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ホーム全日病ニュース第798回/2013年4月1日号診療報酬と別建で高額投資消費税...

診療報酬と別建で高額投資消費税を補填する案を否定

▲診療側は別建ての基金で高額投資の消費税を補填する方法に反対した。

診療報酬と別建で高額投資消費税を補填する案を否定

【医療機関等における消費税負担に関する分科会】
支払・診療両側が一致。引き続き具体策を検討

 厚生労働省は、3月18日の消費税分科会に、医療非課税のまま消費税率が8%に引き上げられることへの対応策の1つとして、高額投資部分に診療報酬と別建ての基金を設けて補填する仕組みを提示したが、支払側と診療側は、同方式に反対することで意見が一致した。
 分科会は、今後、3%の引き上げ分をすべて診療報酬で補填する方法を含め、具体的な補填方法の検討を進める。

 中医協・診療報酬調査専門組織の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」が3月18日に5ヵ月ぶりに開かれ、医療非課税下での消費税引き上げに対する対応策の検討作業を再開した。
 この日の会合に、事務局(厚労省保険局医療課)は、3%引き上げへの対応策として、消費税法一部改正法が示した「医療機関等における高額の投資に係る消費税の負担に関し、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して措置を講ずる」方法として、従来のやり方とは異なる、診療報酬と別建ての基金を設置して補填請求分をまかなうという考え方を初めて披露した(別掲)。
 併せて、診療報酬への上乗せ分は、別建てとなる高額投資への補填分を控除したものとなることをあらためて明確にした。
 その上で、この方法に加えて、一般仕入れにかかわる消費税引き上げ分には診療報酬の上乗せで対応するという方法を1つの案とし、他方、3%引き上げ分をこれまでのようにすべて診療報酬で対応する仕方をもう1つの案とし、両案のメリット・デメリットを比較して示し、分科会の意見を求めた。
 議論の結果、支払側と診療側は、基金を設けて高額投資分を補填するという別建て方式は複雑である上、法改正をともなう面からも現実的ではないとして、反対することで一致したもの。
 別建ての対応に反対意見の口火を切ったのは支払側の白川委員(健保連専務理事)。「基金造設のために関係者に財源の負担を求めるとしているが、関係者とは保険者と読める。これは加入者の理解が得られない。さらに、医療機関と保険者の双方にシステム見直しの負担がかなり生じる。審査支払機関にも追加的な事務経費が出てくる。この方法には賛成できない」と述べ、即座に否定した。
 診療側の西澤委員(全日病会長)も、「白川委員が指摘した別建て方式のデメリットの多くは医療機関の側にもあてはまる。それ以外にも反対する理由はあるが、大筋で白川委員の意見に賛成である。事務局資料をみればみるほど別建て方式はよくないと考えざるを得ない。各論に触れるまでもなく診療側として反対である。四病院団体協議会としても、この方式の導入には反対することで一致している」と述べた。
 一貫として医療への消費税原則課税を求めている四病協は、8%への引き上げを1年後に控え、消費税法改正法や3党協議合意文書で提起されている別建てによる補填方式への対応を2月27日の総合部会で協議した。その結果、10%引き上げ時には課税とすることを求める立場から、「別建て方式の導入は課税へと法改正する機会を遠ざけることになりかねない」など、強く反対することを確認している。
 白川・西澤両委員に続いて、支払・診療各側から反対意見が相次いだ。その結果、分科会の田中会長(慶大教授)は、この日の議論を「基金を造成して別建てで補填する方法にはほぼ反対となった。ただし、これ以外のやり方で高額投資に対応するか否かは、今後の議論に委ねられる」と整理した。
 高額投資への基金設置による別建て対応はひとまず否決されたものの、来年4月1日の8%への引き上げまで1年足らずとなっている。委員からは「消費税引き上げへの方針は今年中にまとめないと間に合わない」との声もあがった。
 分科会は次回会合で高額投資にかかる消費税の実態調査結果の報告を受けるが、田中会長は、事務局(厚労省保険局医療課)に、対応策を導くにいたる論点と議論のスケジュールを次回提示するよう求めた。

 


□高額投資に別建てで対応する仕組みと問題点 (厚労省資料から)


【診療報酬と別建てで対応する仕組み】
 ●高額投資の消費税負担を「他の診療行為と区分して」手当を行なうとすれば、診療報酬の支払いとは別建ての仕組みを構築することが考えられる。
 ●高額投資対応の仕組みとしては、例えば必要な財源をプールして基金造成し、医療機関等からの申請に基づいて、審査・支給する仕組みが考えられる。
 ●このような仕組みを構築するには、関係者に財源の負担を求める等のため、法改正が必要。また、実施機関は事務処理のためのシステム対応が必要となる可能性が大。

【仮に10%時に課税転換した場合の対応=デメリット】
 ・再度法改正をして、高額投資対応スキームを廃止する必要がある。
 ・消費税負担の控除・償還の主体が税務当局となり、手続も異なるものとなる。
 ・(10%引上までの)1年半のために法改正やシステム対応を行なうことになる。
 ・少なくとも医療機関等の請求権が時効消滅するまでの間、課税転換後も、高額投資対応のスキームや事務処理体制を残存させる必要がある。