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ホーム全日病ニュース(2022年)第1002回/2022年2月1日号2022年度診療報酬改定に向け公聴会をオンライン開催

2022年度診療報酬改定に向け公聴会をオンライン開催

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【中医協総会】病院の立場から「平時から人員などの資源の余剰が必要」

 中医協総会(小塩隆士会長)は1月21日、2022年度診療報酬改定の公聴会を開催した。総会がまとめたこれまでの「議論の整理」を踏まえ、医療従事者や保険者、患者など様々な立場を代表した12人から意見を聴取した。病院の立場の意見発表者からは、コロナ禍の経験から、病院には平時から人員などの資源の余剰が必要であることが強調された。「重症度、医療・看護必要度」に関しては、「心電図モニターの管理」の削除が検討されていることについて、懸念が示された。
 京都九条病院の松井道宣理事長は、現状のオミクロン株による感染拡大により、医療がひっ迫しつつある状況を訴えつつ、これまでの新型コロナ対応の感染拡大でも、医療崩壊を起こさずに持ちこたえることができた重要な要素として、医療機関の役割分担に応じた連携があったと説明した。
 その上で、通常医療を一部制限せざるを得なかったことは問題と指摘。「ある程度余裕のある体制が必要」と強調した。余裕のある体制を備えるためには、診療報酬がその原資となる。医療経済実態調査の結果をみても、新型コロナ緊急包括支援交付金がなければ、病院の収支は悪化しており、医療費抑制政策からの転換を求めた。
 不測の事態に備え、余剰のある人員体制を整えるという観点から、急性期一般入院料1の評価を適正化し、「重症度、医療・看護必要度」を見直すことに懸念を示した。また、毎回見直しが行われることによる現場の負担への配慮も求めた。
 内科系学会社会保険連合の小林弘祐理事長は、学術団体としての立場から、内保連グリーンブックを紹介した。現行の「重症度、医療・看護必要度」において、内科の技術の評価はあるが、「医師の診療の負荷」が評価されていないとして、グリーンブックを基にした見直しを提案していると説明した。
 具体的には、「医師の診療の負荷」の度合いと強い相関を持つ検査や注射の種類数など各種要素を「重症度、医療・看護必要度」に追加することを求めた。「新型コロナと現在闘っている多くの医師も内科系医師」と訴えた。

かかりつけ医の制度化に反対
 ケイアイクリニックの黒瀬巌理事長は、かかりつけ医機能について、「緩やかなゲートキーパー」の役割は必要としつつ、フリーアクセスを制限するような制度化には反対した。かかりつけ医の普及は、「日本医師会が運営する研修の拡充で対応すべき」とし、上手な医療のかかり方の住民への周知に努めるべきであるとした。
 オンライン診療については、「対面診療のほうが、オンライン診療よりも質が高く安全」と述べ、オンライン診療だけで完結する医療が広がることに警戒感を示した。感染症への外来対応では、発熱患者を受け入れるために一定の受診制限をしなければならないことを含め、診療報酬での新たな感染予防策の評価が必要であると強調した。
 川崎医科大学総合医療センターの山田佐登美看護部長付参与は、「重症度、医療・看護必要度」の見直しで、B項目の見直し・削除が検討されていることを踏まえ、B項目の意義を強調した。また、看護師や看護補助者への研修の必要性を訴えた。看護職員に対しては、新型コロナの重症者などに対応できるような専門性のある看護師の養成が求められており、看護補助者に対しては、必要とされるスキル・知識を明確化し、業務で実践することにより、処遇改善にもつながると説明した。そのための診療報酬での評価を求めた。

保険者は財政悪化を訴える
 保険者団体の立場の意見発表者は、全員が中長期的な保険財政の悪化を強調し、財源の有効活用を訴えた。
 日本航空健康保険組合の秋山実理事長は、「現段階で財政悪化は小康状態を保っているとみられがちだが、全然違う。高齢者への給付が増加し、10月以降は後期高齢者への2割負担が拡大するが、現役世代の負担軽減には程遠い」と述べた。今回改定については「入院医療では、特に急性期について医療資源を集約して、新興感染症にも強い体制を作ってほしい。外来医療でも、かかりつけ医を普及させ、機能分化を進めてほしい」と述べた。
 患者団体のピーペックの宿野部武志代表理事は、治療と仕事の両立を推進するための療養・就労両立支援指導料について、対象疾患の見直しが検討されていることに対し、難病などは対象に指定されにくく、「対象疾患よりも症状で判断してほしい」と要望した。
 また、「患者の不安などに寄り添う人として同じ病気を持つ人は有用だ。チーム医療にピアサポートワーカーを加えることも検討してほしい」と述べた。

 

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