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社会保障給付費は過去最高を更新し138.7兆円

【社人研】医療は47兆4,205億円で全体の34.2％

　国立社会保障・人口問題研究所（田辺国昭所長）は８月４日、2021年度社会保障費用統計の概要を発表した。社会保障給付費は過去最高の138.7兆円となった。施設設備費等を含めた社会支出も、143兆円と過去最高を更新した。「医療」は47兆4,205億円で、総額に占める割合は34.2％となっている。
　社会保障費用統計は、年金や医療保険、介護保険、雇用保険、生活保護など、社会保障制度に関するその年度内の収支を国際基準が定める基準に則って集計したもの。◇ OECD（経済協力開発機構）基準による「社会支出」◇ILO（国際労働機関）基準による「社会保障給付費」と「社会保障財源」◇EU（欧州連合）基準による「社会保障財源」―としてとりまとめている。
　社会保障給付費（ILO基準）と比べ、社会支出（OECD基準）には、施設整備費や管理費など直接個人には帰着されない支出までが集計範囲に含まれる。また、社会保障財源とは、社会保障給付、施設整備費や管理費などに充てられる財源である。
　社会保障給付費（ILO基準）は、前年度比4.9％増の138兆7,433億円。1950年度の集計開始以来、71年連続で過去最高である。対GDP 比は25.20％ で、前年度に比べ0.61％ポイント増えた。１人当たり社会保障給付費は5.5％増の110万5,500円となった。
　社会保障給付費を部門別にみると、「医療」は47兆4,205億円（総額に占める割合は34.2％）、「年金」は55兆8,151億円（同40.2％）、「福祉その他」は35兆5,076億円（同25.6％）となった。「福祉その他」のうち、「介護対策」は11兆2,117億円（同8.1％）となっている。
　前年度からの増加額は、「医療」が４兆7,013億円（11.0％増）、「年金」が1,816億円（0.3％増）、「福祉その他」が１兆6,455億円（4.9％増）。一方で、「介護対策」は▲2,047億円（同▲1.8％）と減少した。「医療」は新型コロナウイルスワクチン接種関連費用、医療保険給付の増加、「福祉その他」は子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金による増加が大きかったと説明している。

社会支出も過去最高に
　社会保障給付費に施設設備費等を含めた社会支出（OECD基準）も過去最高で、4.9％ 増の142兆9,802億円。対GDP 比は25.97％で、前年度に比べ0.61％ポイント増えた。１人当たり社会支出は5.4％増の113万9,300円となった。社会支出を政策分野別の割合でみると、医療保険や公費負担医療給付、介護保険などの「保健」が42.3％で最も多く、老齢年金などの「高齢」が34.1％となった。
　前年度と比べて増加額が大きかった政策分野は、「保健」（４兆6,217億円、8.3％増）と、児童手当や育児・介護休業給付などの「家族」（２兆7,828億円、25.9％増）である。「保健」は新型コロナウイルスワクチン接種関連費用、医療保険給付の増加、「家族」は子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金による増加が大きかったとしている。

社会保険料は2.7％の増加
　社会保障給付費（ILO基準）、施設整備費や管理費などに充てられる社会保障財源（ILO基準）は、11.5％減の163兆4,389億円となった。
　項目別にみると、「社会保険料」が75兆5,227億円で全体の46.2％を占め、次いで「公費負担」が66兆1,080億円で40.4％を占めている。対前年度比は、社会保険料が2.7％の増加、公費負担が12.3％の増加となっている。
　前年度と比べて増減額が大きかったのは「資産収入」（29兆4,795億円、▲67.1％）、「国庫負担」（６兆9,207億円、16.9％増）である。「資産収入」の減少は、前年度の増加額が例年を超える規模であったことによるものであり、「国庫負担」の増加は、新型コロナウイルス関連支出等の影響によると説明している。
　また、諸外国の社会支出を対GDP比でみると、2020年度時点で日本（25.36％）はアメリカ（29.67％）、フランス（35.62％）と比較すると小さくなっている。
　諸外国の社会保障財源（EU基準）を対GDP比でみると、2020年度時点で日本（25.3％）は、スウェーデン（30.4％）、ドイツ（33.3％）、フランス（35.1％）よりも小さくなっている。項目別にみると、「一般政府拠出」、「社会保険料拠出」のうち「事業主拠出」において、日本はスウェーデン、ドイツ、フランスよりも小さい。一方で、「社会保険料拠出」のうち「被保険者拠出」（被用者、自営業者・年金生活者その他の計）は、日本はスウェーデン、フランスよりも大きく、ドイツよりも小さくなっている。