全日病ニュース

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支払側「7対1は病棟単位と病院単位どちらがよいか議論が必要」


支払側
「7対1は病棟単位と病院単位どちらがよいか議論が必要」

【中医協総会】
事務局論点 「亜急性期の実態を明確にし、医療内容に応じた評価体系を目指す」

 3月13日の中医協総会は、2014年度診療報酬改定に向け、入院医療全般について意見を交わした。
 その中で、支払側の白川委員(健保連専務理事)は、7対1入院基本料を例に取り上げ、「現行どおり病院単位の算定を続けるか、あるいは病棟単位に変えるかを議論する必要がある」という認識を示した。

 

 同日は、診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」が実施している入院分野に関する各種調査結果のまとめが4月にずれ込んだことから、本格的な各論の議論は調査結果を踏まえて行なうとした上で、入院医療について概括的な議論を行なった。
 概括的な議論は、すでに、外来医療(1月23日)と在宅医療(2月13日)が先行して行なわれている。
 この日の議論に、事務局(厚労省保険局医療課)は入院医療の論点(別掲)を領域別に示すにとどまらず、すでに議論を行なっている外来医療と在宅医療で示した論点(別掲)を医療全般の大きなテーマに括って示し、次期改定に臨む基本的な問題意識を明らかにした。
 入院医療に関する論点提示の特徴は、一体改革の2025年シナリオが示す病床機能区分にそって、(1)「高度急性期・一般急性期」「亜急性期等」「長期療養」に区分け、(2)地域の実情に応じた病棟の評価体系を提起、していることである。
 その上で、「高度急性期・一般急性期」では、①急性期病床の役割の明確化、②長期入院の是正を打ち出し、さらに、①に関して、平均在院日数、患者の状態像、連携と在宅復帰、早期リハの4点を検討の視点にあげた。
 「亜急性期等」については「回復期リハ病棟との機能の違いを明確にし、病棟の機能分化に向けた評価の導入を行なう」とし、そのために「亜急性期における医療や患者像を明確化し、医療提供内容に応じた評価体系を目指す」ことを課題に掲げた。
 「長期療養」に関しては、前出「長期入院の是正」を「急性期病棟における長期入院の評価の在り方の見直し」と言い換えるとともに、「長期療養を担う医療機関と高度急性期・一般急性期・亜急性期等との連携および長期療養を担う病棟における受入れ体制の充実」を課題とした。
 一方、「地域特性」においては、「地域の実情に応じた病棟の評価体系」を提起する中に、全日病が提唱する地域一般病棟について全日病資料からの引用を織り込んだ。
 ただし、地域一般病棟の概念を地域特性の括りの中で引用するのは正しくない。全日病は、地域一般病棟を、病期としては亜急性期に位置づけた上で、その多面的な機能を考察しているからだ。
 事務局は、上記のとおり入院医療の論点を披露した上で、入院、外来、在宅を合わせた医療全般の大きな論点(「今後の論点の整理」)を提示した。
 その中で、「亜急性期等」について、あらためて「亜急性期、回復期の機能分化に向けた評価の導入」を提起。同じ特定入院料ながら、病室単位と病棟単位という違いをもつ亜急性期入院医療管理料と回復期リハ病棟入院料について、統合化を試みた12年度改定とは逆に、機能(医療提供内容)の違いに応じた評価体系を検討する方向性を明らかにしている。
 この背景には、急性期病床を亜急性期へ誘導する意図があるものとみられる。
 議論において、支払側の白川委員は、①7対1と10対1における90日超適用除外患者の問題を次期改定で解決したい、②7対1について、病棟単位と病院単位のどちらがよいかの議論が必要、③診療報酬にプロセスとアウトカムをどう入れていくかを議論したい、④早期リハのベッドを充実させていくべきである、と踏み込んだ問題意識を披露した。
 同委員はとくに亜急性期に多く言及し、「亜急性期は患者像が不明確、どこからが亜急性期なのか明確にすべきではないか」「亜急性期が病床単位というのが納得いかない。この点も含めて亜急性期についても議論すべきではないか」と述べるなど、亜急性期病床に強い関心を寄せていることを示した。
 7対1を例にした病院単位入院基本料の検討は、入院基本料全体の病院単位議論へと転じる公算が強い。同委員は、基本小委における基本診療料に関する議論でも「看護配置ベースの入院基本料を医療必要度や看護必要度という指標ベースに変えるべきである」と提起したが、今回も、注目すべき発言を行なった。
 もっとも、白川委員は、「病院の経営を考えると急激な変化は避けなければならないが、方向づけははっきりさせ、何回かの改定を経て少しづつそうした方向に向かっていくことを議論していく必要がある」と続け、中長期で見直しを進めていく考えを明らかにした。
 亜急性期に対するこうした疑問に、診療側西澤委員(全日病会長)は、「亜急性期入院医療管理料の2は(前改定で)回復期リハの病室単位として導入されたと考えている。亜急性期というのはなかなかみえにくいが、回復期リハは恐らく亜急性期の中の1つの役割と考えるのがいいのではないかと思う」とした上で、「今後、そうした点の議論もさせていただきたい」と述べた。
 事務局の資料に、DPC包括評価において1日あたり点数が下がる2つのポイント(入院期間Ⅰが明けた11日目、入院期間Ⅱが明けた20日目)で、DPCの病床から亜急性期の病床へと転床する割合が著しく高いというデータがある。
 DPCと亜急性期の病床を併設している病院で、亜急性期の病床が点数コントロールに使われていると思わせるデータではある。
 事務局資料に多くみられるデータの曖昧さや誤りを詳しく指摘した西澤委員は、この資料も取り上げ、「DPC病院で回復期リハをもっている病院の場合はどうか、同様に比較してほしい。恐らく、そこでも似たような傾向があるのではないか。それと、両病床で対比されるべき点数が曖昧であり、こうした比較が適切か、疑問が残る」とデータの再提出を求めた。その上で「より正確な資料が出た段階で、詳しい説明をさせていただく」と発言。機会をあらためて、地域一般病棟の機能も含めた亜急性期のあり方について論じる意向を示した。
 一方、鈴木委員(日医常任理事)は、事務局が示した論点のうち、「療養病床を急性期の受け皿にする」考え方に否定的な考えを示し、「むしろ、一般病棟の7対1や10対1の受け皿は一般病棟の13対1や15対1そして亜急性期ではないか」という見解を表わした。
 また、亜急性期と回復期を再び再編する方向性には、「前改定で亜急性期は病室単位、回復期は病棟単位とされたが、私はこのままいくべきであると考える」と慎重な意見を表明した。
 事務局が提起した論点に加えて支払側の問題意識から、2014年度改定で亜急性期病床の評価が、回復期ともども大きな焦点となることが必至となった。
 このほか、診療側からは、「次の改定に向けた検討のスケジュールを出してほしい。ギリギリになっての駆け足での議論は困る」「入院・外来・在宅の本番の議論がバタバタにならないよう、総体の議論をもう一度しっかりやってほしい」など、時間に追われた機械的議論にならないよう、しっかりした段取りで議論を積み上げていく日程管理への注文が相次いだ。
 併せて、西澤委員は、「基本診療料について検討する基本小委が昨年10月以降開かれていない。ぜひ再開し、基本診療料の議論を進めてほしい」と、並行されるべき議論への目配りを求めた。

 


入院医療の適切な推進に向けた論点(事務局提示)


◎高度急性期・一般急性期
 今後、急性期病床の担う役割の明確化を行うために、①急性期病院における平均在院日数の短縮、②患者の状態に応じた受け入れ、③入院医療の提供に関する連携や在宅復帰の推進、④急性期病棟における早期からのリハビリテーション等の検討を行うことについて、どう考えるか。
◎長期療養
・急性期病院と長期療養を行う病棟の機能分化を図る観点から、今回改定の影響を踏まえつつ、急性期病棟における長期入院の評価の在り方の見直しの検討を進めることについて、どう考えるか。
・また、高齢化の進展に伴う長期療養患者の受け入れを推進するため、長期療養を担う医療機関において、高度急性期・一般急性期及び亜急性期等との連携を進めるとともに、長期療養を担う病棟における受入れ体制の充実について、どう考えるか。
◎亜急性期等
 回復期リハビリテーション病棟との機能の違いを明確にし、病棟の機能分化に向けた評価の導入を行うために、亜急性期における医療や患者像を明確化し、医療提供内容に応じた評価体系を目指すことについてどう考えるか。
◎地域特性
 地域的には、一つの病院で複数の医療機能を持つことが必要な場合もあり、そのような地域の実情に応じた評価体系についてどう考えるか。
◎有床診療所における入院医療
 高齢化の進展に伴い、有床診療所における在宅患者の急変時の受け入れ機能や看取り機能、在宅医療等の機能に応じた有床診療所の評価についてどう考えるか。

外来医療の論点(1月23日に提示)
 複数の慢性疾患を持つ患者に対して、適切な医療の提供を図りつつ、外来の機能分化の更なる推進について、どのように考えるか。
在宅医療の論点(2月13日に提示)
 在宅医療を担う医療機関の量的確保とともに、質の高い在宅医療を提供していくために、保険診療の運用上、不適切と考えられる事例への対策も含め、地域の実情に応じた在宅医療を推進していくことについて、どのように考えるか。


今後の論点の整理(事務局提示)


 これまで、外来医療、在宅医療、入院医療について議論を行ってきていたが、これらの議論を踏まえ、入院医療等の分科会や検証調査の結果等を勘案しながら、以下の点等について今後具体的に議論を進めることとしてはどうか。
◎入院医療
 ①急性期病床の担う役割の明確化と長期入院の是正
 ②亜急性期、回復期の機能分化に向けた評価の導入
 ③地域の実情に応じた病棟の評価のあり方 等
◎外来医療
 ①かかりつけ医機能の評価
 ②大病院の紹介外来の推進 等
◎在宅医療
 ①在宅療養支援診療所・病院の評価の検討
 ②不適切と考えられる事例への対策も含めた地域の実情に応じた在宅医療の推進 等

 上記以外の個別の重要課題については、必要に応じて議論を行うこととしてはどうか。