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ホーム全日病ニュース第798回/2013年4月1日号第3者機関は民間組織とし、...

第3者機関は民間組織とし、同機関へ届け出ることで一致

第3者機関は民間組織とし、同機関へ届け出ることで一致

【医療事故調査の仕組み等のあり方に関する検討部会】
院内事故調査への関与のあり方等第3者機関の機能で意見分かれる

 3月22日の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」は、事故調査を担う第3者機関のあり方を中心に議論した結果、①第3者機関は民間組織とする、②事故調査は一義的に院内で実施する、③そのうち予期せぬ死亡は全例を第3者機関に届け出る、ことで基本的に一致した。
 ただし、院内事故調査への関与のあり方および調査を行なう上での権限など、第3者機関の機能については意見が分かれたため、次回以降も引き続き、第3者機関のあり方をめぐる議論を行なうことを確認した。

 第3者機関について、事務局(厚労省医政局総務課医療安全推進室)が用意したペーパーは、これまでの議論を「独立性・中立性・透明性・専門性を有する民間組織を設置する」と整理。山本座長(一橋大学大学院教授)も「本日は、第3者機関は民間組織ということで意見集約は可能か」と述べ、合意形成を促した。
 この日の議論でも、ほとんどの構成員が民間組織として第3者機関を設立するという方向に賛成する意見を述べた。
 一部から、予算や権限を考慮して、「国の機関とすべきではないか」との異論も出たが、吉岡総務課長は「予算上の措置は、国の機関であれ、民間組織であれ、必要性によって確保は可能」と説明、懸念を払拭した。
 ただし、同課長は「民間でも色々な組織形態があり、例えば、独立行政法人や特殊法人もあり得る」と説明する一方で、そうした公的法人であれば「国と同じような様々な公権力の行使ができる」ことに言及。
 「まずは、なにを第3者機関に求めるのか。民間組織にどのような権限を持たせることが適当かという議論から始めていただくことが適切」と述べつつ、「できれば法にもとづくものであることが望ましい」とも発言した。
 吉岡課長の見解は、1つには、消費者庁に設置された“消費者事故調”との関係調整を配慮、第3者機関に公的性格をもたせたいとの思慮にもとづくと思われるが、同時に、2008年の「医療安全調査委員会設置法案大綱案」の考え方と同様、第3者機関による調査には強制力が欠かせないとの認識がうかがえるものであった。
 こうした考え方に同調した構成員(弁護士)からは、「様々な事故調査の経験から、必要な資料を確保することは容易ではない」と、調査権限は欠かせないとする声が上がった。
 しかし、強制力を伴う調査は現場の関係者にいたずらな猜疑心と圧迫感を与える。必要なことは医療人の矜持と使命感に依拠した医学的調査である。
 こうした認識から、医療に関係する構成員は全員が調査権限は不要と論じ、「仮に非協力な医療機関があるとしても、その旨は事故報告で明らかにされ、結果として医療界に知られることになる」など、医療界の自浄作用が働くという認識を異口同音に示した。
 ただし、これに対する異論が残ったため、調査権限の問題は意見不一致として次回以降に持ち越された。
 同様に持ち越された論点は、院内調査への外部参加、とくに第3者機関による関与の問題である。
 構成員の間には、国民の信頼感を獲得する上で院内調査には外部専門家が参加すべきという考えがある一方、第3者機関が全面的に関与すべきという意見も出た。
 中小医療機関等には解剖を含めて中核病院や大学病院等が支援する、その調整は医療連携と同様に医療界が自律的に対応するという点で多くの構成員の認識は一致しているが、では、自律的な調整はどうなされるのか、あるいは支援は第3者機関というかたちでなされるのかという点では、意見が微妙に分かれた。
 医療界で調整対応が可能と論じる構成員の多くは、その主体として都道府県医師会への期待感を表わした。
 一方、飯田構成員(練馬総合病院理事長・全日病常任理事)は、「事故調査には医療界あげて対応することになる。医師会には重要な役割をはたしていただきたいが、医師会主体というのはいかがか。医療界をあげてという意味では、ほかにも職能団体があり、病院団体もある。日医への加入が少ない大学病院の医師も多い。私自身は、公益財団法人である日本医療機能評価機構にもっと資源を投入してもらい、そこが中心になるとよいと思う」と述べた。
 制度設計の細部はともかく、大枠については一致点と不一致点がほぼ明らかになり、詰めの議論の道筋がみえてきた。しかし、医療界として自律対応していく方向で最終合意を図る上で、刑事司法との関係調整をどうはかるかという論点が残されている。
 宮澤構成員(弁護士)は「刑事司法との調整が可能か」と発言、この点をしっかり議論する必要を提起した。
 飯田構成員も、「これは極めて大切な問題だ。(医療界と刑事司法との間で)きちんとした取り決めができるか否かはともかく、そうした協議ができれば、警察の側もより謙抑的になる可能性がある」と喚起した。