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ホーム全日病ニュース第798回/2013年4月1日号「2次救急の評価を施設から地域...

「2次救急の評価を施設から地域単位にすべき」との声


「2次救急の評価を施設から地域単位にすべき」との声

【救急医療体制等のあり方に関する検討会】
地域単位の2次救急整備に診療報酬の評価を検討すべしという提案も

 3月15日の「救急医療体制等のあり方に関する検討会」は、救命救急センターと2次救急医療機関の要件等の見直しについて議論した。
 救命救急センターに関しては、当初目標の倍の施設が指定されるなど量的整備は進んだが、専従医師数や重篤患者受け入れ数の格差が大きいなど質の充足が課題にあげられ、論点の1つに、指定解除要件の導入を含む要件の強化があげられた。
 2次救急医療機関については、救急搬送の受け入れ実績にばらつきが大きい点や約7割の病院で1人当直となっていることなどが課題として示され、①受け入れが少ない病院の実績を上げる方策、②確実な搬送受け入れ体制を構築する地域の取り組み策、③救急当直医など医師負担軽減策の新たな手法、が論点として提示された。
 2次救急の課題と論点に対して、多くの構成員は、地域の実情に応じて各救急医療機関は様々な役割を果たしていることを理由に、搬送件数で評価することの難しさを指摘。搬送実績のみで機能の有無を判断することを戒める意見が多く出た。
 さらに、少なからぬ構成員から、施設単位の評価を地域(2次医療圏)単位の評価へと転換し、面として救急搬送体制の構築を促すべきであるという声があがったほか、救急医療機関が円滑に救急搬送を受け入れられるよう、「地域全体で後方病床を確保する仕組み」を検討課題にすべきとの提案も出た。
 地域という視点については、都市部と地方とを分けて考えるべきという指摘がなされたほか、診療報酬の面からも地域へのインセンティブが検討されるべきという意見も出た。
 医師配置については、救命救急センターには専従医師の配置(現在は専任)を義務づけるべきとの意見も出たが、2次救急医療機関に関して特段の言及はなかった。

 

厚労省「2次救急医療機関数は減少している」ことを認める

 検討会に示された資料で、2次救急医療機関の数は「平成18年より24年にかけて全体として減少をたどっている」とされた。前回(2月6日)の資料では、2次救急は「ほぼ同一水準で推移している」とされ、加納構成員(加納総合病院理事長・全日病常任理事)から、「それは“減少をたどっている”としている消防庁の資料と違う」と抗議を受けた。
 今回資料における前出表記は、これに対する回答ともいうべきもので、事務局(医政局指導課救急・周産期医療等対策室)は、「資料を精査したところ数字の変更があった。結果として、(2次救急医療機関の数は)減少が続いている」と述べ、誤りを認めた。
 さらに、「都道府県にいくつか聞いた。それによると、都道府県によって、救急告示病院中心のところと、輪番なら担えるという医療機関を含めて告示病院とは違う体系で組む県があるなど、必ずしも一致しないという実情がある」と釈明した。医療法上の告示制度と救急隊が実際に搬送する2次救急機関との乖離は、1997年12月の「救急医療体制基本問題検討会報告書」で救急医療体制一元化を図る上の手続き的な課題とされて以来、現在にいたるも解決されていない。事務局は、同日提示した2次救急の課題にも、「救急告示病院と2次救急医療機関の一元化」を盛り込んだ。
 議論では、自治体の構成員から、「告示病院がすべて輪番に参加している訳ではない。実際に受け入れてもらっている救急機関は県が別に指定している」という発言があった。
 そこには補助金や診療報酬の要件もからんでくる。別の自治体構成員は「補助金や医療法の要件だけでなく、診療報酬の要件もあり、それらがまぜこぜになって実態が混乱している。その辺りを整理しないとならない」と指摘した上で、「自治体の立場でいえば指定は多い方がよく、もう少し要件を緩くしてくれた法がいい」と、告示制度の見直しを求めた。

 

加納常任理事 2次救急で民間が果たしている役割を詳しく解説

 加納構成員は自ら作成した膨大かつ詳細な資料を提示し、わが国の2次救急体制で民間救急機関が果たしている重要な役割とその比重の大きさを具体的に説明した。
 20数分に及ぶプレゼンで、加納構成員は、①大都市圏の救急は民間が支えていること、②高齢者の増加は救急の増加でもあること、③その高齢者は、今後、都市部でこそ増えること、④しかし、民間は経営上救急をやっていけない状況にあり、⑤年々、民間が救急から撤退していることことなど、2次救急が直面している根幹の問題をデータで説明。
 そうした上で救命救急センターのあり方に言及。⑥若年層の減少は疾病構造を変えるものであり、はたして、3次救急は今後も整備される必要があるのか、⑦3次救急は、増加する高齢者の受け入れ先としてやっていけるかという疑問を投げかけ、「高齢者の救急をどこがみるべきかというテーマをもっと議論すべきだ」と提起した。
 豊富なデータを駆使した加納構成員の問題提起に、有賀座長(昭和大附属病院長)は、「加納構成員から、タテ、ヨコ、斜めの話をしてもらった。2次救急の話をしてもらって正解だった」と評価。行岡構成員(東京医大教授)は「2次救急をしっかりしないと3次救急はつぶれる」という所感を表わした。