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ホーム全日病ニュース第798回/2013年4月1日号報告●「新型インフルエンザ等...

報告●「新型インフルエンザ等対策有識者会議中間とりまとめ」について

報告●「新型インフルエンザ等対策有識者会議中間とりまとめ」について
必要時には医療関係者に医療提供の要請・指示が

医療機関は行動計画やGLに沿ってBCPを策定する必要がある

新型インフルエンザ等対策有識者会議委員・全日病理事 永井庸次 

 

(1)新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)とは何か?

 平成21年に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)の経験を踏まえ、特措法は平成24年5月11日に公布された。
 公布1年以内に施行する必要があり、私も委員の1人である有識者会議の検討により今回の中間とりまとめが作成された。
 パブコメを経て、4月の本法施行後、5~6月に政府の行動計画、ガイドライン策定後、年内をめどに各都道府県レベルの行動計画、ガイドラインの策定という運びとなる。

 

(2)発生時にはどのような流れになるか?

 特措法では、新型インフルエンザ等に対する医療提供体制を、未発生期、海外発生期~地域発生早期、地域感染期という流れで想定している。
 未発生期では2次医療圏等単位で保健所を中心に、医師会、中核病院等を含む医療機関等による対策会議が設置され、地域の実情に応じた密な連携による医療体制の整備推進が必要である。事前の役割分担の明確化、地域感染期の極端な患者増や出勤可能職員の減少を見越した各医療機関の特性・規模に応じた継続的医療提供体制計画(BCP)作成が必要である。
 海外発生期~地域発生早期では基本的対処方針が作成され、人口10万に1か所程度の帰国者・接触者外来設置を決めるが、感染症指定医療機関の必要はない。発生国からの発熱・呼吸器症状のある帰国者で新型インフルエンザ等の罹患リスクの高い患者を診察する。新型と診断された患者は感染症法に基づき感染症指定医療機関等に入院勧告となる。
 地域感染期以降では、帰国者・接触者外来設置と感染症法による入院措置双方は中止する。新型インフルエンザ等の患者は一般病院で外来診療するが、外来は可能な限り時間的・空間的に分離する。入院は原則、内科・小児科等の入院診療を行う全医療機関で行う。連携により軽症者は診療所で、重症者は入院で対応するが、待機可能な入院や手術を控える事態も想定される。
 医療機関が不足し、医療の提供に支障が生じると、都道府県知事により臨時医療施設が開設されるが、課題が多く、その使用に至らぬよう医療機関のBCP運用と連携が必要である。
 流行期には、症状把握が可能な在宅患者や慢性疾患の定期受診者には抗インフル薬や慢性疾患治療薬の処方箋をファクシミリ等で発行できる。

 

(3)緊急事態宣言後に病院団体、病院への影響はあるか?

 被害を与えるおそれがある新型インフルエンザ等が国内で発生し、全国的かつ急速なまん延で国民生活と国民経済に甚大な影響を及ぼし、重症症例(肺炎、多臓器不全、脳症など)が相当数認められると、緊急事態宣言が出され、緊急事態措置が決定される。病原性が低い場合には宣言はなく、感染症に基づく措置が行われる。
 宣言には緊急事態措置の実施期間、区域、発生状況、病原性、症状、感染・まん延防止に必要な情報、措置概要、特に外出自粛要請、興業場等の制限等の要請・指示、住民予防接種の実施、医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)などが含まれる。
 全日病は指定公共機関に指定予定であるが、指定(地方)公共機関は対策の実施責務があり、平時からの業務計画の作成、備蓄等の義務を含め、発生時には政府対策本部長(都道府県対策本部長)の総合調整・指示を受ける。
 高病原性で通常の協力では帰国者・接触者外来や臨時施設での医療確保が出来ない、地域のほとんど全医療機関が診療休止し、当該地域の医療体制の確保が困難な場合には、事務員なども含めた医師、看護師等医療関係者に医療を行うよう、個別または管理者に要請・指示される。
 医療での要請・指示には実費弁償、損害補償があるが、特定接種の応援では医師、看護師という有資格者のみの要請・指示で、事務員などには損害補償はない。

 

(4)特定接種の問題点は?

 特定接種は、緊急の必要があるときに臨時に行われる予防接種である。厚労大臣が登録した医療提供業務登録事業者の中で医療業務に従事している者等が対象であり、住民は対象ではない。具体的には、
①新型インフルエンザ等医療を実施する医療機関(事務職員を含めた職員)
②新型インフルエンザ等医療には従事しないが生命・健康に重大・緊急の影響がある医療機関(有資格者のみで事務職員は入らない)
③サービスの停止等が利用者の生命維持に重大・緊急の影響がある介護・福祉事業機関(介護職員、看護師、理学療養士、施設長など)に分けられる。
 地域の病院団体、医師会等は指定地方公共機関の申請とは別に、特定接種への事前登録が必要である。
 (プレ)パンデミックワクチンは原則集団的接種で、医療機関は機関内で接種する。住民に対する予防接種は、緊急事態宣言以降は特措法に基づく臨時接種が、病原性が低い場合は、予防接種法による新臨時の予防接種が行われる。この場合も、診療に直接従事する医療従事者から接種される。
 住民接種における優先接種の対象者、優先順位などは未だ議論が多い。接種体制は当該市町村の区域内に居住する者を原則とする。
 接種に当たっては地域医師会等の協力で医療従事者を確保するが、人口1万人に1か所程度の集団的接種会場が、各会場では医師による予診の他、看護師や誘導人員等の確保が、必要となる。接種は必ずしも医師が行う必要はない。

 

(5)最後に

 以上中間とりまとめを概要したが、最後に、今後、医療機関は、地域の行動計画やガイドラインに沿ってBCPを策定する必要があり、4月下旬には別途、診療所、中小病院、大病院のからひな形と診療継続計画作成の手引き案が公表される予定である。