.6%、「家族など身近に体調不良者の有無」62.2%、「最近の会食・旅行の有無」45.5%、「ワクチン接種歴」38.3%、「新型コロナ感染の既往」36.6%、「クラスターが発生した医療機関の受診・訪問」44.5%であった。
 来訪者に対して、院内への立ち入りを断る理由は、「健康情報」80.6%、「家族など身近に体調不良者の有無」58.7%、「最近の会食・旅行の有無」36.1%、「ワクチン接種歴・新型コロナ感染の既往」17.2%であった。
 来訪者が、病院の感染制御上の要請に従わない場合については、「マスク着用を拒否」では、「立ち入りを断ってよい」74.7%、「状況により立ち入りを断ってよい」20.8%(以下、同順)、「鼻出しマスクに対する注意に従わない場合」61.4%、23.3%、「体温測定拒否」78.1%、13.8%、「手洗い拒否」81.2%、19.2%、「手袋を外すことを拒否」32.4%、21.6%であった。

3 おわりに
 感染症のパンデミックは、弱者や差別など潜在的な社会の構造をしばしば明らかにすること、また、パンデミックを契機に社会の構造改革が急速に進むこともしばしば経験している。
 病院は配慮を要する情報を取り扱うことから、患者や職員の個人情報を適切に取り扱う体制構築が求められている。パンデミック時には、事業者として職員に安全な職場環境を提供する義務、当該感染症患者のみでなく、他の疾病で受診する患者を含めて、安全な医療を提供する義務を有する。また、感染拡大防止に対する協力義務を有する。これらは時に相反することがある。感染の脅威は地域、提供する医療内容により異なり、一律な指針の策定は有効性を欠くことがある。今回の調査は個人情報保護の観点から、会員病院の対応を明らかにし、課題を抽出した。今後は、各課題を検討し、実際的な指針を提供するなど、現場の混乱を回避し、円滑な医療提供を確保する方策を検討する必要がある。
 なお、今回のアンケート調査は2021年9月に実施された。第5波の後半に当たり、医療機関が新型コロナウィルス患者への対応に追われていた時期である。困難な時期に、調査にご協力いただいた会員病院に深謝申し上げる。

 

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