全日病ニュース

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社会保障制度改革国民会議 改革で都道府県が前面。医療・介護の提供体制に街づくりの視点

社会保障制度改革国民会議 改革で都道府県が前面。医療・介護の提供体制に街づくりの視点

 

社会保障制度改革国民会議
改革で都道府県が前面。
医療・介護の提供体制に街づくりの視点

報告書 総論(草案)と各論(骨組み案)を了承。次回に各論(草案)を議論

 7月29日に開催された社会保障制度改革国民会議は報告書を構成する総論の草案と各論の骨組み案について検討。両案とも大筋で了承した。次回会合で各論の原案について検討を行ない、旧盆休みの前にも報告をとりまとめる見通しだ。

 

 総論の素案は遠藤会長代理(学習院大学経済学部長)が作成、社会保障制度改革の基本的な考え方として、要旨、以下の内容を書き込んだ。
(1)社会保障制度改革と財政健全化は同時達成が必須。税や社会保険料の負担増は避けられず、徹底した給付の重点化・効率化が求められる。
(2)給付・負担の両面で世代間・世代内の公平が確保された制度とする。
(3)社会保障制度を「1970年代モデル」から「21世紀(2025年)日本モデル」に再構築していくことが喫緊の課題。
(4)データで地域を分析し、それを踏まえて、医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築など医療・介護の提供体制の再構築に取り組んでいくことが必要。
(5)医療・介護の提供体制を新しいまちづくりの問題として考えていくことが不可欠。
(6)社会保障における国・都道府県・市町村の役割分担の見直し(国民健康保険の保険者等)、地方公共団体の役割・財源の強化(都道府県の権限強化等)、改革を進める基盤整備(人材の確保や必要なデータの整備等)で、国と地方公共団体が連携していくことが必要。
(7)医療は従来の「治す医療」から「治し・支える医療」への転換が求められる。
 総論案に対して、国民会議の委員からは「少し長文ではないか」という声のほか、言及すべき問題点等の追加修正を求める意見や「総論に改革の推進体制を明記すべき」「具体的な工程表をつけるべき」などの注文も出たが、大筋で了承された。次回、修正した文案を再度検討する予定だ。
 その中で、大島委員(国立長寿医療研究センター総長)は、「必要な場所で必要な医療を受けるべきという視点が出ているが、では、それはどんな場所であるかが不明だ。つまり在宅医療について踏み込んだ記述がほしい」と問題を提起した。
 さらに、「市町村を単位として地域包括ケアに在宅を位置づけるとともに、在宅を担える人材確保を含めた国の支援を明確にすべきである。その際、在宅ができる医師の養成には時間がかかる。そこで医師の行動変容を促すために研修プランが必要。専門職能団体が中心になり、それを国として支援する。職能団体が一致してできない場合は国の介入―場合によっては保険医指定のあり方も含めた誘導が考えられてしかるべきである」と発言。
 さらに、「医師が独占している技術を他専門職に移転する問題であるが、旧来の手法は、今、看護師への移転の面でだいぶ消極的になっている。この技術移転が大変重要になっていることを、ぜひ明記すべきである」などと、追加修正を求める具体的な意見を展開した。

 

提供体制改革で診療情報と医療法人の役割が重要に?!

 各論に関しては草案の骨組みを提示するにとどまったため、具体的な意見は出なかった。
 権丈委員(慶大教授)が担当する「医療・介護」には、①医療機能報告制度の導入と地域医療ビジョンの策定、②都道府県の役割強化と国民健保の保険者の都道府県移行、③医療法人制度・社会福祉法人制度の見直し、④医療と介護の連携と地域包括ケアシステムの構築、⑤医療給付の重点化・効率化(療養の範囲の適正化等)、などの柱が立てられている。
 そこには、「医療の在り方」や「医療問題の日本的特徴」という柱立てもある。「医療の在り方」では、「“治す医療”から“治し・支える医療”への転換」という、とくに後期高齢者にかかわる医療提供のあり方の方向性が記述されるものとみられる。
 また、「医療問題の日本的特徴」について、各論の骨組みを読み上げた中村事務局長(内閣官房社会保障担当室長)は、「日本の医療は政府による強制力と市場の力に依らずに営まれている。したがって、改革を推し進めるためには、何よりも医療にかかわるデータを共有していく中での(自律的な)改革が望まれる」と解題。重要課題のひとつに診療情報のデータベース化とネットワーク利用をあげることを示唆した。
 さらに、改革の方向性に触れる中で、「急性期を中心に資源を集中投入していくが、それは受け皿の整備と並行してなされる必要がある」と指摘、「いわゆる川上から川下への戦略である」と比喩した。
 柱立ての1つに「医療法人制度・社会福祉法人制度の見直し」が位置を占めており、医療提供体制改革において医療法人等を前面に出し、そのために必要な規制緩和を図っていく方向性が打ち出される可能性が強い。
 国保の都道府県移行が「医療保険制度改革」ではなく「提供体制改革」に位置づけられていることに、一部委員からは「不可解」との声も出た。これについて、清家会長(慶応義塾長)は記者会見で、「両域にかかわる重要な課題ということではないか」という認識を披露した。

□各論部分(第2部社会保障4分野の改革)の骨子案

Ⅱ. 医療・介護分野の改革
1. 改革が求められる背景と社会保障制度改革国民会議の使命
(1)改革が求められる背景
(2)医療問題の日本的特徴
(3)改革の方向性
2. 医療・介護サービスの提供体制改革
(1)医療機能報告制度の導入と地域医療ビジョンの策定
(2)都道府県の役割強化と国民健康保険の保険者の都道府県移行
(3)医療法人制度・社会福祉法人制度の見直し
(4)医療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築
(5)医療・介護サービスの提供体制改革の推進のための財政支援
(6)医療の在り方
(7)改革の推進体制の整備
3. 医療保険制度改革
(1)財政基盤の安定化、保険料に係る国民の負担に関する公平の確保
(2)医療給付の重点化・効率化(療養の範囲の適正化等)
(3)その他必要な改革
4. 介護保険制度改革